篠田博之の「週刊誌を読む」

「創」編集長・篠田が毎週、東京新聞に連載(北海道新聞・中国新聞も転載)しているコラム。

 木曜発売の『週刊文春』のスクープは、水曜夕方の文春オンラインで速報され、騒動になることが多い。だが今回は九日火曜から騒動が広がり、水曜朝にはスポーツ紙やワイドショーが一斉に報じることになった。

 お笑いコンビ「アンジャッシュ」の渡部建の不倫騒動だ。九日に事務所が事実を認め、番組出演自粛をテレビ局に申し入れたからだ。レギュラー番組を何本も抱える人気タレントだけに、テレビ局は大騒動になったに違いない。

 十三日土曜日のTBS「王様のブランチ」では、渡部不在の番組冒頭で説明がなされ、一緒に司会を務めていた佐藤栞里が涙ぐんだ。番組を引っ張っていた相方が突然不在となって不安に駆られたのだろう。

 実は『週刊文春』が渡部に直撃を行ったのは前週六日の同番組終了直後だった。同誌校了の火曜に回答期限を設けたのだろう。事務所は九日、回答を同誌に送ると同時にテレビ局に事情を伝えた。

 十一日発売の同誌6月18日号に掲載された記事の見出しは「佐々木希、逆上 渡部建『テイクアウト不倫』」。渡部が佐々木希という妻と子どもがいながら、複数の女性と不倫をしていたという内容だ。不倫相手の女性が匿名で取材に応じて内情を語っている。

 同誌の直撃を受けた渡部は六日、妻に事情を打ち明けたらしい。記事によると、不倫相手の女性に同日深夜、渡部から電話があり、途中から妻に替わった。そして妻は、結婚した二〇一七年以後も夫との関係が続いていたか女性に問いただしたという。

 騒動が何日も続いているのは、ことが夫婦の私的な問題にとどまらず、渡部が多くの番組を降板したことで、テレビ界を巻き込む事件になってしまったからだ。十二日には妻がインスタグラムで「主人の無自覚な行動により多くの方々を不快な気持ちにさせてしまい、大変申し訳ございません」と謝罪した。

 芸能人の不倫騒動でいつも思うのだが、番組やCM降板によって、事態が当事者を超えて社会問題化していく。妻が夫に代わって世間に謝罪することも含め、騒動には考えてみれば奇妙なことも多い。

 昨年起きた京都アニメーション放火事件の悲惨さにはいまだに胸を痛める人も多いだろう。五月二十七日、火傷の治療を受けていた青葉真司容疑者が逮捕された。
 『週刊新潮』6月11日号「それでも『京アニ放火殺人犯』を生き長らえさせる意味」は、治療に数千万円の費用がかかっているとしたうえでこう書いている。
 「犯罪史上稀な凶悪犯にもかかわらず、膨大な公費をつぎ込み、一般人には手の届かないような最先端の高額医療で救命せざるを得ないジレンマ」
 勾留先となる大阪拘置所の受け入れ態勢についても捜査関係者がこうコメントしている。「今回、青葉の収容に備えて、エアコン設置をはじめ、ストレッチャーや介護ベッドを入れられるように居室や面会室を改修しました。また、医師や看護師も増員し、24時間態勢で対応できるようにしています」
 多額の治療費に血税が費やされるという話は『フライデー』6月19日号も書いている。確かに庶民感情からすれば釈然としない思いはあるかもしれない。
 その意味でも考えさせられたのは『週刊文春』6月11日号「京アニ放火犯主治医の告白」。青葉容疑者が最初に治療を受けた近畿大学病院の医師の話だ。
 「近大には『被害者をそっちのけにして加害者につくなんて、医療の倫理に反している』という内容の怪文書が届けられたのです。警察には警護をお願いしました」。そして続けてこう語る。
 「私としては『(青葉を)生かして事件を解明してほしい』という気持ちより、とにかく目の前の患者に対して全力で治療を尽くしたいという思いだった」
 医師としてのプロ意識を表明した言葉が何とも重たい。
 話題転換。『サンデー毎日』6月14日号のジャーナリスト青木理さんによる松尾邦弘元検事総長インタビュー「黒川前検事長は政治に使われすぎた」が興味深かった。
 また同誌のその号から始まったノンフィクション作家・森功さんによる「鬼才・斎藤十一」という連載評伝も面白い。斎藤十一氏(故人)は新潮ジャーナリズムの基本を作った伝説の出版人だが、この連載は楽しみだ。

 テレビ朝日「報道ステーション」のキャスターやスタッフが新型コロナに感染したことは知られているが、その中で重症だった総合演出の伊藤賢治さんの闘病体験が十五日の同番組で放送された。いやあ、すごい。病室のベッドで咳き込んで苦しむ様子を自ら撮影しているのだ。まさに「報道魂」だ。

 伊藤さんは赤江珠緒アナウンサーの夫だが、赤江さんも自らが感染した体験をいろいろな場で語っている。『女性自身』5月26日号「赤江珠緒アナ『感染中でも2歳児の育児を...』」では、闘病を通じて気づいたことを聞かれてこう答えている。

 「治療現場に人が近づけないので臨床医の先生の声があまり取材しきれていないように思いました」

 感染の現場を伝えるというのは大変な作業で、報道する側にも覚悟と工夫が求められているといえる。

 週刊誌は各誌ともコロナ問題に誌面をさいているが、いやな気持ちになったのが『フライデー』5月29日号「持続化給付金を不正に入手する詐欺師に接触」だ。

 ペーパーカンパニーの売り上げを操作して給付金を総額五百万円申請したという男性がこう語っている。「いままでいろんな違法ビジネスに手を染めてきましたが、これほどラクに500万円が手に入りそうなことはないです」

 アベノマスクが製品不良で大量回収になった話もそうだが、緊急事態とはいえ、国は対応をしっかりしないといろいろな問題が噴出しかねない状況だ。

 『週刊新潮』5月21日号のグラビアは「チグハグな光景」と題して衆議院厚生労働委員会の写真を掲載している。感染対策として通常より大きな部屋を使い、座席も間をあけて座っているのだが、加藤厚労相の後ろだけは十人ほどがびっしりと密集して座っている。厚労省の職員が加藤大臣の答弁をサポートするために臨席しているのだ。永田町のチグハグさを風刺したものだが、その諧謔精神が週刊誌らしい。

 そのほか安倍政権がゴリ押しする検察庁法改正についても『週刊文春』や『フライデー』などの週刊誌が批判的に取り上げている。この改正もひどい話だ。

(月刊『創』編集長・篠田博之)

  コロナ禍はメディア界をも直撃している。「報道ステーション」の富川悠太キャスターやプロデューサーの感染が報じられたテレビ朝日は、十七日から三日間、本社を閉鎖して消毒を行うという。 
 コロナ問題を伝える立場だから当然注意していたはずの人までも感染してしまうというのは、新型コロナの恐ろしさを物語っている。『週刊新潮』4月23日号の見出しは「『富川アナ』深刻なる『コロナ肺炎』で『報ステ』崩壊」とすさまじい。
 総理が優雅にくつろぐ動画を投稿してひんしゅくを買うなど、コロナ対策で不人気の安倍政権に対して、小池百合子都知事の人気が上がっているらしい。ただ、それは都知事選をにらんだ小池氏の作戦によるものだ、と
複数の週刊誌が書いている。
 『週刊文春』4月23日号「小池百合子血税9億円CM 条件は『私の出演』」によると、「東京都知事の小池百合子です」で始まる連日のCMに放送局が困惑しているという。民放キー局社員がこう証言している。
 「六月告示の都知事選を控えて、出馬が確実と見られる小池氏を前面に打ち出しているこの政見放送のようなCMは、不偏不党を掲げるテレビ局にとっては由々しき事態なのです」
 記事によると、都の予備費を使ったコロナ対策十二億一千三百万円のうち、「テレビ・ラジオCM枠の確保・CM制作」に五億六千八百万円、「新聞広告」に二億三千八百万円など、宣伝広告に約九億円の予算が組まれている。「緊急コロナ対策のうち、四分の三が、小池氏出演CMを中心とする"情報発信"に使われているのだ」。
 前出『週刊新潮』も「『命か経済か』で『安倍官邸』を悪玉に!『小池知事』の『希望・野望・策謀』再び」と題して小池知事を批判。「機を見るに敏な政界風見鶏の面目躍如」などと酷評している。
 『週刊朝日』4月24日号「小池vs安倍因縁の対決再び 休業要請めぐる泥仕合の裏側」によると、現状では小池知事に軍配が上がっているようだ。ただ、この記事は「コロナ対策を政争の具にだけはしないでほしい」と結ばれている。

(2020年4月19日付東京新聞ほかに掲載)

 相模原障害者殺傷事件の植松聖被告にこのところ接見を重ねている。十九日の接見で彼が期日前投票を行ったことを聞いた。彼のような立場の者にも投票用紙が送られている現実に、戦後民主主義のシステムはそれなりのものだと感心した。

それにひきかえ今の選挙制度のもとで、民意が議席数に反映されない現実には多くの人が疑問を抱いていると思う。この間、週刊誌は総選挙の行方に多くの誌面をさいているが、それについては改めて取り上げよう。

最近、芸能マスコミで話題になったことといえば、俳優・清水良太郎容疑者が十一日に覚せい剤取締法違反容疑で逮捕されたことだ。ものまねタレントとして有名な父親の清水アキラさんが十二日に涙の謝罪会見を行った。

清水容疑者の逮捕は風俗嬢の通報によるものだが、その女性が『フライデー』11月3日号でインタビューに応じている。女性は派遣型ヘルス、通称デリヘルの風俗嬢だが、十日に客としてついた清水容疑者に薬物を強要されたという。

「彼はガラスパイプを私の口に近づけて、『吸って』と要求してきました。パイプを強引に咥えさせるんですが、私が吸い込まないものだから、球体になった先端から煙が漏れ出してしまった。彼は『吸ってないじゃん』と不満げでした」

何度も強要されながら拒み続けた女性は、ホテルを出てすぐ警察に通報した。「警官が駆け付けたんですが、私は頭痛が収まらなかったので、救急車で搬送された。夕方に体調が戻ってから、所轄の警察署で聴取を受けました。部屋が暗かったこともありますが、彼の逮捕が報じられるまで、クスリを吸っていたのが清水さんだとわからなかったんです」「いま考えても、恐怖で身がすくみます」

私も薬物事件は幾つか取材してきたが、この証言が本当だとすると、相当ひどい事件だ。『週刊女性』10月31日号によると、清水容疑者は昨年五月に結婚、十一月に娘が誕生していた。今年二月には違法カジノに出入りしていたことを『フライデー』に報じられ、一時謹慎。六月下旬に復帰したところへ今回の事件だ。家族はいたたまれない思いだろう。

(月刊『創』編集長・篠田博之)

 こんなこともあるんだ、と驚いたのが『フライデー』10月27日号「戸田恵梨香&成田凌『ドライブデート中、本誌ハリコミ車に接触事故!』で熱愛発覚」。 

十月八日、渋谷区の路上で某アイドルの張り込みを行っていた『フライデー』記者の車に後方から来た車が接触。「すみません」と運転席から出てきた男性に記者は「あれどこかで見たぞ」と思ったという。

車内ではもう一人のマスク姿の女性が誰かに電話をしている。しかもその後、先ほどの男性は後部座席に身を隠すようにうずくまっている。「怪しい。怪しすぎる!」と記者がいぶかるなか、やってきた警察官に男女は名前を名乗った。

何と女性は女優の戸田恵梨香さん、男性はドラマで共演していた成田凌さん。先頃終了したフジテレビ系ドラマ「コード・ブルー3」に出演していた二人だった。

途中で『フライデー』記者が名乗ったところ、戸田さんは「アハハ!すごいですね」と豪快に笑い飛ばし、成田さんは「すごい...」とつぶやいた。駆け付けた戸田さんの事務所社長は、記者の名刺を見て「うえ!」とうめいたという。

『フライデー』記者は思わず「お付き合いされているんですか?」と質問。戸田さんは「そういう感じではないですけど」と答えた

。『フライデー』はその一部始終を撮影し、十月十三日発売の号で「スクープ撮!」とぶちあげたのだった。

 この事件には後日談があって、実は同誌発売前日の十二日付サンスポが「戸田恵梨香・成田凌熱愛」と報道。記事中で接触事故を起こしたことに触れているものの、『フライデー』の誌名は一切出てこない。同誌発売前に交際をネガティブでない形で公にしようとの事務所の意図が働いたのではないかと噂になっている。

 さて週刊誌では今週も選挙絡みの記事が多いが、小池百合子劇場の失速を反映してバッシングが拡大している。『週刊文春』10月19日号の見出しは「小池『緑のたぬき』の化けの皮を剥ぐ!」。流れが変わると一転して叩くというのは週刊誌の特性だが、それにしてもこの見出しはすごい。

(月刊『創』編集長・篠田博之)

 

 めまぐるしく政局が動いているが、それは週刊誌の誌面にも反映されている。十月初めの週の前半に発売された週刊誌は概ね、小池人気に期待するという切り口だ。典型は十月二日発売の『週刊現代』10月14・21日号だ。表紙にでかでかと「小池総理、誕生へ」という見出しが躍っている。二週売りの合併号にこの見出しは冒険と言えるが、案の定というべきか、小池人気はその後、失速気味だ。

 それを反映して同じ講談社から週末に発売された『フライデー』10月20日号の見出しは「大迷走 小池百合子が辿る『ヒラリーと同じ末路』」。アメリカ初の女性大統領と期待されながら敗北したヒラリーになぞらえて、小池人気にダメ出しを行っているのだ。

 その変化がわかるのは『週刊文春』10月12日号が掲載した読者アンケートだ。「安倍vs小池 総理にふさわしいのは?」というアンケートをとったのだが、興味深い経過が書かれている。九月二十八日にアンケートを開始した当初は小池人気が圧倒的だったが、その後形勢が逆転。最終的に小池八百七票、安倍七百八十九票という僅差で小池さんが勝ったというのだ。

 実は同誌は同じ号で「小池百合子激白『安倍の延命は許さない』」という特集記事も掲げていた。編集部自身が小池人気に焦点をあてた誌面を準備していたわけだが、失速の影響か、「小池独裁」という批判も見られるややトーンダウンした記事になっている。

 ライバル誌の『週刊新潮』10月12日号は対照的に「小池百合子の希望・横暴・票泥棒」という小池バッシングの特集だ。小池人気が沸騰した時期に、敢えて「逆張り」を仕掛けた同誌らしい切り口だ。 

同じ号には櫻井よしこさんの「政権担当の資格はありや希望の党」という記事もあるから、保守派の立場から希望の党を批判したというのが同誌のスタンスかもしれない。リベラル派の『アエラ』10月16日号も、こちらは立憲民主党を支持する立場から「独裁者はいらない」という小池批判の特集を組んでいる。

 日々変わる政局に編集部は苦心しているのだろう。それが各誌の誌面によく反映されている。

(月刊『創』編集長・篠田博之)

 「落選させたい議員は誰ですか?」九月二十八日発売の『週刊文春』10月5日号が読者千二百人への緊急アンケートの結果を掲載している。

二位が豊田真由子、三位が山尾志桜里と、週刊誌でスキャンダル報道された議員が上位を占めたのは予想通りだが、一位が安倍晋三。それも総回答数の三分の一近い圧倒的な数だ。

編集部にとっても意外だったようで、見出し脇に「1位はなんと...」と書いている。リベラル派の新聞社系週刊誌ならともかく、保守派の同誌のこの結果は自民党には気になるところだろう。安倍首相は「今なら勝てる」という思惑で解散総選挙に打って出たわけだが、国民の反発は予想以上に強いのかもしれない。

『週刊朝日』10月6日号は、国連総会演説で安倍首相が「北朝鮮に対し必要なのは対話ではない、圧力だ」という演説を行ったが、「安倍官邸の想定外」が起きた、という話を書いている。テレビのトップニュースは首相演説でなく、安室奈美恵引退だったというのだ。

そりゃ安室引退の方がトップだろう、と誰もが思う気もするが、その引退報道が予想以上に大きな扱いだったという話を『週刊新潮』10月5日号が取り上げている。引退の理由を敢えて語らないなど、今回の発表にはいろいろな演出が見られ、どうやらその戦略をたてた大物プロモーターが存在するらしいというのだ。

同誌ではその人物は匿名だが、『週刊文春』10月5日号は「安室奈美恵電撃引退 本誌だけが書ける全真相」と題して、その人物を詳しく取り上げている。ただ「全真相」とぶち上げるほどの内容は書かれていない。なぜ安室奈美恵がこのタイミングで、敢えて引退宣言したのか。多くの人が抱くその疑問に、どの週刊誌も応えられていない気がする。

『週刊文春』記事には以前彼女が所属していた事務所の平哲夫社長の「ダンスや歌唱力が衰える前に身を引くというのはアイツの美学なんだろう」というコメントが載っている。たぶん真相はその辺なのだろう。『アエラ』10月2日号は、ファンの間に今「アムロス」が広がっているという話を書いている。

(月刊『創』編集長・篠田博之)

 後味の悪い結末だ。女優・斉藤由貴さんのダブル不倫騒動である。

 八月三日発売の『週刊文春』8月10日号が報じ、斉藤さんと相手男性が釈明を行って落着したと思われていたのだが、ここへ来て再燃。斉藤さんは九月十一日にマスコミにFAXを送り、前の会見で不倫を否定したことを撤回した。それを受けてレギュラーのラジオ番組への出演取りやめが決まるなど、仕事にも影響が出ている。

 今になって不倫を認めて謝罪することになったきっかけは、『フラッシュ』が二週にわたって男性医師とのプライベート写真を公開したことだ。五日発売の9月19日号では「斉藤由貴と不倫医師『破廉恥キス』写真」と題して、二人のキス写真を掲載。翌週号では「斉藤由貴と不倫医師『もっと破廉恥』な写真」と題して、医師が女性の下着を被っている写真を公開した。男性の顔はぼかしているが、撮影場所は斉藤さんの部屋で、ふざけて撮った写真らしい。

 キス写真が掲載され、翌週号には別の写真も出ることを知った医師が、その発売前日、十一日放送の朝のワイドショーで不倫を認めて謝罪した。続いて斉藤さんもFAXを流し、こう謝罪した。「先日の会見では、本当のことをお話しできず、誠に申し訳ありませんでした。子供達が目にすることを考えると、あの公の場で何もかもお伝えすることは、私にはどうしても出来ませんでした」

 この不倫騒動、もともと『週刊文春』と別に『フラッシュ』も七月から張り込み取材を行っていた。しかし『週刊文春』に先を越され、一週遅れの8月22・29日号で報道。巻き返しとして今回の写真を公開したらしい。

二誌が動いていたということは、発端は関係者のリークだったのだろう。報道後も二人が不倫を否定したために、今回の証拠写真が出された。遅れをとった『フラッシュ』の思惑もそこに重なったに違いない。

後味が悪いと書いたのは、この決着が二組の家族にとって良かったのかどうかわからないからだ。週刊誌にこんなふうに全てをさらけ出されたことが、例えば双方の子供にどんな影響を与えたか。釈然としないのである。

 

 八月三十一日発売の『週刊文春』9月7日号「世界的トランペッター日野皓正が中学生を『往復ビンタ』動画」は、週刊誌が変わりつつあることを示した事例といえる。

去る八月二十日、世田谷区教育委員会主催のコンサートで、日野皓正さんが、ドラムを演奏していた中学生にビンタを食らわせたという記事だが、タイトルが「『往復ビンタ』動画」であることに注目してほしい。発売に合わせて同誌は「週刊文春デジタル」でスクープ動画を公開。記事はそれを前提にして説明をしたものだ。

ライバルの『週刊新潮』も三十日に「本誌が入手した『日野皓正』暴行動画」なるものをウェブサイト「デイリー新潮」で公開した。翌日発売の号の誌面では該当記事が掲載されていないから、もしかすると『週刊文春』の取り組みを知って急きょ、入手した動画を公開したのかもしれない。

ライバル誌同士が動画をめぐる戦いを繰り広げたというわけだ。

ちなみに八月二十日のコンサートとは「日野皓正presents "Jazz for Kids"」と題し、区内の中学生を集めて日野さんが四カ月間ジャズを指導、その成果を発表したものだ。叩かれた中学生は、日野さんが目をかけていた男子で、指示を無視して長々とソロを続けたため、日野さんが怒ったらしい。ネットでは「公衆の面前で体罰を加えるのは誤りだ」という意見と「ジャズを理解する人から見れば少年の方が悪い」として、日野さんの熱血指導を支持する意見が相半ばしている。また少年自身は『週刊文春』に「自分が悪いと納得しています」と自ら電話をかけてきたという。

 思わぬ騒動になったことを受けて日野さんは九月一日、マスコミの取材に応じ、「あなたたちがこういう騒動にしてしまうことが日本の文化をダメにしてるんだ」と語っていた。日野さんの指導をどう見るかは議論すべきテーマだが、印象的だったのは週刊誌の取り組みだ。考えて見れば『週刊新潮』がスクープした豊田真由子代議士の秘書暴言騒動も、音声公開が前提となった報道だった。週刊誌が活字だけで勝負する時代が終わりつつあることを、それらの取り組みは示しているのかもしれない。