篠田博之の「週刊誌を読む」

「創」編集長・篠田が毎週、東京新聞に連載(北海道新聞・中国新聞も転載)しているコラム。

『週刊新潮』8月17・24日号が「乙武クンと愛人を糟糠の妻が訴えた!!」という記事を載せている。
乙武さんといえば昨年三月、同誌が不倫を暴き、大騒動になった。当時、妻は「私にも責任がある」と夫をかばい「糟糠の妻」と呼ばれたが、その後二人は離婚。その元妻が八月四日に、乙武さんと、不倫相手とされた女性に対して精神的損害の賠償を求める訴訟を起こしたというのだ。
なぜ今になってと思うだろうが、きっかけは昨年十一月放送のフジテレビ「ワイドナショー」での乙武さんの発言だったという。謹慎していた乙武さんが一連の騒動について説明し、それを禊として、彼は再びメディアに露出するようになった。
その番組で乙武さんは「私がしでかしたこと自体は、妻はずっと前から知っていたことなので、それ自体は二人の間で揉め事になることはなかったんです」と語った。離婚理由は不倫そのものでなく、騒動が拡大したことで、子どもを守るためには離れたほうがよいと元妻が判断したため、というのだった。
しかし今回の記事では、元妻の知人が彼女は決して不倫を容認していたわけではないと反論。そして離婚の理由について「乙武さんの態度は傍若無人で、自分が不貞行為を繰り返してきた『加害者』であるにも拘わらず、『被害者』である仁美さんに辛く当たり続けたんです」という。
「例えば、お子さんを幼稚園の送迎バスに乗せるために、仁美さんがほんの数分、彼のもとを離れると、自宅マンション内にある共用の会議室に行きたがった乙武さんは、『自分を放り出すのか』『どれだけ自分が惨めかわかるか』などと仁美さんを何度も詰り、LINEを通じても延々と彼女を責めた」。
そういう状況に妻が耐えられなくなったのが離婚の理由なのに、乙武さんの説明は一方的で、彼女をさらに傷つけたというのだ。
昨年来の乙武さんの騒動は、彼が障害者であることを抜きには語れない。妻は夫を支える支援者でもあったわけで、その関係と夫婦という関係が、騒動の中で複雑に絡み合っていたわけだ。裁判はどんな展開をたどるのだろうか。

 このところ木曜日になると芸能マスコミが騒ぎ出すというパターンが続いている。木曜発売の『週刊文春』と『週刊新潮』が競いながらスキャンダル報道を続けているためだ。 

 先週の『週刊新潮』の今井絵理子議員の不倫騒動に続いて、八月三日発売の『週刊文春』8月10日号がぶちあげたのは「斉藤由貴 背教のダブル不倫」。このところドラマでの活躍で人気が復活しつつあると言われる斉藤さんのスキャンダルだ。

 不倫の相手とされたのは主治医の男性で、斉藤さんは同誌発売日の夜に会見。医師には好意を抱いているが不倫関係ではないと釈明した。記事の中でも二人は不倫を否定しているのだが、それでも『週刊文春』が報道に踏み切ったのは、二人が映画を観た帰りに手をつないでいる光景を撮影できたからだろう。

 同誌は発売前日の二日にウェブサイト「文春オンライン」で速報。芸能マスコミの取材が殺到したために本人が会見し、それをまたワイドショーが大きく取り上げて騒動になった。このパターンも最近定着しつつある。

でもどうなのだろう。政治家の場合はともかく、芸能人のプライベートな話をこんなふうに頻繁に大騒動にしていくことにうんざりしつつある読者も少なくないような気がするのだが。

 さて最近気になるのが、眞子さまの婚約をめぐる週刊誌報道だ。七月に予定されていた婚約の正式発表が豪雨被害に配慮して延期されたのだが、『女性セブン』8月17日号は「眞子さま婚約者の語られぬ家族の身上書」という記事を掲げている。それによると、当初の祝福ムードから時間がたつにつれて皇室周辺から婚約についてあれこれ心配する声が出始めているという。

 もともと相手の小室圭さんの年収などについて気にする声はあったらしいが、七月半ばに小室さんが秋篠宮邸を訪れた際のラフな服装についても批判的な声が出たという。

 『女性セブン』は7月13日号でも「眞子さま婚約会見目前!オクから聞こえる不協和音」という記事を掲載していた。皇族との結婚となるといろいろな声が出てくるのは予想されたことではあるのだが、果たして大丈夫なのだろうか。

 

 ついに稲田朋美防衛相辞任という事態に至った安倍政権を揺さぶる一連の不祥事だが、よりによってその時期に噴き出したのが今井絵理子議員の不倫騒動だ。元SPEEDの歌手で、昨夏の参院選で当選した女性議員である。 

すっぱ抜いたのは七月二十七日発売の『週刊新潮』8月3日号「元SPEED『今井絵里子』の略奪不倫」。同議員が同じ自民党の橋本健神戸市議会議員と不倫関係にあるという内容だ。驚いたのは、同誌が七月十四日から数日間にわたって今井議員らを尾行・張り込みしたと思われる記述と写真だ。

グラビアの冒頭には今井議員が大阪のホテルのエレベーターからパジャマ姿で出て来る写真。そのホテルに二人は同宿したというのだが、次のページには二人が大阪へ向かう新幹線の車中の写真。無防備にも隣同士の席で手を握り合っている。驚いたというのは、よくこれだけ何日間も密着して隠し撮りを行えたという、その技術力についてだ。

 このところ『週刊文春』『週刊新潮』のスキャンダル報道で決め手となっているのは、徹底した尾行や張り込みによって確証となる現場を押さえていることだ。それには組織力と技術力が必要なのだが、それが発達したのは一九八〇年代の写真週刊誌ブームの時だ。既に休刊した『フォーカス』の技術は同じ新潮社の『週刊新潮』に受け継がれたと言われ、『週刊文春』では講談社の『フライデー』から移籍した記者が活躍しているという。

 今回、『週刊新潮』は、スキャンダル報道の定石通り、締切前に当事者に隠し撮り写真を示して直撃を行っている。ご丁寧にも男性議員の妻にも直撃を行っているのだが、妻のコメントは「これは決定的ですね」だ。

 今井議員は同誌の発売日に文書コメントを発表。妻と離婚協議中という橋本議員から最近になって交際の申し込みを受けていたことを明らかにしながらも、『週刊新潮』が見出しに掲げた「略奪不倫」という事実はないとした。同日、囲み取材でこうも語っている。「自民党が大変な中、足を引っ張る形になったことをお詫びしたい」。

 確かにタイミングは最悪だ。

『週刊文春』の言葉を借りれば「日本中を戦慄させている松居一代の船越に対する壮絶な復讐劇」、収まる気配がない。松居さんが公開している動画は『週刊新潮』7月20日号によると、彼女の息子の友人でベンチャー企業で映像クリエイターを務めている人物が制作していたという。

その人物の家に松居さんは身を寄せていたようだが、『週刊新潮』が嗅ぎつけて直撃。松居さんが早朝、コンビニに買い物に出た姿を隠し撮りして掲載した。居場所をつきとめられたことを知って、松居さんは既にその家を後にしたという。

もともとこの騒動、四月に松居さんが自殺を図るため、別居していた夫の船越英二さんの家に入ったところ、二冊のノートを発見したのがきっかけだった。松居さんが後に「恐怖のノート」と呼ぶそれを読んで、彼女は「死んでる場合じゃない」と思ったという。夫が不倫をし、松居さんの財産を奪い取ろうとしていることがわかったというのだ。

その後の経緯は『女性セブン』7月27日号によると、松居さんが五月に『週刊文春』編集長に手紙を書いて夫の不倫のネタを持ち込んだ。そして記者とともに不倫相手とにらんだ知人女性がいるハワイに渡って取材を敢行。しかし、確証は得られなかった。      

『週刊文春』は船越さん側にも取材して、結局7月13日号の記事は松居さんの思惑と大きく異なるものとなった。松居さんは、事前に見せるという約束も反故にされたと「『週刊文春』は私をだました」と動画で激しく非難した。

その『週刊文春』は7月20日号で「松居一代『虚飾の女王』」と題して松居さんの主張に反論。「恐怖のノート」の中身も具体的に紹介したうえで、不倫の証拠と言えるようなものではないと書いている。

船越さんと意を通じて自分を付け回していた、と松居さんが動画で非難していた『女性セブン』も、7月27日号で「松居一代がひた隠す『7つの嘘』」と題して、松居さんに反論している。

ネットで自説を展開する松居さんを週刊誌が批判するという構図ができつつあるが、この騒動、今後どうなるのか。

 

 俳優・小出恵介のスキャンダルが大騒動になっている。

 第一報は六月九日発売の『フライデー』6月23日号だ。小出がNHKのドラマ撮影のために訪れていた大阪で五月上旬、一緒に飲んだ女性を口説き、ホテルに行った。女性はその情報を同誌に提供。彼女が十七歳なため、小出の行為が青少年条例違反にあたると問題になった。

 発売前日の八日に所属事務所アミューズは、小出の無期限活動停止を発表。十日から放送予定だった小出主演のNHK連続ドラマは放送中止となった。

 そこまでは前回の話だが、騒動はそれにとどまらなかった。十日付スポーツニッポンが、小出は女性から五百万円を要求されていたと報道。同時にネットでは女性のプライバシーが次々とさらされ、彼女が当初、小出との関係を自ら吹聴していたことも暴露された。

 ネットでは、小出がはめられたのではないかと女性への非難が吹き荒れた。そして彼女はそれを否定するため、十五日発売の『週刊文春』6月22日号で経緯を告白した。なぜ同誌かというと、実は六月初め、最初に彼女がタレコミをしたのは『週刊文春』だったのだ。

 情報提供を受けた同誌は「彼女が金銭目的で証言していることを隠さなかったため」「記事化を慎重に検討」。そこで女性は『フライデー』に話を持ち込んだ。五日に同誌の取材に応じた彼女は、同日、それを小出に伝え、翌六日に小出本人と会った。

 小出は『フライデー』が彼女に提示した謝礼の額を聞いて、それ以上の金を払うので記事を止めたいと要望。二百万円で話がついた。スポニチの報じた五百万円という額は、女性によると一度も話に出ていないという。そして女性は『フライデー』に電話して掲載を止めてほしいと伝えた。だが、同誌は「止められない」と答えたという。

 結果的に『フライデー』が報道し騒動になったわけだが、同誌6月30日号の続報によると、女性もバッシングによって精神的打撃を被っているという。

 十五日、アミューズは、女性との間に十日付で示談が成立したと発表した。一部報道によると、近々、警察による任意の事情聴取が行われるという。

 『週刊文春』と『週刊新潮』は、ともに保守系雑誌として、嫌韓憎中、朝日叩きなど足並みを揃えてきたのだが、このところ対照的な論調が目立つ。

例えば先の高市早苗総務相「電波停止」発言をめぐっての記事も好対照だったが、顕著なのは最新号の熊本地震報道だ。『週刊新潮』4月28日号が「川内原発停止を言い出した野党『便乗政治家』の見識」という記事を掲げたのに対し、『週刊文春』4月28日号は対照的に「原発は本当に大丈夫か?」という十ページに及ぶ特集を掲げている。

その中身もなかなかすごい。「『停止必要なし』丸川珠代担当大臣原発は素人同然」「震源北東へ伊方原発、玄海原発に警鐘を鳴らす地質学者」「震動・津波対策強化も火砕流直撃には打つ手なし」と原発稼働を続ける政府を真っ向から批判しているのだ。

見方によっては『週刊文春』がリベラル派に近づいたと言えなくもないが、これは政治的スタンスというより、読者の違いによるものだろう。『週刊新潮』は高齢の男性読者が多いが、『週刊文春』は女性読者が半分を占める。メディアはそれを支える読者に引っ張られるものだ。

話題転換。週刊誌の見出しと中身が違っているとはよく言われるが、『週刊現代』4月30日号がすごい。同誌記者がセブン&アイ・ホールディングス鈴木敏文会長の自宅を直撃したところ、会長は同誌の以前の記事を激しく批判。「まったくデタラメ」「なんでそういう嘘を書くのかね」「売らんがためのことを平気で書かれたらね。大変迷惑だ」。

その批判をそのまま載せたのはりっぱだが、何と見出しが「スクープ!鈴木敏文独占激白『裏切り者たちに告ぐ』」。やりとりの合間に語った話をこう載せるというのは、週刊誌はやはりしたたかと言うべきなのか。

最後に。前橋スナック乱射事件の矢野治死刑囚が他の殺人を告白した文書を警視庁に提出したというニュースが新聞・テレビで一斉に報じられた。実はこれは『週刊新潮』が何週にもわたって続けてきたスクープだ。週刊誌と新聞・テレビの報道の関係を示す事例なので、改めて取り上げることにしよう。

(月刊『創』編集長・篠田博之)

 四月八日に突如会見を開いて違法カジノに出入りしていたことを謝罪したバドミントンの田児賢一・桃田賢斗両選手については、日本バドミントン協会が十一日に厳しい処分を発表。一件落着かと思いきや、週刊誌にその後次々と桃田選手のプライベートな写真が掲載されている。同時にこの騒動の背景も少し明らかになった。

 『週刊新潮』4月21日号によると、発端は三月三十日、インド遠征中の桃田選手の携帯に突然、電話がかかってきたことだという。「あなたは違法な会員制の店に通っていましたよね。女性と一緒に写っている写真も見ましたよ。よろしければ一度、お会いして話しませんか」。そういう内容だった。

 『週刊新潮』は今回、取材によって、その電話をかけた人物に接触。桃田選手を脅迫したのかと質すと、この人物は「とんでもない!」と否定。そしてこう説明したという。

 「発端は、昨年末に

"田児選手が錦糸町の闇カジノで遊んでいた"という情報を知人のフリーライターが掴んできたことです。私は取材に協力するつもりで事情に明るそうな関係者を当たってみました。すると、田児選出と一緒に桃田選手がカジノに出入りしていたことに加え、界隈の飲食店で乱痴気騒ぎしている写真も目にしたんです」

 そして、この人物は桃田選手に電話したのだが、「その日のうちに、私の電話を巡って警察が動いているらしいという情報を耳にした」という。恐らく桃田選手側も恐喝の可能性を考えて関係者に相談し、結果的に謝罪会見を開くことになったのだろう。

 前述の話に出てきた写真が、今回『週刊新潮』『アサヒ芸能』『フライデー』などに掲載されたものだ。スナックのママと桃田選手が酔っぱらって抱擁したりしている写真だ。『フライデー』4月29日号によると、ママには目をかけていた暴力団組長がおり、写真は店の関係者から流出したのだという。

 恐喝でなく取材だったのなら、そのフリーライターが名乗り出て真相を語ってほしいものだが、ともあれ、突然の会見から処分発表と事態が一気に動いた背景にはそういう事情があったらしい。

(月刊『創』編集長・篠田博之)

 乙武洋匡さん擁立という参院選へ向けた自民党の思惑をスキャンダルによって打ち砕いた『週刊新潮』が、返す刀で民進党のホープ山尾志桜里政調会長を追及している。4月7日号「500万円の架空資金!? 山尾志桜里の奇妙な政治資金」に続いて、4月14日号でも「山尾志桜里は地球5周分でも菅も地球5周分!」と大きな見出しが躍っている。

山尾政調会長も会見で釈明に追われるなど決着はついていないのだが、特徴的なのは、メディアによってこの問題の扱いが分かれていることだ。『週刊新潮』の追及と同じ週発売の週刊誌でも、例えば『フラッシュ』4月19日号は「山尾志桜里激白!『ヤメ検政治家の流儀』」と題して山尾氏を持ち上げるかのようなインタビュー。『週刊現代』4月16日号に至っては「山尾志桜里 東大時代は『駒場三大巨乳』で有名でした」という、ちょっと能天気とも言える記事を掲載している。

新聞などでもこの問題の扱いが異なるのは、これが参院選へ向けた政治的な意味合いを持つことを認識しているからだろう。ネットなどでは、このスキャンダル自体が官邸の民進党へ向けた情報戦だという見方もある。 

一方で、甘利明前大臣のスキャンダルをめぐっては東京地検が強制捜査に乗り出した。自民党、民進党それぞれの問題をメディアがどう報道するかは世論に影響を及ぼすのは必至だし、私たちもメディアリテラシーを働かせて報道に接していくことが必要だろう。

一方、世間の関心ということで言えば、それ以上に大きな話題は、二年間も少女を監禁していたという寺内樺風容疑者の事件だろう。この容疑者がどういう供述をしていくのか、事件の背景は何なのか。こういう時こそ、事件の背景に踏み込んでくれる週刊誌に期待する人も多いと思うのだが、現時点で言うと、さほど踏み込んだ記事は見られない。

比較的大きなページをさいているのは『週刊新潮』だが、新聞・テレビの報道を超えるものではない。情報が限られているからやむをえないのだろうが、ある意味で時代の陰を映し出しているような印象のあるこの事件について、週刊誌などの報道に期待したい。

(月刊『創』編集長・篠田博之)

 「マスコミをこらしめる」――すごい言葉だ。話した本人の意図と別に、自民党の政治家がいかに驕りたかぶっているかを端的に示している。

 週刊誌も一斉に反発している。「3バカ議員のオツムの中身」(週刊文春)「自民党『マスコミ弾圧』3兄弟」(フライデー)など三議員への非難は相当なものだ。

 ただ問題なのは、これが三人の議員のキャラクターだけに帰すわけにはいかないことだ。若手議員たちの勉強会発足の背景について『週刊朝日』7月10日号がこう指摘する。 

「そもそも今回の会発足は、首相も大歓迎だったという。自らのヤジや憲法学者の『違憲』発言で、政権に逆風が吹き始めていただけに、流れを変える"援軍"と期待したようだ」「さらに『この会にはもう一つ重大な役割があった』と言うのは自民党関係者だ。『9月に総裁選がありますが、今回の"若手応援団"結成で、首相の無投票再選の流れをつくろうとしたのです』」

三議員の発言は、表現が下品すぎて反発を受けたけれど、マスコミを押さえ込んでしまいたいというのは安倍政権自体の考え方かもしれない。

さてその三議員とともに批判されているのが作家の百田尚樹氏だ。しかし講談社、新潮社、文藝春秋などにとっては、百田氏は批判するわけにいかないベストセラー作家だ。『週刊新潮』などは、三議員については「三バカ大将」などと断罪するものの、百田氏については、逆に当人の反論を大きく掲載している。タイトルは「私を『言論弾圧』男に仕立てあげた大マスコミに告ぐ」だ。

その中で百田氏は、沖縄二紙を「つぶさなあかん」と言ったのは冗談だったとか、「言論に対して、公権力や金や暴力で圧力をかけるということはあってはならない」などと書いている。

でも率直に言ってこの弁解には説得力がない。権力を握っている与党の会合で報道機関を「つぶさなあかん」と言うことがどんな意味を持つかは考えればわかることだ。「私も言論人のはしくれ」とも書いているが、そうであれば報道機関を「つぶせ」という表現はどう考えてもまずいだろう。

 神戸連続児童殺傷事件の元少年Aの手記『絶歌』が出版され、大きな反響を呼んでいる。週刊誌も各誌が取り上げているが、手記内容や出版そのものを批判する論調が多い。  

わかりやすいのが『週刊新潮』6月25日号の見出しだ。「気を付けろ!『元少年A』が歩いている!」。かつて「気を付けろ!佐川君が歩いている」とパリ人肉事件の佐川一政氏を非難した見出しをもじったものだ。つまり殺人を犯した人間が、遺族の哀しみも癒えないのに、のうのうと社会に復帰している、という非難だ。

今回の手記出版に対して非難の嵐が吹き荒れ、販売を自粛する書店も出ているという、その逆風の強さの背景はそういうことだろう。手記自体は話題を呼んでベストセラーになっている。犯罪者の手記としては過去に例のない売り上げになる可能性もあるが、そのことがまた批判の対象となっている。『週刊新潮』の記事の見出し脇には「遺族感情を逆なでして手記の印税1500万円!」と書かれている。

「少年A『手記』出版禁断の全真相」という十五ページもの大特集を掲載したのは『週刊文春』625日号だ。「私はこう読んだ」と題する識者の感想も含め、特集全体に手記出版を非難する空気が色濃く感じられる。

同誌が他誌を凌駕する突っ込みを見せたのは幻冬舎の見城徹社長の詳細なコメントを載せていることだ。もともと手記は元少年から見城氏のもとへ持ち込まれ、同社では出版が難しいという判断のうえで親しい太田出版に紹介されたという。

その幻冬舎の動きを最初にすっぱ抜いたのは『週刊新潮』1月29日号「少年Aの手記出版を企図した幻冬舎への風当たり」だった。同誌の直撃に幻冬舎は出版予定を否定したのだが、それに元少年は動揺し、どうしても幻冬舎で出したいという当初の希望を変える契機になったという。

私自身は、手記の内容にはいろいろ思うところはあるが、社会的議論の素材が提供されたこと自体は否定されるべきではないと考えている。手記をめぐる議論は、恐らく今後、少年法についての議論とつながっていくのではないだろうか。

(月刊『創』編集長・篠田博之)