NHK受信料督促裁判を考える

NHKによる、受信料支払い拒否者への法的催促と裁判を、「公共放送」や「受信料」というものについて具体的に議論する良い機会として捉え、考えていくブログです。

 残念ながら5月31日に受信料拒否裁判で最高裁が上告棄却。東京と札幌の両方の裁判について決定が出ました。報道によると「2件の訴訟の上告審で、最高裁第3小法廷(田原睦夫裁判長)は男性側の上告をいずれも棄却する決定を出した。決定は5月31日付で、東京都内の2人に計約19万3700円、札幌市内の男性に約17万7000円の支払いを命じた2審判決(10年6月と同11月)が確定した。NHKが起こした同種訴訟で最高裁まで争われて確定するのは初めて」とのこと。受信料拒否裁判はひとつの大きな区切りを迎えたといえます。弁護団や被告当事者のコメントを含め、詳しい総括を含めて報告しようと思っているうちに、弁護団の中心メンバーだった日隅弁護士の病気も重なって、時間がたってしまいました。遅ればせながら『創』編集部としてコメントをしておきます。

 今回の決定についてはネットでも話題になり、様々な意見が書きこまれました。多いのは両裁判とも受信料契約の有効性が争点のひとつだったため、「受信料契約を結ばなければよかったのに」「契約を結んでおいて支払い拒否してもだめだ」という意見でした。ただ、このブログの最初の説明のところで書いたように、実は放送法で、テレビを持っている家庭は受信料支払いの義務があることがうたわれており、契約を結ばなければよいという簡単な話ではないのです。

 東京の裁判では、契約の有効性だけでなく、この放送法に決められた受信料支払い義務そのものについて争ったわけです。結果的に裁判所によって、契約が成立していることが認定されてしまったのですが、実態は契約といっても領収書が契約書も兼ねているため、一度集金人に金を払ってしまうと、視聴者が契約したという認識のないまま契約したことになってしまうというのが現状です。

 東京の裁判は、こういう契約のシステムだけでなく、放送法の規定、さらには今の受信料システム自体が憲法違反かどうかを争ったものですが、裁判所は憲法判断についてはあまり踏み込みませんでした。今回の最高裁判決は、受信料問題に大きな意味を持つのは確かとはいえ、札幌の裁判が1審はNHK側の敗訴になったことでもわかるように、実際は解釈が分かれる部分もあり、今後も様々なケースで裁判が行われる可能性があります。

 一応裁判も集結したので、このブログは閉じようかと思ったのですが、実はその後も、いろいろな問い合わせが届いており、全国で裁判を行っている支払い拒否者は少なくないようです。ですから、このサイトはもう少し存続させることにしました。

 ネットでは、裁判になったケースについて、「どうして特定のケースだけ裁判になっているの?」という書き込みもありますが、これもこのブログを丹念に読み返していただくとわかります。もともとは受信料支払い拒否が増えたのに頭を痛めたNHKが、支払い拒否者を次々と法的措置に訴えるというのを全国で展開し始めたのがきっかけです。大半の人は、裁判所から通知を受けたりした段階で、お金を支払ってしまうのですが、なかにはそういう強制的なやり方も含めて反発し、途中で妥協せず「敢えて裁判を受けてたつ」人が出たのです。

 支払い拒否をしている人のなかには、NHKの不祥事などに怒って意識的に不払いを始めた人も少なくないため、目先の損得を抜きにして裁判で争う道を選んだ人が各地に出現したのでした。ですから、この裁判は、そのプロセスのなかで、多くの人があまり意識したことのない受信料制度について改めて議論し、考えてみることに価値があるのです。このブログを立ち上げたのも、そういう意図からでした。

 現在も裁判を続けている人からのメールもいまだに届いており、今後もいろいろな事例をさしつかえない範囲で紹介します。また、確定した裁判については、弁護団を入れてきちんと総括する必要があります。これはもしかすると月刊『創』(つくる)の誌上で行うかもしれません。

 なお弁護団長の梓澤さんが東京の裁判の過程で1審判決について自身のブログで論及しています。参考にしてください。
http://www.azusawa.jp/comit/20091219.html

 既に報道されている通り、以前このサイトでお伝えしたNHK受信料をめぐる札幌での裁判が、11月5日、逆転敗訴となりました。世帯主である男性の契約を妻が無断でサインしていたケースでしたが、1審の札幌地裁は契約が無効だとしてNHKの請求を棄却したのです。ところが、高裁の判断は違っていたというわけです。

 以前も書いたように1審判決は実に画期的で、これが判例として確定するとNHKの督促は困難に陥ることが予想されたのですが、それゆえNHKとしては絶対に認めることができない判決だったわけです。10月末現在で既に全国で69件の判決が確定しており、全てNHKの勝訴です。札幌の1審判決はそこに風穴をあけたのですが、状況はそう楽観視できるものでなかったことも確かです。

 東京での裁判は現在最高裁で審理中ですが、これは札幌の裁判のように契約手続きの無効を主張するだけでなく、憲法判断にまで踏み込み、放送法そのものを問う裁判です。全国各地で審理中の裁判は恐らくほとんどが契約手続きの有効性が争点になっていると思いますが、高裁で逆転されたとはいえ、札幌地裁の判決は勝訴の可能性もわずかながらあることを示したという意味で重大なものでした。


 個人情報を含んでいるためなかなかストレートにこのサイトにアップはできないのですが、実はこの間、NHKと裁判をしている多くの人から相談が寄せられてきました。最近も、首都圏在住の女性から相談のメールが届きました。やはり契約手続きの無効を訴えて簡裁で審理中です。こういうケースについては本人の了解を得て、いずれかのタイミングで詳細な経緯を公開できたらと思っています。

 NHKが法的督促をかけ裁判に至っているのは、不払いが数万円から十数万円のケースです。弁護士を依頼すると、勝訴したとしても弁護費用の方が高くつくので、なかなか弁護士を雇えないわけです。NHKはたぶんそのあたりも見込んで法的督促をかけていると思われます。だから東京の裁判は、弁護団が報酬をもらわないという前提で弁護団を組んだわけです。今のところ、この弁護団は完全な手弁当ですから、他の裁判まで支援することは不可能です。ですから、札幌の場合は弁護士がつきましたが、それ以外のケースでは訴えられた本人が弁護士をつけずに裁判を行っているケース(本人訴訟)も多いと思います。前述した最近相談を受けているケースも弁護士をつけずに裁判を行っています。

 裁判は弁護士を雇わなくても本人でもできるのですが、最低限のサポートは必要です。本当はこのサイトで様々な裁判の事例をそのまま公開できるとこれから裁判を受けて立とうとしている人たちに大いに参考になります。だからここでお願いしたいのですが、受信料裁判を経験した人たちは、できるだけ可能な範囲で経験をこのサイトで公開して下さい。これから同じ立場に立たされる人たちにとって、その経験は大きな意味を持つはずです。『創』編集部も弁護士と相談しながら、可能な範囲ではあれ、できるだけ裁判を続けている人たちをサポートしていきたいと考えています。

長期にわたりつつある東京のNHK受信料裁判ですが、2010年6月29日、残念ながら2審の高裁も敗訴判決でした。各地で同様の法的督促が行われているだけに、この裁判は重要なのですが、なかなか勝訴は難しいようです。

2審判決では被告側が受信料制度を憲法に照らして批判した部分について、ほとんど退けています。次はいよいよ最高裁ですが、この間、被告側に有利な新証拠が見つかったりもしていますので、まだあきらめる必要はありません。

では以下、2審判決の憲法判断の部分を公開します。

http://www.tsukuru.co.jp/nhk_hanketsu.pdf

 インターネットのすごさに驚くことはしばしばなのですが、今回もそうでした。先日、3月19日に出たNHK受信料裁判の札幌地裁の判決を画期的だと評価し、できれば被告の方は連絡下さい、とネットで呼びかけたところ、来たんですね。その被告の代理人である弁護士からメールが。
 こういうことって既存のメディアだと、よほど影響力の大きい媒体でない限り、ありえないことですよ。ネットの場合は検索機能がついているので、被告側が関心を持ってネットを見ていればこの呼びかけに気づくんですね。本当にすごいことだ。
 と感心してばかりいないで本題に入ります(笑)。
 判決文を仔細に検討し、その内容については追って詳しく紹介しようと思いますが、まず今回は、この札幌判決がどういうものだったかだけ書いておきましょう。同じようにNHKの法的督促を受けている人にとっては、これは本当にすごい判決で、NHKの弁護団が顔面蒼白になったであろうことは確かです。東京の裁判では地裁が被告側の主張をほぼ全面的に退けたのですが、では札幌地裁はどうして被告側の主張を認めたのか。これは裁判の争点の組み立て方が違うからなんですね。本当は判決文を個人が識別できる部分を伏せて全文公開するのがよいのですが、被告の主張自体が個人情報とも関わっているので、それは今回は保留して、中村弁護士のコメントと、判決の末尾の裁判所の考えを示した部分のみ原文を公開することにします。
 まず弁護士のコメントですが、メールの、参考になりそうな部分を紹介しましょう。
********

私は札幌の弁護士○○と申します。「NHK受信料裁判を考える」のページで札幌地裁の3月19日判決が取り上げられていたのを拝見しましたのでメールします。
私はこの裁判で被告の代理人をしていた弁護士です。
この判決は,法律論の上で大きな影響があると思います(翌3月20日の北海道新聞の「全国の訴訟に影響も」の記事がもっとも正鵠を得ています。判決当日,(おそらく)東京の弁護団の弁護士の方からも連絡をいただき当方から電話もしたのですがつながらず,その後忙しさにかまけてそのままになってしまいました)。
また,放送受信契約とは何か,受信料とは何かについて法律的にきわめて掘り下げて言及した判決と考えています。
私は,比較的消費者事件等を取り扱うことが多いのですが,依頼者(被告)がこの裁判を戦うことにした大きな動機のひとつは,「受信料を支払っていない人は,確信的な人も含めたくさんいるのに,なぜ自分のように契約してしまった人だけ,しかも本件のように自分が不在中に妻が軽い気持ちでハンコを押してしまったような人を相手に裁判をするのか」という点でした。あまり大裁判にするという気持ちはありませんでした。
あらかじめ申しておきますとこの裁判では,東京訴訟のように憲法問題は主張していません。論点はただひとつ「NHK放送受信契約に,民法761条(日常家事債務の連帯責任)の適用はあるか」と言っても過言ではありません。したがって,細かい事実はあまり問題ではなく,法律解釈の問題です。
法律論となって恐縮ですが,「NHK受信料は,食料品の購入や電気ガス等の公共料金と同じように『日常家事債務』というものの範疇に入るかどうか」ということも,(もちろん一応「入らない」という主張はしましたが),問題ではありませんでした。
「そもそも,761条の趣旨からみてNHK受信料契約は適用されるべきではない」という結論です。その理由は,受信料契約は「片務契約」であり,受信料は「いわば国民の特殊は負担金」であるので,「双務契約における(夫婦と取引した)相手方の保護のための規定である民法761条は,適用がない」という論理です。
私も,「761条は『原則として』双務契約に適用がある。過去の判例,裁判例の事例もすべて双務契約であり,受信料には適用はない」と主張していたのですが,判決の方が私の主張よりも明快でした。
受信料契約が「片務契約である」というのは,裁判官の釈明に対しNHK側が明確に述べています(「双務契約」となると,放送と受信料との対価関係の問題が出てくるので,NHKは口が裂けてもそうは言えない)。また,受信料が「いわば国民の特殊な負担金」というのも,NHK側が提出した書証(国会答弁や,放送法逐条解説)から認定されています。
NHKは,「(昨年の)東京地裁を含め,裁判例は,受信契約に761条の適用を認めている」と主張しましたが,判決は,「それらの裁判例は,放送受信契約の性質が争点とはなっていなかった」と退けました。また,NHK側は,きわめて著名な民法学者3名の意見書(761条適用肯定)を証拠として提出してきましたが,これも,「片務契約であること,特殊な負担金であることに言及されていない」として採用しない,と述べました。
ところで,NHKは,この判決についてのニュースで,「判決は,国民の大多数が契約を締結することが望まれる,と述べた」と言っています。たしかにそのとおりなのですが,これは,裁判所が和解勧告をした経緯に関しての記載であり(裁判所は,裁判の途中,二度に渡り「今までの分はチャラにして,今後,きちんと被告(夫)との間で契約する」,という和解を勧告した。当方(被告)は応じるつもりでいたが,NHK側が拒否),NHKの報道の仕方は,ちょっとニュアンスが違います。
以上長くなって申し訳ありませんでした。ただ,民法の適用という専門的な判決だったために,あまり正確に伝えられていず,しかし,前述したとおり,「受信契約」「受信料の支払い」という点について,深く掘り下げて考察した判決であることは間違いないと思います。
****************
 論点がどういうものだったか、大体わかったでしょうか。詳細については追って説明するとして、次に判決文の末尾の部分、裁判所の見解を示したところはこちらをご覧下さい。NHK判決PDF.pdf。ファックスをスキャンしたので読みにくいと思いますがご容赦下さい。

資料が揃ってから書こうと思っていましたが、時間がどんどんたっていくので、とりあえず現段階で書いておきます。3月19日に札幌地裁で出されたNHK受信料裁判の判決は、その持つ意味を考えるとすごいことです。東京では扱いが小さいのですが、本当はもっときちんと新聞などが掘り下げて報じるべきものです。
このサイトで詳しくお伝えしてきた通り、同じ受信料拒否裁判でも東京の場合は、被告側の敗訴、つまりNHK側の主張が認められたのでした。ところが、今回の札幌での裁判は、東京の被告と似た事例なのですが、NHKが敗訴したのです。このケースは契約に応じたのが、当人が不在中に対応した妻だったというもので、契約は成立していないと裁判所が認定したのですが、これでNHKが敗訴となると、他の裁判にも大きな影響を及ぼすことは必至です。たぶんNHKは驚天動地だったのではないでしょうか。
東京地裁と札幌地裁の認定はどこでどう異なったのか、詳しく分析する必要があり、今東京の弁護団も資料を取り寄せているのですが、札幌の判決には、関係者も驚いたのではないでしょうか。この判決が前例となると、この間の他の地方での裁判の形成が逆転する可能性があるからです。
で、この問題がなぜ大事かというと、これが単に不払いの個人の主張が通るかどうかということでなく、受信料制度ないし公共放送とは何なのかという根源的な問題につながっているからなのです。筆者(篠田)もこの裁判に関わる過程で多くのことを学んだのですが、そもそもNHKの受信料制度というのは、戦後の民主化の中で、放送を市民が支えることで権力から独立性を保つという理念でスタートしたものなのです。それが次第に形骸化し、払っている側もあまり意味がわからないまま払い続けてきたわけですが、このメディア激動の時代状況の中で、公共放送というあり方を「そもそも」論にまでさかのぼって議論することはすごく大事なことなのです。
本当はNHK側がそういう議論を起こすべきなのですが、当面受信料確保を狙っているために難しい議論に立ち入って裁判を長引かせたくないからと、原告のNHK側はそういう議論を避け、手続き論だけで勝負してきました。つまり契約が成立しているか否かだけを争うという戦法です。で、東京の場合は、それでNHKの思惑通りの判決が出たのですが、今回の札幌の裁判は、そのNHKの戦法が破たんしてしまったわけです。これは東京での高裁での審議にも影響を及ぼしかねないものです。
 というわけで、こういう問題をきちんと取り上げられない大手マスコミのふがいなさを見るにつけ、『創』の出番だ!と思うのですが、『創』も最近は大変で(苦笑)思うようにはいきません。今回もその札幌での裁判の被告の人に連絡をとろうと思ったら、以前のメールがどこへ行ったかわからず、いまだに連絡がとれない始末(トホホ)。もしこの書き込みを見ていたら、連絡下さい!札幌の人。
 ちなみに東京でのNHK受信料裁判控訴審ですが、次回の期日は4月27日午後3時、東京高裁817号法廷です。

これまで被告については個人情報を伏せ、本人の生のコメントも控えてきましたが、判決を受けて控訴という局面にいたり、やはり被告当人のコメントをそのまま公開した方がよいだろうと思いました。そこで被告の一人にコメントを依頼し、送ってもらったものを弁護士の確認のうえで、以下原文通り公開します。(編集部)


まず今回の地裁での判決は敗訴という結果になり、残念の一言です。

もちろん、最初から簡単に勝訴になるとも思ってはいませんでしたが、
判決理由については、こちらの事情もある程度考慮に入れてくれた上で
判断をしてもらえると期待していました。

ところが、今回の判決理由については、こちらの言い分はほとんど
考慮に入れて貰えなかったというのが実情です。

放送法についても、こちらは放送法そのものに問題があるという
問題提起をしているのに、今回は裁判所ではその判断までは踏み込まず、
無難に現在の放送法を容認する態度に終始していたという印象でした。


さて、今回の裁判所の判断において、一番気になった部分はここです。
(論点を抜き出すため抜粋)『...放送法は、広告料収入等を財政基盤と
する一般放送事業者と、広告料収入等を財政基盤とせず、営利を目的と
しない原告(※NHK)とを並立させ、かつ、原告の財政基盤を国家予算ではなく
放送受信料に依拠させることによって、一方では広告主の意向や
視聴者の意向(視聴率)に配慮した一般事業者による放送を実施させ、
他方では、広告主、視聴者及び国家のいずれの意向にも影響されない
原告による放送を実施させ、もって、放送番組の多元性及び質的水準の
確保等を図ろうとするものである。このような放送法の趣旨にかんがみれば、
原告は、広告主や国家はもちろん視聴者からも一切の影響を受けず、
自らの表現をの自由を全うすることによって、「豊かで良い放送を行う義務」
を実践することが求められているというべきであって・・・』

簡単に言えば、NHKは誰からの影響も受けずに、好きな番組作りができる、
そのための放送法である、というように読み取れますが、
それはあくまでも、NHKを放っておけば「豊かで良い放送」をしてくれると
いう、まるでNHKが神のような存在である事が前提の下での論理です。
しかし実際には、国民の皆さんも知っての通り、誰にも監視されずに
放っておけば、職員は不祥事を繰り返し、番組作りは民放同様に視聴率を
意識したものへと変化して行きました。
NHK職員も人間ですからミスもあります。また、好き勝手にやってもいいと
いう環境で誰の監視も受けずにいれば、組織の腐敗が発生し、不祥事の温床と
なるのはある意味当然の事でしょう。
では誰がNHKを監視するのか。それは視聴者であり、また放送法そのものに
関わる主権者である国民以外にはあり得ません。

そして、国民がNHKの行動をNGと判断した時、唯一直接NHKに対して実力行使
できる手段が、「受信料の支払い拒否」だと思うのです。

確かに受信料を支払いつつ、NHKに意見を述べていくというやり方もあるでしょう。
しかし現状のNHKの態度を見る限り、その意見を真摯に受け止めて改善していくどころか、
「何か文句を言ってきているが結局受信料は払ってくれるいいお客さん」扱いで、
「貴重なご意見をありがとうございました」と言われておしまいです。

本来ならば、放送法を改正し、NHKの状態に問題があると判断すれば
きちんと受信契約を中断・破棄できるのが一番望ましいのですが、
現在の放送法はおかしなことに、テレビを設置した場合強制的に、
NHKと受信契約を結ばなければいけない、という事になってしまっています。
ここには契約理念の大前提である「両者の合意をもって契約の締結とする」
という部分が根本的に欠けています。

さらに、今回のように、NHKにNGを出している国民の声を、支払い督促という
形で裁判に持ち込んで封殺しようとするようなやり方は、裁判を起こしやすい
大組織が、裁判に応ずる費用や手間を考えれば現実的に難しい個人に対して
一方的につぶしにかかる、卑怯きわまりない方法と言わざるを得ません。

しかし今回の裁判では、幸いな事に弁護士の先生方を始め、数多くの方が
ボランティアで応援してくださり、NHKのあり方を問い直す裁判にするべく
奮起されています。

今、NHKは自ら、「国民に本当に必要とされているのか」という事を
真摯に問い質さなければならない時期に来ているのではないでしょうか。
理想としては、本当にNHKを必要と考えている人が公平に受信料を納める
形になる、電波スクランブル制度を導入するべきでしょう。そうしても、
もし国民の大多数が、現状のNHKには何の問題もないと考え、受信料も納得して
支払っているというのであれば、NHKの経営には何の問題もないはずです。

NHK受信料の、ひいてはNHKという組織のあり方の問題は、決してどこかの
遠い問題ではなく、日常的にテレビを見ている国民の皆さん全てに関わる
重要な問題です。
今一度、テレビを見る時に、心の片隅でこの問題を思い出して頂ければ幸いです。

 7月28日の判決文をアップします。判決文は文書自体はA4用紙21ページ。そのうちの個人情報に関わる部分を除いて公開します。
 最初に主文があって、被告それぞれ幾ら支払えという文言が書かれています。法廷で読まれたのはここだけでした。続いて「事実及び理由」に入り、まず認否の内容などが書かれているのですが、ここも個人に関わるので省略。ということで公開は判決文の6ページ、「3、抗弁」から行います。これは被告側がどういう抗弁を行ったか、つまり被告側の主張がまとめられています。続いて10ページから「4、抗弁に対する認否」。ここは原告NHK側の主張がまとめられています。
 そして11ページ以降が「当裁判所の判断」。原告・被告の主張を踏まえて、裁判所がどう判断したかが述べられます。そのうちの「請求原因について」は、個人情報がたくさん出てくるので省略。「2、抗弁について」から公開します。

ブログNHK画像20090804192255146_0001.JPG

←クリックで拡大

 

↓↓判決文の全文はこちら↓↓ 

NHKblog.pdf

裁判開始から2年余、弁護士を探し始めた段階からすると3年にわたったNHK受信料拒否裁判ですが、7月28日の東京地裁判決については、朝日新聞、毎日新聞などが大きく報道したために、このサイトにもメールがたくさん届くなど予想外の反響がありました。

特に毎日新聞は見出し4段、記事8段という大きな扱いで、解説記事までつけるという異例の報道でした。今までほとんど大手マスコミが取り上げないことに半ばあきらめも抱いていた側からするとうれしい限りです。支払督促裁判で最後まで和解を拒否し、判決が出たのは今回が初めてなので、ニュース価値があると判断されたのでしょう。

でも、この裁判をずっとフォローしてくれた大手マスコミはほぼ皆無ですから、これまでの法廷で何が議論されてきたかまで解説できるのは、このサイト以外にないと思います。そこで、判決を詳しく検証する試みをやろうと思いました。それと、今回の判決を受けて、被告の方のコメントも公開したいと思います。これまで被告の肉声が公になる機会はなかったのですが、せっかくなのでコメントしてもらうことにします。

今回たくさんの方からいただいた感想もなるべくコメントとして公開することにしました。なかには「裁判なんて、なに無駄なことやっているんだ」という意見もありましたが、こういう素朴な意見も公開し、議論していきたいと思います。

判決当日にコメントしたように、過去2年間にわたって弁護団が展開した「公共放送とは何か」「受信料制度とは何か」という議論は、判決でほとんど触れられていないのですが、ただ詳しく読むと、裁判所として微妙な領域にまで少し足を踏み入れた記述もあります。

例えば、被告は、NHKの不祥事や放送姿勢に対する抗議として受信料支払拒否をしたとして、それを正当な権利と主張したのですが、公共放送の理念として、放送法に照らしてそれを正当と判断するのか否か、という問題です。つまり、公共放送とは、国家権力やスポンサーから独立して、市民が受信料によって放送を支えるというシステムですから、抗議の意思表示として、不払いという権利も担保されていると思うのですが、果たしてその主張に対して裁判所がどう判断したのか、ということ。これは極めて大事な論点です。

で、判決でそこがどう書かれているかというと、こうなっています。

《放送法の趣旨にかんがみれば、原告は、広告主や国家やもちろん視聴者(放送受信契約の相手方)からも一切の影響を受けず、自らの表現の自由を全うすることによって、「豊かで良い放送を行う義務」を実践することが求められているというべきであって、原告が負担する「豊かで良い放送を行う義務」は、放送受信契約の相手方(被告ら)個々人に対する義務ではないというべきであるから、同義務は、被告らが負担する放送受信料支払義務とは牽連関係にないと解するのが相当である。》

 いやあ、わかりにくい文章でしょう。結論的に言うと、被告の主張を退けているんですが、ここで裁判所がどういう解釈をしているのか、近々判決そのものの主要部分をそのままアップしますので、興味ある方は前後の文脈を何回も読みこんでみてください。

 このサイトの過去の書き込みをたどっていくとわかりますが、この裁判は、受信料の手続き問題だけに限定すると1~2回で終わってしまうものです。裁判所の判断は、法律で決められていて、契約も成立しているのだから、受信料を払うべきだというものです。NHKもそういう判断に基づいて法的督促をかけて、不払い者に圧力をかけようとしたわけです。

ただ、今回の裁判は、この際、そもそも形骸化している「公共放送とは何か」「受信料とは何か」という憲法論争まで踏み込んで議論を起こそうという趣旨で、それゆえ2年間もかかってしまったわけです。本当はこの間、大手マスコミがもう少しこの裁判に注目してくれれば、そういう議論も起こせたと思うのですが、残念ながらマスコミでそこまできちんと取材して報道したところはほとんどありませんでした。

でも、裁判をずっと傍聴していると、今まであまり考えもしなかった「公共放送って何だ」というテーマが実は奥深いものであることがわかりました。NHK元職員も傍聴に来ていましたが、「本当はこういう議論をNHKが自分たちでやらないといけないんだ」と言っていました。NHK職員自身でさえ、自分たちが依拠している受信料制度や公共放送の本来の趣旨を忘れてしまっているのが現実なのです。

 被告が控訴したことで裁判はもう少し続きます。この裁判が、本質的な議論がなされるきっかけになってくれることを希望します。

既に結果をアップしてくれた人もいるようですが、2年以上にわたった受信料支払拒否裁判の判決が、本日7月28日午後1時10分から東京地裁709号法廷で言い渡されました。

裁判長は主文の朗読だけで、以下省略として退廷。何と2分くらいで法廷が終わってしまいました。きょうはさすがに傍聴席はほぼ満席で、ちょっと遅れて来た人は、もう終わったよと言われて驚いていました。

判決は、NHKの言うように不払いのお金を払え、と命じたものでした。被告の2人とも、一度は支払に応じているので契約は成立したことになっていると認定されました。裁判で主張した、そもそも受信料制度そのものが問題で、強制的な徴収は憲法違反ではないかとの主張は、憲法違反にはあたらない、と退けられました。

敗訴したとしても、受信料制度や公共放送のあり方について、判決で1行でも踏み込んでくれれば、と被告側は期待していたのですが、それは全く無視されました。終了後の会見で弁護団長の梓澤さんは、こうコメントしました。

「2年以上にもわたって議論してきたのに一言も本質に触れないというのは、WHY? 裁判長、なぜですか?と言いたい。狐につままれたような気持ちです」

被告側は控訴の意向で、裁判は高裁にかかることになりました。

ところで、きょうはNHKの弁護団が何やら慌ただしい様子。実は番組をめぐって右派のグループから集団提訴を受け、今後はそちらも受信料拒否運動を行う方針。NHKも大変なようです。

 

 長年続いてきたこの受信料拒否裁判ですが、いよいよ判決です。最近は、支払拒否でなく契約拒否をしていたホテルを提訴するなど、NHK側はさらに法的督促を強化しています。公共放送というあり方そのものを問うたこの裁判、果たして裁判所はどんな判決をくだすのでしょうか。内容によってはどちらかが控訴し、裁判がまだ続く可能性はありますが、これがひとつの大きな区切りになることは間違いありません。ぜひ多くの人たちが判決を傍聴されることをお願いします。
 終了後、いつものように弁護団や関係者による話し合いを控室で行います。ぜひ多くの市民の方が参加し意見を述べて下さい。
 最近は、NHKを反日偏向だとする右の立場からの受信料拒否運動なるものが起きています。また安倍晋三ら政治家によるNHK非難も強まっています。こうした状況も踏まえて、この裁判をめぐる運動を今後どうするか相談したいと思います。