トップ> 篠田博之の「週刊誌を読む」 >京アニ放火容疑者を治療した医師の重たい言葉とプロ意識(6月7日)

篠田博之の「週刊誌を読む」

京アニ放火容疑者を治療した医師の重たい言葉とプロ意識(6月7日)

 昨年起きた京都アニメーション放火事件の悲惨さにはいまだに胸を痛める人も多いだろう。五月二十七日、火傷の治療を受けていた青葉真司容疑者が逮捕された。
 『週刊新潮』6月11日号「それでも『京アニ放火殺人犯』を生き長らえさせる意味」は、治療に数千万円の費用がかかっているとしたうえでこう書いている。
 「犯罪史上稀な凶悪犯にもかかわらず、膨大な公費をつぎ込み、一般人には手の届かないような最先端の高額医療で救命せざるを得ないジレンマ」
 勾留先となる大阪拘置所の受け入れ態勢についても捜査関係者がこうコメントしている。「今回、青葉の収容に備えて、エアコン設置をはじめ、ストレッチャーや介護ベッドを入れられるように居室や面会室を改修しました。また、医師や看護師も増員し、24時間態勢で対応できるようにしています」
 多額の治療費に血税が費やされるという話は『フライデー』6月19日号も書いている。確かに庶民感情からすれば釈然としない思いはあるかもしれない。
 その意味でも考えさせられたのは『週刊文春』6月11日号「京アニ放火犯主治医の告白」。青葉容疑者が最初に治療を受けた近畿大学病院の医師の話だ。
 「近大には『被害者をそっちのけにして加害者につくなんて、医療の倫理に反している』という内容の怪文書が届けられたのです。警察には警護をお願いしました」。そして続けてこう語る。
 「私としては『(青葉を)生かして事件を解明してほしい』という気持ちより、とにかく目の前の患者に対して全力で治療を尽くしたいという思いだった」
 医師としてのプロ意識を表明した言葉が何とも重たい。
 話題転換。『サンデー毎日』6月14日号のジャーナリスト青木理さんによる松尾邦弘元検事総長インタビュー「黒川前検事長は政治に使われすぎた」が興味深かった。
 また同誌のその号から始まったノンフィクション作家・森功さんによる「鬼才・斎藤十一」という連載評伝も面白い。斎藤十一氏(故人)は新潮ジャーナリズムの基本を作った伝説の出版人だが、この連載は楽しみだ。

トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: 京アニ放火容疑者を治療した医師の重たい言葉とプロ意識(6月7日)

このブログ記事に対するトラックバックURL: https://www.tsukuru.co.jp/mt/mt-tb.cgi/3173