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篠田博之の「週刊誌を読む」

日野皓正「ビンタ」騒動と週刊誌の変貌

 八月三十一日発売の『週刊文春』9月7日号「世界的トランペッター日野皓正が中学生を『往復ビンタ』動画」は、週刊誌が変わりつつあることを示した事例といえる。

去る八月二十日、世田谷区教育委員会主催のコンサートで、日野皓正さんが、ドラムを演奏していた中学生にビンタを食らわせたという記事だが、タイトルが「『往復ビンタ』動画」であることに注目してほしい。発売に合わせて同誌は「週刊文春デジタル」でスクープ動画を公開。記事はそれを前提にして説明をしたものだ。

ライバルの『週刊新潮』も三十日に「本誌が入手した『日野皓正』暴行動画」なるものをウェブサイト「デイリー新潮」で公開した。翌日発売の号の誌面では該当記事が掲載されていないから、もしかすると『週刊文春』の取り組みを知って急きょ、入手した動画を公開したのかもしれない。

ライバル誌同士が動画をめぐる戦いを繰り広げたというわけだ。

ちなみに八月二十日のコンサートとは「日野皓正presents "Jazz for Kids"」と題し、区内の中学生を集めて日野さんが四カ月間ジャズを指導、その成果を発表したものだ。叩かれた中学生は、日野さんが目をかけていた男子で、指示を無視して長々とソロを続けたため、日野さんが怒ったらしい。ネットでは「公衆の面前で体罰を加えるのは誤りだ」という意見と「ジャズを理解する人から見れば少年の方が悪い」として、日野さんの熱血指導を支持する意見が相半ばしている。また少年自身は『週刊文春』に「自分が悪いと納得しています」と自ら電話をかけてきたという。

 思わぬ騒動になったことを受けて日野さんは九月一日、マスコミの取材に応じ、「あなたたちがこういう騒動にしてしまうことが日本の文化をダメにしてるんだ」と語っていた。日野さんの指導をどう見るかは議論すべきテーマだが、印象的だったのは週刊誌の取り組みだ。考えて見れば『週刊新潮』がスクープした豊田真由子代議士の秘書暴言騒動も、音声公開が前提となった報道だった。週刊誌が活字だけで勝負する時代が終わりつつあることを、それらの取り組みは示しているのかもしれない。

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