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NHK受信料督促裁判を考える

NHK受信料拒否裁判判決、予想外の大きな反響でした

裁判開始から2年余、弁護士を探し始めた段階からすると3年にわたったNHK受信料拒否裁判ですが、7月28日の東京地裁判決については、朝日新聞、毎日新聞などが大きく報道したために、このサイトにもメールがたくさん届くなど予想外の反響がありました。

特に毎日新聞は見出し4段、記事8段という大きな扱いで、解説記事までつけるという異例の報道でした。今までほとんど大手マスコミが取り上げないことに半ばあきらめも抱いていた側からするとうれしい限りです。支払督促裁判で最後まで和解を拒否し、判決が出たのは今回が初めてなので、ニュース価値があると判断されたのでしょう。

でも、この裁判をずっとフォローしてくれた大手マスコミはほぼ皆無ですから、これまでの法廷で何が議論されてきたかまで解説できるのは、このサイト以外にないと思います。そこで、判決を詳しく検証する試みをやろうと思いました。それと、今回の判決を受けて、被告の方のコメントも公開したいと思います。これまで被告の肉声が公になる機会はなかったのですが、せっかくなのでコメントしてもらうことにします。

今回たくさんの方からいただいた感想もなるべくコメントとして公開することにしました。なかには「裁判なんて、なに無駄なことやっているんだ」という意見もありましたが、こういう素朴な意見も公開し、議論していきたいと思います。

判決当日にコメントしたように、過去2年間にわたって弁護団が展開した「公共放送とは何か」「受信料制度とは何か」という議論は、判決でほとんど触れられていないのですが、ただ詳しく読むと、裁判所として微妙な領域にまで少し足を踏み入れた記述もあります。

例えば、被告は、NHKの不祥事や放送姿勢に対する抗議として受信料支払拒否をしたとして、それを正当な権利と主張したのですが、公共放送の理念として、放送法に照らしてそれを正当と判断するのか否か、という問題です。つまり、公共放送とは、国家権力やスポンサーから独立して、市民が受信料によって放送を支えるというシステムですから、抗議の意思表示として、不払いという権利も担保されていると思うのですが、果たしてその主張に対して裁判所がどう判断したのか、ということ。これは極めて大事な論点です。

で、判決でそこがどう書かれているかというと、こうなっています。

《放送法の趣旨にかんがみれば、原告は、広告主や国家やもちろん視聴者(放送受信契約の相手方)からも一切の影響を受けず、自らの表現の自由を全うすることによって、「豊かで良い放送を行う義務」を実践することが求められているというべきであって、原告が負担する「豊かで良い放送を行う義務」は、放送受信契約の相手方(被告ら)個々人に対する義務ではないというべきであるから、同義務は、被告らが負担する放送受信料支払義務とは牽連関係にないと解するのが相当である。》

 いやあ、わかりにくい文章でしょう。結論的に言うと、被告の主張を退けているんですが、ここで裁判所がどういう解釈をしているのか、近々判決そのものの主要部分をそのままアップしますので、興味ある方は前後の文脈を何回も読みこんでみてください。

 このサイトの過去の書き込みをたどっていくとわかりますが、この裁判は、受信料の手続き問題だけに限定すると1~2回で終わってしまうものです。裁判所の判断は、法律で決められていて、契約も成立しているのだから、受信料を払うべきだというものです。NHKもそういう判断に基づいて法的督促をかけて、不払い者に圧力をかけようとしたわけです。

ただ、今回の裁判は、この際、そもそも形骸化している「公共放送とは何か」「受信料とは何か」という憲法論争まで踏み込んで議論を起こそうという趣旨で、それゆえ2年間もかかってしまったわけです。本当はこの間、大手マスコミがもう少しこの裁判に注目してくれれば、そういう議論も起こせたと思うのですが、残念ながらマスコミでそこまできちんと取材して報道したところはほとんどありませんでした。

でも、裁判をずっと傍聴していると、今まであまり考えもしなかった「公共放送って何だ」というテーマが実は奥深いものであることがわかりました。NHK元職員も傍聴に来ていましたが、「本当はこういう議論をNHKが自分たちでやらないといけないんだ」と言っていました。NHK職員自身でさえ、自分たちが依拠している受信料制度や公共放送の本来の趣旨を忘れてしまっているのが現実なのです。

 被告が控訴したことで裁判はもう少し続きます。この裁判が、本質的な議論がなされるきっかけになってくれることを希望します。

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