編集長の目
篠田編集長が「マス読メールマガジン」に連載しているコラム。就職活動について色々なことを読者と一緒に考えていきます。感想も受け付けております。
『創』連載執筆者のひとりである作家の森達也さんが『A3』という本で講談社ノンフィクション賞を受賞したのだが、テーマがオウム真理教だけに、講談社が賞を与えることに抗議する声明が出されたりと、異例の騒動になっている。森さんについては『創』次号で、これまでの作品を含めて特集記事を載せる予定で、本日これから、大手出版社の森さん担当編集者が集まって座談会。今回の騒動についての経緯は既にブログに書いたので、そちらをご覧いただきたい。なかなか微妙な問題を提起した騒動だ。
http://www.the-journal.jp/contents/shinoda/2011/09/post_80.html#more
昨夜は月刊『創』の校了で編集部は徹夜。疲れました。地震の影響で執筆者も大変で、作家の柳美里さんや精神科医の香山リカさんら連載陣は明け方近くまでがんばって原稿を書いてくれました。佐藤優さんも原稿が届いた時間が一昨日朝の5時でした。
そんな疲れ切ったところへ講談社の野間佐和子社長死去の知らせがファックスで。この2月に息子に社長の座を譲ることを決めた矢先でした。
講談社社長が女性であることを知らなかった人もいるでしょう。実はこれにはわけがあって、彼女は元々出版人ではなかったのですが、前社長の夫が若くして死去したため、その後を継いだのです。つまり講談社社長は野間家という一族の世襲なのです。同様に新潮社は佐藤家、小学館は相賀家の世襲。大手出版社の社長がこんなふうに一族の世襲によって受け継がれていることを意外と思う人もいるでしょうね。メディア界って意外と古い体質を抱え持っているものなのです。
講談社はトップの交代によって、役員も若返りました。若社長はデジタル化と映像化に積極的なようで、講談社の方向性も少し変わることになるかもしれません。ちなみに昨夜校了した『創』次号の特集は「マンガ市場の変貌」。マンガ志望の人は必読です。(篠田博之)
昨日24日、東京地裁にてアキバ事件の判決公判が開かれ、加藤智大被告に死刑判決が出された。本来なら大きなニュースになる事柄だが、何せ報道は今、地震と原発に集中しており、新聞でも一面で扱わないものもあった。この裁判はもう30回くらい続いており、その大半を傍聴したが、昨日の公判にはマス読実践講座の受講者の姿も見られた。加藤被告の場合、死刑は予測通りだが、法廷で直接裁判官から死刑が宣告されるという場面は、やはり重苦しい空気に包まれる。加藤被告は普段からほとんど表情を変えないのだが、この日も宣告を受けた後、退廷時に遺族や被害者に一礼をして去っていった。死刑事案は弁護人が必ず控訴するのだが、加藤被告の場合はもう死を覚悟していると言っているから控訴を取り下げる可能性が高い。もしかすると、今回が、彼が世間に姿を見せる最後の機会だったのかもしれない。これまでの公判で証言台に立った遺族たちは、口ぐちに「極刑を」と主張し、加藤被告につめよる人もいた。死刑というものについて毎回考えさせられた裁判だった。死刑事件の裁判は何度も傍聴してきたが、今回も多くのことを考えさせられた。10年以上つきあった宮崎勤を始め、死刑囚との関わりについては、ちくま新書から『ドキュメント死刑囚』という本を出している。死刑に関心
のある人は読んでほしい。(篠田博之)
10月15日から新聞週間が始まりました。新聞各紙は新聞についての特集を組んでいきますが、これが新聞に限らず報道志望にとってはなかなか参考になる内容。ぜひ読んでみて下さい。
朝日新聞は、今朝15日の朝刊で大阪地検の証拠改ざん事件についてのスクープについて詳しく検証しており、このスクープをものにした司法担当の板橋記者が詳しい経緯を書いています。一部ではあのスクープ自体、検察のリークではないかと言われているので、それを否定するためにも詳細な経緯を伝えようと考えたのでしょう。
さて、この板橋記者、大学を出て栃木県の県紙である下野(しもつけ)新聞に入社。そこで宇都宮冤罪事件をスクープして朝日新聞に転職したものです。宇都宮事件は月刊『創』も詳しくフォローしたもので、この板橋記者も実は『創』に署名記事を寄稿していました。
彼がどうやって今回のスクープを放ったかは朝日紙面をご覧いただきたいのですが、実は、何も特別のノウハウやルートがあったわけでなく、コツコツと事実を掘り下げていって特ダネをつかんだのです。
現状では多くのマスコミが、各社横並びの取材ばかりやっていて、実は地道な事実の発掘が意外とおろそかになっています。そんなことを改めて感じさせたのが今回の改ざん事件のスクープでした。これからジャーナリズムをめざす人は、ぜひ板橋記者の話を参考にして下さい。
話は変わりますが、11月に「新聞記者と語る会」というイベントを行います。100~200名のマスコミ志望者が新聞社に出かけて行って、社内で記者たちと議論しあうというものですが、昨年同様、今年も毎日新聞社に行こうと思っています(参加費は無料)。「マス読」ならではの熱いイベントで、日程など近々決めてこのメルマガで参加者を募りますので、ぜひ奮って参加して下さい。 (篠田博之)
この1週間ほど、都条例改定問題に忙殺された。15日のマンガ家らの記者
会見をきっかけにマスコミが一斉に報道を行い、出版業界団体などが連日反
対声明をあげていった。私は日本ペンクラブの言論表現委員会副委員長も務
めており、この件については声明の起草にも関わることになった。1~2日
かけて文案を練り上げて18日に発表。この問題でペンクラブが声明を出すこ
との意味は大きく、きょうの新聞でも紹介されている。
先週までは知らない人が多かったこの問題だが、わずか1週間でここまで
議論が大きくなったのは異例といえる。
流れを変えたのは15日のマンガ家らの会見と、その後開かれた集会に、
100人の会場に400人近くが押し掛けるという事態だった。危機感を持った人
たちの熱気が事態を動かすという、まさにこれが民主主義だ。
都議会には16日、2000件のメールや電話があったという。表現の法的規制
というデリケートで大事な問題が、広い議論に供せられることもなく議会で
決まろうとしていることに多くの人が一斉に声を挙げたせいで、改定案の成
立が土壇場で止まるという異例のケースだった。
一昨年の映画「靖国」上映中止事件の時もそうだが、様々な表現者が声を
あげ、議論が拡大すると事態を動かすことができるという意味では、相当ア
ブナイ状況になっている日本の民主主義もまだ死滅したわけではないことを
実感させる。
今回の騒動は、これから表現やメディアの仕事に関わりたいと思っている
人たちには重要な問題だ。この1週間の経緯については『創』ブログに連日
書き込みを行い、近々専用サイトを立ち上げる予定だ。ぜひご覧いただきたい。
「創」HP
http://www.tsukuru.co.jp/
月刊「創」ブログ
http://www.tsukuru.co.jp/tsukuru_blog/
3月11日、秋葉原無差別殺傷事件・加藤被告の公判を傍聴した。初公判は
傍聴希望者が殺到したらしいが、だいぶ落ち着いて、この日は倍率が1倍強。
大半の傍聴希望者が入れた。事件当時に報道された加藤被告の顔は血まみれ
で、みなあの顔しかイメージにないと思うが、実際はスーツを着て、若きビ
ジネスマンといういでたちで出廷。入退廷時に、被害者の席もある傍聴席に
向かってお辞儀をし、係官の指示にも一礼して従うといいう様子だ。ただ起
こした事件は取り返しがつかないもので、その日証言台に立った被害者友人
も、極刑を希望、「死にたいと言って事件を犯した犯人がいまだにのうのう
と生きているのは許せない」と述べた。
公判は今後、3月15日、4月27日、5月21日...と続いていく。もう傍聴を
希望すれば殆どが入れる状況なので、興味ある人は裁判所に足を運んではど
うだろう。開始時間などは東京地裁刑事部に問い合わせれば教えてくれる。
マスコミ志望の学生諸君なら皆が当時は関心をもった事件だと思う。
今は入社試験直前で忙しいという人もいるだろうが、実はこれが大きな間
違いだ。マスコミ人に必要なのは、好奇心や行動力などと言われるが、もし
あなたが採用側だとして、家で受験参考書を読んでいる志望者と、事件現場
や法廷に足を運ぶ人と、どちらがその「求められる人物像」に近いかと尋ね
られたら、後者と言うのではないだろうか。
マスコミ受験対策を、参考書などの暗記やマニュアルの覚え込みと考えて
いる人は、まずその認識が間違っていることを知ってほしい。もちろん筆記
試験はパスしないといけないから、ある程度の受験勉強が必要な人もいると
思うが、面接などを含めた選考全体で見られるのは、実はもっと違う適性な
のだ。私の経験から言っても、特に報道志望の場合は、受験シーズンで忙し
い時期でも、社会問題に関わるような場へ足を運んでいたような人がやはり
合格している。採用側だって、そのへんはよく見ているのだ。
『マス読』を時々、マニュアル本などと間違えて呼ぶ人がいるが、悪しき
マニュアル主義を批判しているのが、『マス読』の基本姿勢なのだ。
一橋大学のフォーラムの打ち上げで、コラム「編集長の目」を見た学生か
ら、過去のものを見たら大変参考になったという話と、その文中にスキャン
して貼り付けてある『創』の記事が見にくいのだが、オリジナルの記事を見
せてもらえないかという要望を受けました。それでwebマス読のページにア
ップしてある過去の「編集長の目」を見たら、途中抜けがあったりしている
のがわかりました。見にくい貼付記事も見やすくするなど早急に整備します
ので、近々もう一度アクセスして下さい。小学館の自殺した編集者の話や、
大麻使用で逮捕された講談社社員の話など紹介されています。
ご覧になりたい方はぜひこちらへアクセスして下さい。
http://www.tsukuru.co.jp/me_blog/
さて、ここからが本題ですが、今回、ちょっと書いておきたいと思ったの
は、1月13日のマス読ライブ映画映像篇で東映内定者の体験報告をしたとこ
ろ、会場アンケートで「どうしてコネの人の特殊な体験報告なんかするのだ」
と書いていた人が複数いたことです。これ、大変な誤解で、彼は確かに就活
中に東宝でバイトをしていたのですが、これが採用にあたってコネになった
わけではありません。というか、いまどき大手マスコミで、バイト経験がコ
ネになったり採用に有利になったりすることはないのです。彼がやっていた
バイトもホームページで公募されていたものですし、今新聞社でも出版社で
もバイトの募集は頻繁に行われ、たくさんの志望者がマスコミでバイトをし
ています。
このあたりは『マス読』入門編でも説明してあるのでぜひきちんと読んで
ほしいのですが、バイトやインターンシップはその会社や職場について知る
ための一番よい方法なので、ぜひ積極的に参加してほしいのですが、それが
ゆえに採用で便宜を図ってもらえるとか内定が得られるといったことは基本
的にありません。内定報告をしてもらった学生も、きちんと実力で東映に合
格したもので、コネ入社という言い方はおおいなる誤解です。
たぶん誤解をした人は、マスコミでバイトをすること自体が特殊なことと
思ったのかもしれませんが、実際は非常に多くの学生がバイトをしています。
ホームページや採用ページなどで公募するケースも多いので、志望会社につ
いて調べてみてはどうでしょうか。
今回は業界内の薬物汚染について書こう。前回に続いて『創』に掲載した
手記を紹介する。2004年1・2月号の元講談社『少年マガジン』副編集長の
告白だ。2002年大麻所持で逮捕されたのだが、この事件は出版界に激震を与
えた。というのも、当時の『少年マガジン』の副編から2人が芋づる式に逮
捕されたからだ。一人の逮捕を受けて講談社の局長が慌てて警察を訪ねると、
「実は今朝もう一人逮捕された」とその場で告げられたというのだ。
『創』はこの事件を02年8月号で詳しく報じたのだが、ここで紹介したのは、
その逮捕された当事者のインタビューだ。「講談社は真面目な人ばかりです
よ」と語っているが、逮捕された人がそう言っても説得力はないかも。でも
この久保さんとはその後も何度か会ったけれど、なかなか面白い人だ。大麻
を今でも悪くないと言っているところなど、無頼っぽくていい。大手マスコ
ミに対する幻想を打ち砕いてくれる。今ではマスコミ業界で薬物事件など珍
しくなくなったが、逮捕例が多くなったのは1990年代後半からだろうか。あ
まりそういう人がいそうにない文芸春秋でも薬物逮捕者が出たりしたから、
もうどのマスコミで逮捕が出ても不思議ではない。
「創」の記事は以下のURLを参照(PDFファイル)
http://www.tsukuru.co.jp/kodansha.pdf
衝撃的だったのは、オウム事件の取材で活躍した共同通信社の社会部のエ
ース記者が薬物で逮捕されたことだ。しかもかなり重症で、独り暮らしの部
屋の中は無茶苦茶だったという。最前線で取材に奔走しながら、この人はど
うして薬物に走らざるをえなくなったのか。正義のためにやっていると最初
は考えていた自分の仕事に虚しさを感じるようになったのか。こういう事例
は深刻な問題を提起しているのだが、それについては次回書こう。
※このコラムについての感想や意見はmixiのコミュニティ「マスコミ就職フ
ォーラム」で募集しています。
http://mixi.jp/view_community.pl?id=4490805
前回、新潮社と小学館に入社後、自殺した新人の実例を紹介したが、今回は入社して半年以内に退社した2人の手記を紹介しよう。
最初は『創』88年9月号に掲載した女性記者の手記だ。早大在籍中から中国に留学して現地報告を朝日新聞社の媒体に発表し、優秀だと評価され、期待されて採用されたのだが、半年で退社。そして手記を『創』に発表したのだが、これが大反響を呼んだ。単なる愚痴でなく、筋の通った告発だったからだ。これを機に朝日新聞社は新人教育システムを見直し、翌年の選考の面接でもこの手記が話題になったほどだ。
もうひとつは読売新聞社を3カ月で退社した男性の手記で、『創』90年9月号に掲載された。こちらも大きな反響を呼び、手記に出てくるデスクは左遷させられるという事態を引き起こした。
この時代は、こんなふうに大手マスコミに合格しながら何カ月かで辞める事例が増え、問題になり始めた時期だった。それ以前は日本は終身雇用制が確立していたため、一度入った会社を辞めると不利になると、疑問を感じていた人も我慢したものだった。だから、大手新聞社やNHKなど、皆の憧れの的だったはずの職場から退職者が相次いだことは、それらの会社に衝撃を与えたのだった。
「創」の記事は以下のURLを参照(PDFファイル)
http://www.tsukuru.co.jp/asahi.pdf
http://www.tsukuru.co.jp/yomiuri.pdf
ここに紹介した2人の手記は、もうだいぶ昔の事例で、当時の状況と現在とで変わった面もあるが、大部分は今でも参考になる内容だ。これからマスコミをめざす人たちにぜひ読んで一緒に考えていきたいと思う。
(以下次号)
※このコラムはmixiのコミュニティ「マスコミ就職フォーラム」でも公開し、
意見や感想を募集しています。ぜひ意見を書き込んで下さい。
http://mixi.jp/view_community.pl?id=4490805


