編集長の目

篠田編集長が「マス読メールマガジン」に連載しているコラム。就職活動について色々なことを読者と一緒に考えていきます。感想も受け付けております。

 先日、NHKが朝の番組で「ウェブテスト不正受検」の実態について放送していました。衝撃の内容でしたが、見てない人は下記をご覧ください。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211019/k10013311631000.html

 コロナ禍でオンライン受験が急増し、以前は「テストセンター」で受検していたウェブテストを自宅で受験できるように切り替えた企業が多いのですが、それを悪用して不正受検が横行しているという内容でした。本当に番組で言っていたほど横行しているとすれば大きな問題です。
 コロナ禍でウェブ適性検査も進化し、番組で紹介されていたのはSPIでしたが、最近はいろいろなものが使われるようになっています。例えば「玉手箱」という適性検査。そしてこの1~2年、新潮社や小学館が導入したのは「デザイン思考テスト」。かなり新しい適性検査ですので、事前に調べておいた方がよいでしょう(小学館と新潮社のデザイン思考テストについては「マスコミ就職読本」2巻のP111、115参照)。

 ウェブテストは自宅で受検できるので、不正が起きやすく、採用側もいろいろ対策を講じてはいます。例えばどんなふうに行われるのか。2022年度採用で朝日新聞出版を受検したB君に紹介してもらいましょう。

《試験は監督官とビデオ通話をつないだ状態で受験。受験中は手元まで映るようにカメラの位置を調整する。所定の作文用紙を印刷し、鉛筆またはシャープペンシルを用意して、作文試験に臨む。作文試験終了後、記入した原稿用紙3枚を1枚ずつ写真撮影して、その場で招待メール記載の提出用メールアドレスへメール添付で提出。同時に複数人(3人ほど)の画面を、1人の試験官が見守っているように見受けられた。》
 

 NHK「あさイチ」のキャスターから突然退職して姿を消した近江友里恵アナウンサーについては、退職理由がいろいろ噂されてきた。前任の有働アナウンサーがフリーアナに転職したこともあって(今は日テレ系の「ニュースZERO」キャスター)、フリーになるのではという見方が多かったのだが、このたび本人が毎日新聞のインタビューに登場。実は三井物産への転職だったことを明らかにした。

 https://mainichi.jp/articles/20210331/k00/00m/040/306000c

NHKを辞めたワケ 近江友里恵さん、心に刻まれた隈研吾さんの言葉/毎日新聞 (mainichi.jp)

  これを読んで「え?」と思った人も多かったろうと思う。NHKアナウンサーと言えば、マスコミの中でも花形として知られる存在で、昔は内定が出た時点で地元の街じゅうの話題になった。それを一番油がのった時期に辞めて一般企業へ、しかも街づくりをやりたいのでという理由だ。職業というものの捉え方が、一昔前と変わりつつあることの象徴のような気がする。同時にこれは、「超人気のマスコミ」というイメージの変化でもあるかもしれない。

 かつて就職人気ランキングの上位を独占していたマスコミが相対的に地位を落としている傾向はこの10年ほど顕著になりつつある。それは端的に応募者数の減少となって現れているのだが、ただコアとなる志望者数は変わっておらず、昔はたくさんいた「憧れ受験」の数が減っただけとも言える。このメルマガの読者である、マスコミをめざす人たちは、この近江アナの転職について、どう感じるだろうか

  1月13日、就活マッチングアプリを使って女子学生を呼び出し、 睡眠剤を飲ませて暴行していたとして元リクルートコミュニケー ションズの社員が逮捕されました。
 性暴力のうえでその現場を自分のスマホに撮影していたというの ですが、警察の捜査でその動画が数十人分にものぼることがわかった とのこと。この種の事件は昔からたくさんあったのですが、今回の はかなり悪質で、就活中の女性には衝撃だと思います。
 どういう手口で犯行を行っていたかは、「就活アプリ、丸田」で ネット検索すると記事がたくさん出てくるので見てください。就活用のマッチングアプリは、急速に普及しているのですが、 コロナ禍で不安を抱えながら就活を行っている女子学生の心理に つけ込んだかなり悪質な犯罪です。就活からみのセクハラの話は、 過去にもたくさんあったので、十分気をつけてください。(篠田)

 月刊『創』2020年9月号の「性暴力被害者衝撃座談会」が話題になっている。このメルマガ読者に申し上げておきたいのは、その座談会のCさんという女性のことだ。彼女は学生時代からマスコミ志望で『創』の熱心な読者だった。マスコミに入る為に別の大学から早大に入り直したほどなのだが、その憧れだったマスコミに入って、取材相手から性暴力にあってしまう。実はマスコミの女性記者で取材対象からセクハラにあうという話は相当多い。ネタをとるために政治家や警察官に食い込もうとするために、それを逆手にとられてセクハラされるという事例だ。

 またその『創』の特集の中で、毎日新聞の現役女性記者も自分の性暴力被害について書いている。彼女は、新聞記事の中でそのことをカミングアウトしたのだが、今回『創』に寄稿した手記の見出しは「男性中心の文化が根強い新聞で性被害体験を書いた」だ。

 この1~2年、マスコミの世界でも#MeTooの風が吹き荒れ、様々な動きがあった。『マスコミ・セクハラ白書』という本も文藝春秋から刊行されている。夜討ち朝駆けで体力勝負というマスコミの世界は、最近まで相当な「男社会」だった。

 『マスコミ就職読本』はもう創刊して約40年になるが、以前は、マスコミの採用においても、女性の採用数は極端に少なく、女性のみ「指定校制」だったりした。そういう採用における女性差別の実態も、具体的な社名入りで『マス読』は明らかにしてきた。

 昔は大手新聞社の役員面接になると、面接官は男ばかりで、しかも面接室のフロアには女性トイレがないといったエピソードがよく語られたものだ。そういう状況はかなり改善されてきたのだが、今回の『創』を読んで、マスコミをめざす人はそういう問題についてもぜひ考えて欲しいと思う。          (マス読編集長・篠田博之)

 『創』9月号の特集内容は下記を参照いただきたい。

https://www.tsukuru.co.jp/gekkan/2020/08/2020-09.html

 連日報道されている財務省福田次官のセクハラ事件ですが、女性記者がセクハラにあうケースは、こうした官僚だけでなく、警察でも、あるいはスポーツ界でもこれまで指摘されてきました。深夜に取材対象のところへ一人で行くのは日常茶飯事だし、相手はネタを餌にして女性記者に迫るというのは、ありえるシチュエイションなのです。それが今回、こんなふうに社会問題になったのは、議論すべき良い機会かもしれません。これからマスコミをめざす人たちもこの機会に考えて下さい。告発を行った女性記者には拍手です。

 マスコミ就活というと、ESや試験対策ばかり考えてしまう人もいると思いますが、こういう問題や、森友加計問題を

考えることも大事な就活対策なのです。

 それから息抜きに映画でも見ようかという人は「ペンタゴン・ペーパーズ」をぜひ見て下さい。国家権力とメディアの対峙というテーマをメディアにおける編集と経営の問題を踏まえて描いたもので、非常によくできた映画です。報道志望の人は必見です。マスコミの就活というのは、単なる受験対策でなく、そういう問題を考えることの方が重要だということを知って下さい。

NHK女性記者の過労死が社会問題になりつつあるのはご存知と思いますが、昨夜校了した月刊『創』1月号(12月7日発売)には、その過労死した女性の両親が登場し、詳しい経緯を語っています。女性は一橋大卒でNHKに入ったのですが、過重な選挙取材の過程で急死。発見された時には、仕事用の携帯電話が握りしめられていたそうです。母親は娘の突然の死を受け入れられず、放心状態に陥り、後を追って死のうとまでしたそうです。そういう話が当の母親から切々と語られています。マスコミの仕事がハードなことは誰も知っているでしょうが、この記者の死は、報道界全体に大きな波紋を投げつつあります。発売は12月7日ですが、これからマスコミを目指す人にぜひ読んでほしい内容です。ちなみに、「マス読」はこれまで、1巻に合格体験記を書いた大手出版社編集者が入社3カ月後に自殺したとか、哀しい出来事を幾つも見てきました。こういう問題についても、機会があれば議論していきたいと思います。

 東京大学新聞が、この3月に卒業した東大生の就職状況を特集していますが、ちょっと目を引いたのが、電通入社が昨年に比べて10人と倍増し、民間企業のベスト10位に上がったという話です。というのも周知のように昨年来、東大卒の高橋まつりさんが電通の寮から投身自殺し、過労自殺として大きな社会問題になったからです。それが大きな問題になる前にこの10人は内定を得ていたわけですが、ひとつ上の先輩の事件ですから複雑な心境かもしれません。高橋さんの自殺については、今年の月刊『創』4月号の広告特集に詳しく書いています。彼女は学生時代に『週刊朝日』でバイトをしており、結局、就職では電通を選んだのですが、自殺前に「今からでも『週刊朝日』に行けますか」と転職したい意思を同誌関係者に相談していたのです。そこで電通を辞めていれば自殺しなくてすんだのですが、彼女の相談を受けていた『週刊朝日』のライター今西さんが『創』4月号に手記を書いています。まつりさんの自殺が社会問題になって電通も大きな社内改革を行ったのですが、今年入社した東大卒の10人は今どんな思いでいるのか。ちなみに『マス読』をもう30年以上発行していて、入社1年以内に自殺したという事件が実は何件かあります。そのうち小学館のケースは、自殺した早大卒の新人が『マス読』入門編に合格体験記を書いていた人で、遺品の中に体験記の載った『マス読』が大事に残されていたと母親から手紙が届きました。就活は人生の中で大きな体験をする機会でもあります。

 NHKに応募しようという人は多いと思います。同局の試験で重要なのが「2・5次面接」です。ディレクターなど特定の職種志望者だけを対象に2次面接と3次面接の間に実施されるので「2・5次面接」と呼ばれるわけです。内容は「クローズアップ現代」などを短く編集した映像を見て、集団討論を行うものです。映像を見た感想や、自分ならどこをどう工夫するかなどを話し合います。番組作りの適性を見るものですが、重視されている選考です。よくテレビ志望で、どういう準備をすればよいでしょうかと質問する人がいますが、こんなふうに実際の映像や番組を観て、考えたり、議論することをお勧めします。よく「メモを取りながらテレビを見ろ」と言われますが、普段は何気なく「ながら視聴」をしている人も、試験に備えるなら自覚的にテレビを見る必要があります。録画をしたり、NHKでいえばアーカイブの番組はぜひ見ておきましょう。志望者というのは、これまで視聴者だったものが作り手をめざすということで、その作り手としての適性を面接ではアピールするわけです。だから、自分ならこう作ると考えながらテレビを自覚的に見て下さい。

本題に入る前に、マスコミ志望の皆さんにぜひ一緒に考えてほしい話を紹介します。ひとつは出版不況で書店や出版社が次々と潰れて行っている現状についてです。出版志望の人は下記ブログをぜひ読んで下さい。
http://bylines.news.yahoo.co.jp/shinodahiroyuki/20160227-00054839/

もうひとつはテレビ界をめぐる大きな問題です。先日、著名なキャスターたちが会見を開いて訴えたこととは何なのか。下記ブログにまとめました。http://bylines.news.yahoo.co.jp/shinodahiroyuki/20160302-00054954/
「マス読」はただ単に就活のやり方を伝えるだけでなく、メディアをめぐるいろいろな問題を一緒に考えていこうという姿勢が特徴です。ぜひこういう問題に関心を持って下さい。月刊『創』で毎回特集しています。

さて本題。前回のこういう志望動機ではダメという話に「え?」と思った人も多いでしょう。人事部が敢えて注意するのは、ダメであるにもかかわらず、その志望動機を書いてくる人が多いからで、実はそのダメな志望動機とは、かなりの人にあてはまってしまうのです。例えばNHK志望で「民放のように視聴率を気にしなくてよいので」という志望動機を書く人は実はかなり多い。「NHKは視聴率を気にせず○○のようなことができるから」という志望動機ですね。この○○には、友人と取り組んできた性的マイノリティの問題とか、自分の祖母を見て関心を持った認知症の問題とか、それぞれ関心あるテーマが入るわけです。
断っておきますが、「民放のように視聴率を気にしなくてよいので」というのは間違いではないのです。実際、民放ではドキュメンタリー志望と言ったとたんに「君、そういう番組は我が社では放送枠がないよ」と言われたりしますが、
NHKにはNスぺを始め、そういう枠がたくさんあります。
では気を付けるべきポイントは何かというと、一見地味に見えて民放では難しいようなテーマを「視聴率は無視してよい」のでなく、そういうテーマをこそ多くの人に見てもらうにはどうしたらよいか考えることです。自分にそれができることをアピールするのが志望者に求められていることなのです。ダメと言われた志望動機とちょっとした違いに見えるのですが、この違いが大事なのです。
この話、次回もう少し続けましょう。
 

3月に入って就活戦線は一気にスタートし、現在は毎日、ESを書く作業に追われている人が多いと思う。そういう人のために、志望動機に関する話を書いていこう。特別な指摘ではなく、『マスコミ就職読本』第1巻で採用担
当者が言っている内容だ。採用担当者が言っているのだから、これほど確実なことはない。
ESで大事なのは志望動機と自己PRだとよく言われるが、志望動機で多くの人が語る内容にはある程度共通点がある。例えばアナウンサー志望の場合で多いのは「私の笑顔でみなさんに元気を与えたい」という志望動機だ。実はこの志望動機ではダメだと『マス読』入門篇P123でTBSアナウンス部の岡田さんが書いている。
また講談社の人事部副部長が「子供の頃から本が好きで、本に携わる仕事をしていきたいから志望しました」という志望動機に入門篇P102でダメ出ししている。
さらにNHKの人事の宮本さんが、「NHKは視聴率を気にしない」という人が多いがそんなことはない、とP90で書いている。実はNHKの志望動機でも「民放のように視聴率を気にしなくてよいので」というのを挙げる人が多い。
 一体、これらの志望動機はなぜダメなのか、何回かにわたって説明していこう。
それと昨夜のマス読ライブを見ていて感じたのだが、例えば新潮文庫がパンダのYONDAのキャラクターをやめてどうしようとしているのか、という質問が出た。講師の高橋さんが新潮文庫の編集者なので出た質問だが、この2年ほど、新潮社がどんなふうに考えて今のキャラクター「キュンタ君」に行き着いたか、これについては『創』出版特集に書いてある。また昨夜講師だった小学館の嶋野さんが『CanCam』黄金時代の編集長なので、その後どうして同誌は低迷したのか質問した女性がいた。これもなかなか良い質問だが、これについても『創』出版特集を2年分読むとヒントが書いてある。同じジャンルの『JJ』がやはり部数急落で誌面刷新を図っている経緯も参考になる。
こうした事柄についてはぜひ『創』を読んでいただきたい。書店でバックナンバーを取りよせるのがめんどうなら、Webマス読から会社別の5年分の記事が読める。試し読みもできるのでトライしてほしい。光文社の2015年記事の冒頭が『JJ』リニューアルの話だ。
http://www.tsukuru.co.jp/masudoku/tettei.html
まもなく選考が始まる。志望会社の研究はすぐに始めてほしい。