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2010年6月アーカイブ

いよいよ7月3日から映画「ザ・コーヴ」が全国公開されます。公開初日となるこの日、各映画館がどんな状況か、ネットなどでつないでお知らせします。また本編を上映し、それを踏まえて、この映画をめぐって何が問題になったのか議論します。

●7月3日(土) 18時開場 22時半終演定

●ロフトプラスワン
http://www.loft-prj.co.jp/PLUSONE/
※2年前の映画「靖国」上映中止事件の時も、関東の主要右翼団体を集めて上映会と討論会を実施した、記念の場所です。

●第1部 「ザ・コーヴ」公開をめぐる現状
鈴木邦男 (一水会顧問)
綿井健陽 (映像ジャーナリスト/『Little Birds -イラク戦火の家族たち-』他)
安岡卓治 (映画プロデューサー/『ゆきゆきて、神軍』『A』他)
司会:篠田博之 (月刊『創』編集長)
※19時半まで東京、横浜、大阪などの映画館で「ザ・コーヴ」が劇場公開されており、現地和歌山や映画館とロフトプラスワンをネットでつなぎ、観終わった観客へのインタビューなど反響を見て、議論します。

●映画上映 19時45分~ (90分)


●第2部 21時半~ 上映中止騒動と「表現の自由」
鈴木邦男 (一水会顧問)
針谷大輔 (統一戦線義勇軍議長)
安岡卓治 (映画プロデューサー)
他、出演者交渉中
司会:篠田博之 (月刊『創』編集長)
※右翼の人たちをまじえて、一連の上映中止騒動、抗議をめぐる状況など議論します。

前売¥1500 / 当日¥1800(映画鑑賞代含む。会場でのドリンク代は別)

※前売りはローソンチケットで発売中【Lコード:38759】

 

tuika.JPG  6月21日、午後5時半から7時半まで、弁護士会館で「ザ・コーヴ」めぐるシンポジウムが開かれました。主催は東京弁護士会、第一東京弁護士会、第二東京弁護士会。日弁連会長談話も発表されたし、これは弁護士会が全体でこの問題に取り組んだということを意味します。
 最初に配給会社から、7月3日からの上映を予定している劇場が発表されました。

 http://thecove-2010.com/
 2館の上映中止で全滅した東京で、新たにイメージフォーラムが名乗り出て、再び全国公開の体制ができたことがポイントです。続いて、地方から会場に駆けつけた大阪、京都、名古屋、仙台などの上映予定館の支配人が現状説明。こんなふうに映画館が直接マスコミに出て発言するというのは、映画「靖国」の時にはないことでした。

 ただ残念なのは、今攻防戦の焦点になっている横浜ニューテアトルの長谷川支配人が来れなかったこと。実はこの日、同館には新たな右翼団体の街宣車が街宣抗議を行っていました。これまでの「主権回復を目指す会」でなく、既存の街宣右翼です。今回の騒動で初めて既存の右翼団体が街宣に乗り出したわけで、これは新たな局面といえます。
 前半は映画館の話を中心に展開し、その後「ニコニコ動画」の生放送に出演するために退場した鈴木邦男さんに代わって、後半、田原総一朗、崔洋一という論客が登場。ただその前に、上映の情報に関して質問があれば、と会場に質問をふったところ、最初に勢いよく手をあげた最前列の男性。「映画評論家の前田です」と名乗って、演説をぶったのが、「ザ・コーヴ」とシーシェパードの関係。収入が同会に流れているとか、右派団体がこの間主張していることを、客観的事実であるかに話すので、「それは配給会社が違うと言ってるのだから事実を確認してからにしては?」と司会の篠田から注意。でも、後でこの映画評論家の人に話しかけたら、出した名刺が何と「チャンネル桜」。うーん、チャンネル桜だとわかったら、皆がそういう立場からの質問だとわかって聞けたのに、それって名乗ったことになってないのでは? 
 でも、この人を指したのは、前半の司会を務めた日隅弁護士なのですが、日隅さんは映画「靖国」の制作側の弁護人で、チャンネル桜は最も激しくこの映画を攻めたところだから、両者は敵味方。それをそうと知らずに真っ先に指名しちゃったというのが、考えてみれば可笑しい。ああ、あれはチャンネル桜だよ、と気づいていたのは崔さんだけなのでした。
 後半は、ほとんど田原さんと崔さんのかけあいでしたが、これが面白い! 集まったマスコミ関係者にだけ聞かせるのではもったいないやりとりだったので、22日夜から「ザ・ジャーナル」などのサイトで録画放映することにしました。でも、後で聞いたら、現場でニコニコ動画がネット中継していたとか。生中継は構わないけど、一言、言っておいてほしい。このシンポは、NHK、TBS、テレビ朝日など地上波から海外メディアまで様々なところが取材していたのですが、そのなかでネット系メディ アも来るのが今や当たり前の光景となりました。

 なお、このシンポの場で、映画演劇労働組合連合会がその日発表した声明を読み上げ、
http://www.ei-en.net/appeal/100621_cove.html


IMG_5733.jpg

横浜地元メディアが「『ザ・コーヴ』上映を支持する会・横浜」を発足させたことを発表しました。『創』が呼びかけた緊急アピールの賛同者も、今度「『ザ・コーヴ』上映を支持する会」と名乗ることにしました。上映予定の各地にこの会を立ち上げ、地元の市民や文化人が映画館を支えるという体制を作っていけたら、と思います。「支持する会・横浜」は、今後賛同者を募り、7月3日までに正式に発表したいとのことです。
http://portside-yokohama.jp/
 シンポの中で田原さんから「上映妨害をしている人たちも呼んでぜひ討論会をすべきだ。それをやるなら僕も出席する」という発言が何度もありました。7月3日の公開日の夜に、新宿ロフトプラスワンで上映とトークを予定しており、そこをそういう 場にするという案も浮上していますが、これはなかなか簡単なことでないので、検討のうえ改めて告知します(上映とトーク自体行うことは既に決定)
http://www.loft-prj.co.jp/PLUSONE/schedule/lpo.cgi?year=2010&month=7

 

 終了後、飲み屋で崔監督や石坂啓さんらと痛飲。崔監督は「僕はこういう集会はほとんど出ないことにしているんだけど、映画の上映中止だけは許せないから出てきた」と言ってました。

 

 

急速に社会問題化した映画「ザ・コーヴ」上映中止騒動ですが、経緯を教えてくれという問い合わせがたくさんきているため、専用ブログを立ち上げることにしました。
http://thecovejouei.blog133.fc2.com/

中止騒動は連日緊迫の度合いを強めており、明日19日には大阪の上映予定の映画館に街宣がかけられます。また京都では上映を支援する会が結成され、本日会見が行われました。
この間、15日には日本ペンクラブが上映中止を憂慮する声明
http://www.japanpen.or.jp/news/cat90/post_236.htmlを、16日には日弁連会長談話http://www.nichibenren.or.jp/ja/opinion/statement/100616_3.html
が出されました。
一方で、17日に予定されていた明治大学の上映会が中止になるなど、自粛の動きもまだ止まってはいないようです。

yokohama01.jpgのサムネール画像 6月12日午後1時過ぎ、映画館「横浜ニューテアトル」前で「主権回復を目指す会」など約30人の右派グループが横断幕や日の丸を掲げ、街宣を行いました。東京の2館が上映中止を決めて首都圏での上映予定はこの横浜だけになったため、ここが攻防戦の最前線になったのです。

 この映画館は2年前、映画「靖国」の上映中止事件の時も右翼の街宣を30回も受けて陥落、中止に至ったところ。支配人の長谷川さんはそれを後悔し、今回は絶対に上映をやめないと言明しています。「ザ・コーヴ」上映予定といっても何週間も先の話で、この日は全く関係ない映画が上映中。午前の回を見終わって出てきたお客さんたちは、出入り口の光景を見てびっくりしたようです。危険も予想されるため、入り口はシャッターが降ろされ、午後の回のお客が入るつどシャッターがあげられるというとんでもない状況で、これ明らかに営業妨害です。
写真1 一人で抗議団体に立ち向かう鈴木さん(中央後姿)。手前に立っているのは長谷川支配人

 

yokohama02.jpg

  右派団体が演説を始めてすぐに、鈴木邦男さんがそのグループに向かっていったのですが、取材に来ていたマスコミを含めてそこに大勢が殺到し、もみあい状態に。警官隊の指揮者が指示を出して、待機していた部隊もそこに突進し、一瞬騒然となりました。鈴木さんは「君たちのやっているのは、ただの弱い者いじめの営業妨害じゃないか」などと叫んだのですが、何せ相手は大音量のスピーカーを使っており、「鈴木邦男帰れー」などと大声で叫ぶために、議論にならず。鈴木さんは「堂々と出てきて、ここで1対1で論争しようじゃないか」とも呼びかけましたが、右派団体は聞く耳を貸さず大音量でシュプレヒコール。興奮して「鈴木邦男は朝鮮に帰れー」とか、わけのわからないことを叫ぶ人もいました。鈴木さんも右翼、相手も右翼で、この衝突、周囲の人には事情がわからなかったと思います。
写真2 鈴木さんが論争を呼びかける

 

yokohama03.jpg

 鈴木さんは警察の制止もあって、一時、車道の反対側に引き上げましたが、街宣行動の間に何度もその隊列に向かっていき、そのつど警官隊が割って入る緊迫した状況となりました。映画館の前の車道をはさんで片側が日の丸を掲げた右派団体、映画館側の歩道には、マスコミや映画関係者、市民などがやはり30人くらい群がり、まさに対峙状態。その映画館側の真ん中に毅然として立っていたのが長谷川支配人でした。こちら側にもマイクがあれば車道をはさんで議論ができたのですが、何せ大音量のマイクが右派団体側だけにあるという状態で、彼らは一方的に自分たちの主張を演説するばかり。
 写真3 一時現場は混乱に陥った

 

yokohama04.jpg

 ただ、市民の中には、無言で「恥ずべきは上映妨害」などと書いたボードを掲げている人がおり、これがなかなか効果をあげていました。後で聞くと、その男性の掲げたボードを隣の女性が一緒に支えてくれたとのこと。こういう市民の無言の抗議がもっと目に見える形で広がっていくことが、この騒動の根本的解決の道です。もともと抗議している右派団体だって街宣の動員が30人、電話で映画館に抗議しているのも恐らく10人くらいで、同じ人が1日に何回もかけているのです。わずか30人くらいの抗議で次々と上映が中止になっていくのは、めんどうなことを避けたいという空気がこの日本を支配しているからで、最初に中止を決めた映画館は、街宣を受けたからでなく、その街宣予告におびえて上映をやめてしまったわけです。もっとも、この中止を決めた映画館には、その後、「なぜ中止したのか」と抗議する電話がたくさんかかっているようですが。
写真4 市民がボードを掲げて上映妨害に抗議

 この12日の街宣の模様は、16日のTBS「ニュース23X」が報道していましたが、この間の経緯を大変わかりやすくまとめていました。上映中止をめぐる報道は、朝日新聞とNHKがリードしていましたが、このTBSの取り組みもなかなかのものでした。ちなみに朝日新聞は14日の社説でもこの問題を取り上げていましたが、これも非常にポイントをよくついた社説でした。右派団体側はこれに抗議するとして16日に朝日新聞本社前で街宣を敢行。この日は代々木で行われた映画の主役リック・オバリーの講演会にも街宣がかけられたし、右派団体側も今が正念場として活発に動いています。(文責・篠田博之)

 かなり疲れましたが、6月9日夜、〈映画「ザ・コーヴ」上映とシンポ〉、盛況のうちに無事終了しました。ちょうど上映中止騒動が報道された直後とあって、7日から問い合わせが殺到。あっという間に定員を超えてしまい、9日には参加希望の問い合わせにはほとんどお断りの返事をすることになりました。

IMG_5340.jpg 夕方6時、いよいよ開場。会場の座席は550ですが、前売券購入者400人と予約のあった報道関係者に入場してもらって、さて残った当日席の数はとみると、何と16席! その時点で会館前には当日券を求めて100人以上の長蛇の列でしたから一瞬めまいがする思いでした。いったいどうすんの?という感じでしたが、会館側にお願いし、客席には入れないがロビーでモニターを見てもらうだけならあと30人OK、と許可を得ました(でも混乱していて結果的に60人くらいがロビーに入ったようですが)。
 モニターといっても音声は聞き取りにくいし、気の毒でした。帰ってもらった人はもっと気の毒で、ぜひ次回上映会をやる時はその人たちを優先したいと思いましたが、準備不足でその人たちの連絡先を聞いておくこともできず。まことに申し訳ありませんでした。

 定員オーバーの来場者をどうするか、数十人も訪れたマスコミ取材にどう対応するかなど、それだけでも大変なのに、もうひとつ大変だったのは、当日、上映中止を叫ぶ人たちが抗議行動や集会妨害に出る可能性があったことでした。自販機を使用不可にしたり、会場スタッフを多数用意したり、警備態勢をとったのですが、これが結構大変でした。映画館の場合も、たぶんこういうことが大変で上映中止してしまうのでしょう。だって最悪の事態を想定していくと際限なく警備態勢をとらないといけないわけですから。今回の集会も、急きょ、サプライズゲストで「ザ・コーヴ」の主役・リック・オバリーさんに登場してもらったのですが、楽屋への出入りの時など緊張しました。

 で、上映中止を叫ぶ右派の人たちですが、結局、やってきたのは3人でした(最初からそうとわかっていれば警備態勢もやりやすかったのですが)。うち2人は前売り券を買っていて入りましたが、1人は当日券希望で結局入れず。入場したうちの1人が上映中止を訴えるビラをまきました。言論戦でくる限りは抗議の自由も認めるのが筋ですから、話しあいをしたうえでビラまきは許容し、その代わり暴力的なことはやめてほしいと要請。ビラはかなりさばけたようで、途中で刷り増しのコピーをしに行ったりしていたので、おいおいと思いましたが(笑)。

 映画を上映した後、休憩をはさんで8時50分から第2部。パネラーである森達也、綿井健陽、坂野正人、鈴木邦男、野中章弘各氏が並びました。冒頭に配給会社のアン・プラグドの加藤社長から経過説明を受けた後、突如、ゲストとしてオバリーさんを呼ぶと会場はおーっという歓声。今見たばかりの映画の主役が突然舞台に登場するということだからかなりサプライズだったはずです。で、オバリーさんは、上映中止は残念だという説明の後、持っていたフリップのようなものを掲げました。それには憲法21条の「表現の自由」の条文が書かれていたんです。で、彼は、日本は憲法で表現の自由が保証されているはずだ、と発言。私自身は隣で聞いていて、外国の人に憲法を説諭されるというこの光景が、日本の表現をめぐる情けない状況を象徴しているようで、ちょっとショックでしたね。

rick.jpg さて次に森さんから順に発言してもらいました。綿井さんは前日まで和歌山県太地町に行っていたので、現地の様子を報告してくれました。坂野さんは、日本版の上映に大量にモザイクがかかっていることについての疑問を提示。鈴木さんは、こんなふうに映画を上映中止に追い込むことこそ「反日」じゃないか、と主張しました。それぞれの発言内容については、文字で書くよりも、実際に動画を見てもらった方がよいので、ぜひそちらをご覧ください。
前半http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/541
後半http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/541

 終了は9時35分頃。シンポの時間が短かったのが残念で、その割には司会がしゃべりすぎたという声が多かったので反省。撤収に入ってからも、舞台ではパネラーに個別のインタビューが行われ、去っていくお客にもテレビや新聞のインタビューが行われるなど、会場は異様な熱気。全員が退出したのは10時頃でした。
 その後、打ち上げ会場へ行くと、大勢の人が来てくれていて、まだ熱気が続いていたのですが、驚いたのは、会場に入っていた右派2人が来ていたこと。おいおいと思いましたが、まあ来てしまったから仕方なく、上映中止要求の右翼の人たちと一緒に打ち上げで酒を飲むという、まさに「ありえなーい」光景でした(笑)。
 配給会社の加藤社長がたまたま打ち上げに出席できなかったので良かったですが、来ていたらどうなったか。だってあれだけ激しく対立している両者がいくら酒の席といっても和気あいあいというわけにはいかなかったでしょう。

 鈴木邦男さんもまじえて右翼の人たちと議論というのは、これはこれで楽しかったのですが、ただ本当はそこで集会の総括や今後の予定を話しあおうと思っていたのに、それができず。トホホ。鈴木さんは、ぜひ今度、右翼との議論をやって『創』に載せよう!と盛り上がってました。
 翌日、朝日新聞や東京新聞がこのシンポを報道、ネット系でも取り上げられていました。http://portside-yokohama.jp/headlines/thecovesympo.html
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100610-00000004-flix-movi

 特にNHKが朝7時のニュースで報道したのは反響絶大。11日にも東京新聞を始め、取り上げられるようです。シンポ当日の会場アンケートでも、中止騒動の現実を会場に来るまで詳しく知らなかったという人が結構いましたから、議論はまだ始まったばかりです。

 さて中止騒動の行方はというと、全国の映画館への電話攻勢はいまだにやまず。しかも6月12日に横浜のニューテアトルに街宣をかけるという予告がさきほどアップ。東京の2館はこの予告におびえて上映中止を決めたのですが、上映予定の映画館にとってはいよいよ緊迫。まさに正念場です。http://www.shukenkaifuku.com/info/main.htm

言論報道機関がどれだけ報道や論評を行い、世論が高まるかが恐らく流れを決めるのだと思います。この1週間が勝負どころです。
 『創』編集部としても、この緊迫した状況を受けて、この間寄せられた意見を紹介する場もかねて、専用ブログを立ち上げようかと検討中です。(文責・篠田)

直前に映画『ザ・コーヴ』上映中止事件が起きたため、6月9日のシンポジウムには参加希望者が殺到しています。定員は550人ですが、既にローソンでの前売券400は完売、予約のメールも定員を超えて届いており、あとは当日券を残すのみです。予約をしておいて欠席する人もいると思うので、当日、どのくらい当日席を確保できるかわからないのが実情です。ご不便をおかけして申し訳ありません。

ただ、会場に来られない方のために、映画「ザ・コーヴ」上映時を除いたシンポジウムなどはネットで中継します。
生中継を予定しているのは「ザ・ジャーナル」 http://www.the-journal.jp/ や
「ourplanet-tv.」 http://www.ourplanet-tv.org/ です。
冒頭の18時40分から19時、20時30分から21時半までのシンポジウムを中継する予定です。

 3日昼までは上映はほぼ行けそうと予測されていたイルカ漁批判の映画「ザ・コーヴ」だが、急転直下、緊迫した事態に至った。配給会社への街宣抗議は裁判所の仮処分が出て止まっていたのだが、今度は映画館への抗議が始まったのだ。映画館はもともと、観客の安全と興行第一だから、攻撃には弱いと見られていたのだが、やはりというか、次々と陥落。既に東京のメインシアター2館が全滅、大阪も1館が上映中止となった。


 どんな抗議がなされているかというと、まず電話による集中抗議。いわゆる「電トツ」だ。そのうえにネットで今度は街宣の日時を予告する。そうすると映画館は耐え切れずに、予告された街宣予定の前夜に中止を発表する。3館とも全く同じパターンだ。街宣がある前に、おびえた映画館が「自粛」するという形である。

 
 既に東京は全滅なので6月26日の公開はなくなったが、横浜、さらに地方にも電トツが広がっており、今後も降りる映画館が出てきそうな雰囲気だ。2年前の映画「靖国」騒動の時は、一部大阪を除いてほぼ全滅になったが、このままいくとそれに近い状況になりそうだ。もちろん配給会社も手をこまねいてはおらず、近々対抗策を打ち出すようだ。

 3日夜の上映中止発表から新聞・テレビも大きな報道を展開している。朝日新聞は例えばきょう5日は朝刊で中止拡大をストレートニュースで伝え、夕刊で掘り下げた解説をさらに行うという具合。内容もかなり正確だ。NHKも第一報からかなりの扱いで経緯を報じている。

 こうした報道を受けて、事態に危機感を持つ人も増えており、上映中止の映画館には「中止に抗議」する電話も入り始めているという。「靖国」の時は、報道を受けて世論が盛り上がり、新聞・テレビもキャンペーンを張ったおかげで、途中から潮目が大きく変わった。今回も攻撃は全国の映画館に拡大しており、このままでは壊滅的事態となるが、事態がどうなるかは報道の推移や世論の高まりによるといえよう。事態は進行中であり、ここ1週間で流れが決まるといえる。
 こうした事態を受けて、6月9日の『創』主催の中野での上映会も申込が殺到している。
http://www.tsukuru.co.jp/thecove.html  当日は、予定していた内容を変更し、冒頭で多数の表現者が顔をそろえて「上映中止に反対する会見」を行うことにした。悠長に作品の中身を論じている場合ではなくなったからだ。映画には批判的な論者も、上映を圧殺するのには反対だとしている。
マスコミの取材依頼も殺到しているが、基本的に報道関係者も一般と同じ1000円を払って入ってもらうことにする。映画上映中はもちろん撮影不可だが、会見やシンポについては取材は自由で、ネットでの生中継も行いたいと思う。

 この日本の騒動は海外でも報道されているが、アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞して海外ではほとんど上映された映画が、日本でこんなふうに封印されていくというのは、日本の「言論表現の自由」がいかに脆弱かを世界中に知らしめているわけだ。こんなことが前例になっていくと、問題作といえるような映画作品は事実上上映できなくなってしまう。

 まだ中止を決めずにがんばろうとしている上映予定の映画館は「ザ・コーヴ」公式サイトで公開されている。http://thecove-2010.com/ 「上映をやめろ」という電話がかかっているが、今後は「がんばれ」という激励の電話も増えていくと思う。

 明日か明後日にはジャーナリストや映画監督らの抗議声明が出る予定だし、週明けには様々な言論団体も意思表示を始めると思う。この1週間は極めて重要だ。

 アカデミー賞長編度ドキュメンタリー賞を受賞しながら、日本では物議をかもし、なかなか公開できないでいた映画「ザ・コーヴ」だが、公開が正式に6月26日に決まった。といっても、先週あたりから劇場に抗議の動きがあるなど、2年前の映画「靖国」騒動と同じ状況になっており、無事上映されるかどうかは予断を許さない。

 この映画については発売中の月刊『創』が森達也、綿井健陽、想田和弘、是枝裕和さんらドキュメンタリー映画の第一人者による座談会を掲載しているが、主要な問題点はこの論稿に尽きているといって過言ではない。そこで今回、『創』では特別にこの座談会をネットで公開することにした。というのも、来る6月9日(水)夜、なかのzero小ホールで上映とシンポジウムを開催することにしており、限られた時間で凝縮された議論をするために、あらかじめ論点整理をしておきたいと思ったからだ。
 9日のシンポでは、映画を全編上映した後に、1時間余の議論を交わす予定だが、マスコミ関係者も多数来る予定で、言論表現に携わる人を含めて熱い議論をしようと考えている。日時・会場などは下記の通り。


●アカデミー賞映画「ザ・コーヴ」上映とシンポジウム
6月9日(水) 18時20分開場  40分~上映(90分)20時20分~シンポ 21時半終了
会場: なかのzero小ホール  参加費:1000円
登壇者:森達也(作家、監督)/ 綿井健陽(映像ジャーナリスト)/坂野正人(カメラマン・ディレクター)/鈴木邦男(一水会顧問)/司会:篠田博之(『創』編集長)
前売り券はローソンにて発売中(Lコード37359)。
当日券の予約は
http://www.tsukuru.co.jp/thecove.html

 

映画をめぐる『創』誌上座談会はこちらをご覧いただきたい。9日のシンポへ向けて6月8日までネットで全文公開することにした。

(公開終了)
 

上映中止が懸念されるドキュメンタリー映画「ザ・コーヴ」を論じる!

森達也×綿井健陽×想田和弘