トップ> 月刊「創」ブログ > 2009年6月アーカイブ

2009年6月アーカイブ

 先週は『創』の校了の時期で忙しくて他のことは何もできなかったのですが、きょう書くのは、グーグル騒動についてです。
6月21日の毎日新聞で作家の桐野夏生さんが「グーグル問題に思う 小説断片化への不安」と題して書いていました。文学者らしい視点で、感心しました。本当はこの問題、こんなふうにいろいろな作家の方々が自分の意見を表明していくと、もっと面白い議論になると思うのですが、現実はというと、なかなかそうでもありません。きょうもあるグーグル問題の勉強会に参加して、今帰ったところなのですが、参加している顔ぶれが大体決まってるんですね。業界団体関係者です。
 そもそも、何がどうなっているのかよくわからないという人がほとんどです。私も驚いたんですが、まずアメリカでグーグルが著作物を無断で全部スキャンしていたというのでアメリカの作家組合や出版社が提訴して、今和解手続きに入っているのですが、これ、日本にはない集団訴訟(クラスアクション)という仕組みで、その和解が裁判の直接の当事者だけでなく他の利害関係者にも適用される。ベルヌ条約に加盟している全世界の国に適用されてしまうとかいう、とんでもない話なんですね。つまり日本の著作者や出版社も、拒否手続きをしない限り、この和解案に巻き込まれるというのです。そこから離脱するにはオプトアウトという手続きが必要で、しかもその期限が最初は5月5日と勝手に設定されていたんです。しかもオプトアウトしようにも、まずネット上の手続きが難しくて、意思がありながらできない人も大勢いるというのです。
これはあんまりだというので結局、期限が9月4日まで延長されたのですが、それまでにオプトアウトしないと、へたをすると日本の著作物もグーグルによってデジタル化され、場合によっては公開されるというわけです。しかも、グーグルは当面公開するのは絶版になっている著作物だけと言っているのですが、ある出版社が調べたら、今でも売っている本も絶版とみなされていたというのです。つまり著作物が絶版か市場流通してるかどうかはグーグルが一方的に判断することになっているのです。
そもそも著作物の流通というのは国によってシステムが違うし、出版文化それぞれが違うわけです。だからグーグルという私企業によって、全世界の著作物が管理されていくというのはどう考えても乱暴なんですが、そこはあのストリートビューなんて無茶苦茶なものを強引にやってしまうグーグルですから。
で、日本の著作権者や出版社も否応なく、この騒動に巻き込まれ、いったいどう対応すべきかカンカンがくがくの議論になっているのです。といっても議論をしているのは日本文藝家協会とか日本ペンクラブ、それに書協といった業界団体で、多くの著作者は、何がどうなっているのかわからずただあっけにとられているだけ、というのが実情のようです。
業界団体の対応もまた千差万別というほど分裂しています。文藝家協会は、和解案を受け入れた上でデータ削除も含む権利主張をしていこうという考えですが、中小出版社の団体である流通対策協議会などは「まずオプトアウトすべき」という意見です。
そんなふうに分裂した著作権者を見て、こいつらは何もわかっていない、と罵倒するネット社会の事情通もいたりして、とにかく百家争鳴状態。
アメリカの裁判にどうして日本が自動的に巻き込まれるの!とその点には多くが反発しているのですが、でもこんなふうに国境を超えて世界中がいきなりつながってしまうのが、ネット社会の特性なんでしょうね。しかも、著作物が紙中心からデジタル中心の時代に移行するというのは、いずれやってくるわけで、日本の出版界でも、拒否をするだけでなく、グーグルの案に代わる対策を考えるべきだという意見も出ています。つまりいずれグーグルが世界中の「知」や「情報」を管理しようとしてくるのは明らかだから、それに対抗しうるシステムを作るべきではないか、というわけです。
いや、私も専門家というわけでなく、研究会に行くたびに、「え、そうなの?」と驚くことばかりです。我々の親しんできた著作物、「本」がこれからどうなるのか、これは決して出版業界団体だけの問題ではありません。
で、私の所属する(というか一応、言論表現委員会副委員長という立場なんですが)日本ペンクラブでも明日、この問題でシンポジウムを行います。ぜひ多くの人が来て下さい。今、何が起ころうとしているのか知るだけでも大切なことです。予約不要、誰でも参加できます。ということで最後は告知をしてきょうのところはおしまいに。
このグーグル問題については次号の「創」でも取り上げています。 (篠田)

■日本出版学会/日本ペンクラブ 合同シンポジウム
グーグルブック検索和解協定を検証する
~出版流通・表現の自由・国際比較の観点から~

【開催主旨】
 米国でのグーグルブック検索訴訟の和解案が,世界中の著作権者や出版社の間で大きな議論を巻き起こしています。日本でも出版社や著作権者が早急な判断を迫られたことから,さまざまな見解や態度表明がなされ,日本ペンクラブでも4月24日付で和解案に対して懸念する主旨の声明を発表しました。過熱的状況を背景に国内外での混乱や対応に食い違いが生じた理由として,米国内での著作権訴訟が日本に影響及ぼす法的背景,「フェアユース」概念,日本にはない「集団訴訟」,ネットビジネスで採用されている「オブトアウト方式」による許諾,言論表現や出版商習慣の違いなど,国際間での理解や知識・情報不足があげられます。
 日本ペンクラブと日本出版学会は共同で,グーグルブック検索和解協定を検証するパネルディスカッションを開催します。そこでは出版流通・表現の自由・国際比較の観点から討議し,今後の議論のための知識と理解を深める機会になればと考えます。

パネリスト:
 三浦 正広(国士舘大学)
  「日米における著作権法の違い・フェアユースについて」
 原 若葉(弁護士)
  「集団訴訟・ベルヌ条約について」
 植村 八潮(東京電機大学出版局 日本出版学会副会長)
  「日米における出版流通や出版契約慣行の違いについて」
 山田 健太(専修大学 日本ペンクラブ言論表現委員会委員長)=司会
  「グーグル協定概要・表現の自由の立場からの問題提起」
(今後の状況次第で変更する場合もあります)

日 時:平成21年6月30日(月) 午後6時-8時30分
参加費:会員(ペン・出版学会)/学生 500円  非会員/その他 1000円
会 場:東京電機大学(神田キャンパス) 7号館 丹羽ホール
    101-8457 東京都千代田区神田錦町2-2
    http://atom.dendai.ac.jp:80/info/access/kanda_map.html
交 通:JR 御茶ノ水駅・神田各駅より徒歩10分
    地下鉄 新御茶ノ水駅・小川駅・淡路町各駅より徒歩3~5分
問合せ:日本ペンクラブ事務局
Tel.(03)5614-5391  Fax.(03)5695-7686  http://www.japanpen.or.jp
日本出版学会事務局
    info@shuppan.jp  Tel.(03)5684-8891  Fax.(03)5684-8892

コピー ~ 1.jpg   日曜午後2時からの『審判』サイン会には100人の人たちが行列を作ってくれました。

 あまり人が集まらなかったらどうしようと心配もしていただけに、こんなに大勢の人たちがサイン会に来てくれたことは、マ~シ~にとって大変な励みになりました。




コピー ~ 2.jpg  通常は100人くらいのサイン会は約1時間で終わるのですが、この日は丁寧に握手をしたり写真を撮ったりしたため、たっぷり2時間かかりました。


 





コピー ~ 3.jpg

 並んだ人たちも、アキバという場所柄も反映してか20~30代の男性が多かったのですが、そのほか40代以上の女性や20代のカップルなどと幅広い客層でした。なかにはアフリカへ行った時に、マサイ族の人に「耳にタコ」という紙を持たせて写真を撮ってきたという人が、その写真を持ってきたりとマ~シ~のサイン会ならではの光景も。これはさっそく田代ブログで紹介することにしました。

 発売中の月刊『創』7月号で詳しく書いたが、昨年6月に処刑された宮崎勤死刑囚の「遺言」が、つい最近明らかになった。昨年4月4日付で宮崎死刑囚が書いた文書を母親に預けておいたものだ。「肌身離さず持っていて!」とあるから、宮崎死刑囚も大事なものだという認識で託したのだろう。

 中身は、友人知人に預けたもの、拘置所に預けたものを細かく箇条書きしたものだ。普通に考えれば、自分の身に何かあった時のために書きとめたもので、遺族はそれを「遺言」と呼んだ。ちなみに、物を預けたのが一番多い知人は私・篠田だった。

 この文書がいささか衝撃的なのは、宮崎死刑囚は生前、刑確定後も死刑判決を受け入れておらず、自分には関係ないことだと語っていたからだ。そう主張しながらも、死刑執行に備えて遺言を残していたとすれば、彼が内心では死刑について少しずつ考えるようになっていたことの証しといえる。

 ただ、よくわからないのは、拘置所に預けたものを書いたリストの表題が「出所時に、どうしても宅下げしたいもの」とあることだ。宮崎死刑囚は一貫して自分は無罪だと主張し、再審請求も望んでいた。だからこの文書は、いつか罪が晴れて「出所時」が訪れることを考えていたとも受け取れる。

 この文書を、遺族は「遺言」と受け止めたが、宮崎死刑囚が自分の死をどこまで覚悟していたかは、にわかに判定できないものだ。いろいろな可能性を想定して、いざという場合のために書き残したということなのだろう。

 ただ、こんなふうに自分が処刑される可能性を具体的に想定していたことは、彼と12年間接してきた私にとっては、衝撃的であった。

 確かに死刑確定後は死刑に言及する機会が増えたから、それ以前よりも彼がその問題に向き合うことが増えたのは理解できるのだが、「遺言」を残すという具体的なところまで彼が考えていたことは、今回の文書で初めて明らかになったといえる。

 宮崎死刑囚は、最後まで理解することが難しい人物だった。統合失調症だという見方と「詐病」だという見方とが相半ばした。彼が自分の「死」についてどう考えているかは、何度も尋ねたが、明快な答えは得られなかった。

 『創』7月号の記事「確定死刑囚は『死』とどう向きあうのか」は、確定したばかりの林眞須美死刑囚や、奈良女児殺害事件の小林薫死刑囚など、私が長年接してきた死刑囚たちの近況を明らかにしながら、彼らが「死」をどう考えているか書いたものだ。

 ぜひ読んでいただいて意見や感想を寄せてほしい。

                月刊『創』編集長・篠田博之

「出版人懇談会」第5回勉強会  表現の自由はガラスの城

 

―昨今の雑誌メディアへの「高額賠償・社長の管理責任・記事取消し広告掲載」など
懲罰的ともとれる判決の背景と問題点について―
報 告:飯室勝彦先生(中京大学教授/元東京新聞論説委員)
     ※著書に「報道の自由が危ない-衰退するジャーナリズム」(花伝社)
      「敗れる前に目覚めよ-平和憲法が危ない」(花伝社)ほか

●日時:6月12日(金)午後6時30分~8時30分
●会場:岩波セミナールーム
     千代田区神田神保町2-3岩波アネックスビル3F
     (半蔵門線/都営三田線/都営新宿線 神保町下車3分)
●主催:「憲法と表現の自由を考える出版人懇談会」
●参加費:会員500円 会員外1000円 当日入会者1500円(入会費1000円込)

 昨今の週刊誌報道に対する司法当局の判断は、容認しがたいものがあります。週刊現代の「大相撲八百長報道」に対する4,290万円という空前の高額賠償判決(09年3月)、同北の湖理事長問題での1,540万円など、算定根拠も基準も不明確な判決が相次いでいます。また、記事作成に対する社長の指導・管理責任を問う判決や「当該記事そのものの取り消し広告掲載」の命令など、雑誌ジャーナリズムをターゲットにした報道抑制と言論への権力の介入を、こうした判決の多発に感じざるを得ません。

 この懲罰的とさえとれる判決の背景にあるものは何か。そして、わたしたちはどう対応すべきか、出版界にいるすべての人とともに、いまこの問題に正面からとりくまなければ、大変な事態を招くのではないかと危機感を持っています。今回ジャーナリズムのありようと表現の自由の問題に造詣の深い飯室勝彦先生をお招きして、みなさまとともにこの問題を考えたいと思います。多数のご参加をお願いいたします。


「出版人懇談会」事務局
連絡先:〒113-0034 文京区湯島2-31-10-202
Eメール:kenpoueighty21@yahoo.co.jp
(会場準備の都合上、ご出席希望者はできるだけ上記メール宛ご連絡下さいますようお願いします。)

 サイン会4up.JPG

   5日午後6時半、新宿駅改札でスタッフと待ち合わせたマ~シ~は、まずルミネ2の5階にあるブックファーストルミネ新宿2へ。ここではエスカレーターからあがったすぐのところに『審判』をものすごく目立つように展開しており、ぜひお礼を言いたいと訪れたもの。「田代さんのブログを見て応援したいと思いまして」と、その展開を企画してくれた芝原さんはあいにく所用で不在でしたが、店長の樋口さんに挨拶。その場で色紙を書いて渡しました(写真)。

  

サイン会1up.JPG

 その後、雑踏の中を歩いてコクーンタワーにあるブックファースト新宿店へ。その1階のカフェ脇の部屋にて夜7時からマ~シ~のトーク&サイン会が行われました(写真)。以前からのファンも来てくれていましたが、半分くらいは初めてのお客。40分くらい会場と質疑応答や新刊『審判』の感想などを話しあった後、サイン会となりましたが、約40人と少人数の会だったために、一人ひとり握手をしたり、写真を撮ったりと中身の濃いものに。マ~シ~も一人ひとり、読者の名前を書いてイラストとサインをするという丁寧な対応でした。

 

 

 

 

 サイン会2up.JPGサイン会8up.JPG

 盛り上がったのは、何番目かに、元クワマンさんのマネージャーだった、マ~シ~の知り合いが現れ、突然泣き出したシーン。そのほかにもマ~シ~を以前から知る人が訪ねてきていたりしました。サイン会にたっぷり時間をとったために終了は9時頃。会場には日刊サイゾーや東京スポーツなどメディア関係者も来ており、控室で囲み取材も行われました。

 

  

サイン会7up.JPG  その後、地下1階にある『審判』の売り場へ。ここでも『審判』は何か所かに置いて力を入れた展開をしてくれており、チーフの柴田さんにお礼を(写真)。

 

  来る14日午後2時からは秋葉原駅ビルの有隣堂ヨドバシAKIBA店でサイン会が行われます。こちらはトークライブなしなので定員枠はなく、当日飛び込み参加も可能です。電話予約をしておけば当日直接会場へ行くことで参加できますので、奮って参加して下さい。電話番号は03-5298-7474。営業時間は9:30~22:00

 

 

 

 

 


 

IMG_0985.JPG 個性派俳優・役所広司さんが監督に初挑戦!ということで『創』7月号に登場しています。


 インタビュー記事の中で、監督の仕事についての感想などのほか、作品「ガマの油」のテーマである死生観を語っています。

 


 

IMG_0934.JPG 

 

 

 

 

 

 

 

 このインタビュー記事6ページのほか、『創』7月号には、社会学者・宮台真司さんの役所広司論も掲載されています。
 特集はこのほか、同じく俳優兼監督として田口トモロヲさんのインタビューなど、映画の話が盛りだくさん。邦高洋低と言われる映画界でいま何がおきているかを伝えています。

 『審判』出版記念のトーク&サイン会が近づいてきました。特に6月5日夜のブックファースト新宿店のトークショーは、定員40人と少人数で、これまでのイベントのように舞台と客席が離れている形式でなく、マ~シ~と本当に間近で話ができる貴重な機会です。   

 

で、ここで大事な提案です。

 

 「当日いきなり行っても入れるのでしょうか」という問いあわせがたくさん入っています。定員40人と少人数制のため、当日いきなり行って入れるのはキャンセルが出た場合に限られます。

 

  ただ、これまでもマ~シ~のイベントには北海道や九州から駆けつけてくれる人も多く、本人もそれには本当に励まされてきたので、『審判』発行元の創出版が、ご希望の方のために、事前に本を買って整理券を確保してさしあげるという手続きをとることにしました。自分のところで出版した本をわざわざ書店に買いに行くのも変なものですが、これまでマ~シ~の熱心なファンの姿をたびたび見てきて、その熱意に応えたいと思ったわけです。

 

  で、今のところ10席くらい確保する予定です。5日当日はトークとサイン会あわせて1時間から1時間半くらいの予定で、開始は夜7時から。本代の1470円以外に料金はいっさいかかりませんから、少人数でマ~シ~と直接話ができることを思えば超オトクなイベントです。

 

 希望される方は、

 

  book@tsukuru.co.jp

 

  宛に「トーク&サイン会参加希望」という件名でお名前や連絡先(携帯)を書いてメールで申し込んでください。このメールは創出版に届きます。希望者が多い場合は、「どうしても」という人を優先しますので、「どうしても」という事情があれば書いて下さい。返信する際に、整理券の番号や当日の精算方法などをお知らせします。定員枠が埋まった時点で締め切りになりますので、その場合はご容赦下さい。ただ締め切りになってしまった場合も、お知らせはします。

 

 それからもうひとつ、6月14日午後2時からの秋葉原の有隣堂でのサイン会ですが、こちらは基本的にサイン会だけなので、定員の制限はありません。ですから当日来て、その場で本を買って下さっても参加できます。

 

  事前の電話予約も受け付けています。

  ★有隣堂ヨドバシAKIBA店(電話予約03-5298-7474/営業時間9:30~22:00

 

 電話予約された方の分は、当日本を用意しておきます。当日は最大200冊まで本を用意しますので十分空きがあります。電話予約のうえぜひおいで下さい。サインだけでなく、握手や一緒に写真を撮ることも可能です。ぜひ足を運んで直接マ~シ~に励ましの言葉を掛けてあげてください。