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月刊「創」ブログ

最近明らかになった連続幼女殺害事件・宮崎勤死刑囚の「遺言」

 発売中の月刊『創』7月号で詳しく書いたが、昨年6月に処刑された宮崎勤死刑囚の「遺言」が、つい最近明らかになった。昨年4月4日付で宮崎死刑囚が書いた文書を母親に預けておいたものだ。「肌身離さず持っていて!」とあるから、宮崎死刑囚も大事なものだという認識で託したのだろう。

 中身は、友人知人に預けたもの、拘置所に預けたものを細かく箇条書きしたものだ。普通に考えれば、自分の身に何かあった時のために書きとめたもので、遺族はそれを「遺言」と呼んだ。ちなみに、物を預けたのが一番多い知人は私・篠田だった。

 この文書がいささか衝撃的なのは、宮崎死刑囚は生前、刑確定後も死刑判決を受け入れておらず、自分には関係ないことだと語っていたからだ。そう主張しながらも、死刑執行に備えて遺言を残していたとすれば、彼が内心では死刑について少しずつ考えるようになっていたことの証しといえる。

 ただ、よくわからないのは、拘置所に預けたものを書いたリストの表題が「出所時に、どうしても宅下げしたいもの」とあることだ。宮崎死刑囚は一貫して自分は無罪だと主張し、再審請求も望んでいた。だからこの文書は、いつか罪が晴れて「出所時」が訪れることを考えていたとも受け取れる。

 この文書を、遺族は「遺言」と受け止めたが、宮崎死刑囚が自分の死をどこまで覚悟していたかは、にわかに判定できないものだ。いろいろな可能性を想定して、いざという場合のために書き残したということなのだろう。

 ただ、こんなふうに自分が処刑される可能性を具体的に想定していたことは、彼と12年間接してきた私にとっては、衝撃的であった。

 確かに死刑確定後は死刑に言及する機会が増えたから、それ以前よりも彼がその問題に向き合うことが増えたのは理解できるのだが、「遺言」を残すという具体的なところまで彼が考えていたことは、今回の文書で初めて明らかになったといえる。

 宮崎死刑囚は、最後まで理解することが難しい人物だった。統合失調症だという見方と「詐病」だという見方とが相半ばした。彼が自分の「死」についてどう考えているかは、何度も尋ねたが、明快な答えは得られなかった。

 『創』7月号の記事「確定死刑囚は『死』とどう向きあうのか」は、確定したばかりの林眞須美死刑囚や、奈良女児殺害事件の小林薫死刑囚など、私が長年接してきた死刑囚たちの近況を明らかにしながら、彼らが「死」をどう考えているか書いたものだ。

 ぜひ読んでいただいて意見や感想を寄せてほしい。

                月刊『創』編集長・篠田博之

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