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2012年8月アーカイブ

作家・柳美里氏が毎回ゲストを迎えての
新宿ロフトプラスワントークライブ
「柳美里語る」

第一回目はゲストに写真家/作家・藤原新也氏、作家・大野更紗氏をお迎えします。

震災後1年以上にわたって福島県南相馬市のミニFMの
パーソナリティとなり、地元の人々の「震災前後の街とひとの記憶」を
インタビューし続ける作家・柳美里が、第一回目のゲストに指名したのは、3.11直後より東北の地に立ち、なかでも福島に軸足を置き長期間の取材・撮影を続ける藤原新也氏。

もう一人のゲストには柳美里氏が、その「書く」姿勢に共感を受けたという
作家・大野更紗氏。氏はミャンマー難民研究に取り組んでいるさなか、
自ら難病に見舞われ日本医療における「難民」となってしまった体験を
綴った著書「困ってるひと」(ポプラ社刊)でデビュー、
池田晶子記念 わたくし、つまりnobody賞を受賞し。
福島県出身でもある大野氏と、藤原氏、柳氏、三人の共通点である「福島」、
そして「表現することが困難なものに取り組む」作家としての「生き方、書き方」を語ります。

8月28日「柳美里語る」シリーズ第一夜 「生きること書くこと」
ゲスト・藤原新也(作家/写真家)、大野更紗(作家)
場所・新宿ロフトプラスワン
OPEN 18:30 / START 19:30
前売¥1500 / 当日¥2000(共に飲食代別)

新宿ロフトプラスワン http://www.loft-prj.co.jp/PLUSONE/
新宿区歌舞伎町1-14-7林ビルB2 TEL 03-3205-6864

醜悪な政治的駆け引きの末に消費増税関連法が10日に成立した。この問題については全国紙が全て政府支持に回り、翼賛体制が確立したといえるエポックメイクな出来事かもしれない。一時はリベラルな紙面で知られた毎日新聞も11日の社説は「増税法成立 『決める政治』を続けよう」という見出し。いったいどうしちゃったの?という感じだ。在京紙では東京新聞だけが消費増税反対なのだが、全国紙のこの状態には失望を禁じ得ない人も多いと思う。

そんななかで興味深かったのが8月11日の朝日新聞に掲載された「増税、地方紙は批判的」という記事だ。全国紙は増税支持だったが、地方紙は、北海道や中日、中国、西日本などほとんどが増税に批判的だと指摘したもの。地元読者の目線を大事にするのが地方紙の特徴であるゆえに、そうなったという解説もなされている。全国紙の体たらくに失望していた人にとっては、希望を感じさせる記事といえる。

興味深いというのは、記事内容もさることながら、社説で増税支持を打ち出している朝日新聞にこういう記事が載ることの意味合いだ。実は、同紙は8月6日にも「消費税『朝日はどっちだ』読者から声 多様な論点 伝え方模索」という大きな記事を掲載している。

朝日新聞は社説では増税支持を打ち出しているが、記事では批判的なものもあり、いったいどっちなのだという読者の声が多数寄せられているとして、それについての回答を載せたものだ。内容は、社説は論説委員室での議論を通して決められていくのだが、それは個々の記者の記事や論評を縛るものではない、というものだ。これも興味深いのは、朝日新聞が、この記事を一面全部を使って大きく掲載したことの意味合いだ。

4月初めに掲載された朝日新聞の消費増税推進の社説は本当にひどいものだったが、社の内外で、いろいろな反響があったことを、これらの記事は示しているのではないだろうか。読売新聞などは、社論が紙面全体に貫徹していると言われるが、朝日新聞は、増税推進の旗を掲げたものの、内外には異論も渦巻いている。そのことを反映しているのではないだろうか。読者から突っ込みが入って、紙面で弁明しているだけ、まだ多少の救いはあると考えられないこともない。

以前もブログに書いたが、遠い将来、消費税をどうすべきかという議論はあってよい。しかし、いまジャーナリズムがやるべきことは、その民意を無視した法案の通し方や、民主党の変節のひどさを批判することではないか。これだけ「主権在民」の理念が踏みにじられているのに、それを「決められない政治からの脱却」などと賛美するのは、政治と同じくらい新聞が堕落したことの象徴ではないだろうか。昨年の原発報道では、政治に対する不信がマスコミへの不信に直結していったのだが、最近の大手マスコミのひどさには、本当にため息が出る思いだ。 (篠田博之)

 7日に発売された月刊『創』で、この4月に福島刑務所を出所した人が「3・11後の福島刑務所」について詳しく語っています。放射能汚染について詳しい情報が伝えられなかったのは日本中同じでしたが、刑務所はもともとそういう説明がきちんとなされるところではないので、受刑者たちは非常に不安だったようです。震災直後、受刑者たちも身内がどうなったか安否を気にしたのですが、刑務所も被災したためか、テレビが見られたのは2日後。その後もほとんどきちんとした説明はなされず、ニュースで原発の爆発を知った受刑者たちは、不安におののいたようです。


 原発事故対応としては、福島刑務所では、昨年5月頃より、関東からの受刑者は関東の各刑務所に移送されていたようです。今年に入って刑務所敷地内で除染も行われたようですが、受刑者たちは放射能についての説明もほとんど受けず、不安を何度も訴えると警備隊員に連行されるという状況だったようです。むしろ中国人など外国人受刑者の方が、領事館からいろいろな文書が届くなど、丁寧な扱いを受けたとのことです。


 その他、福島刑務所のこの1年余の内部状況については、その記事をご覧いただきたいのですが、この福島刑務所の受刑者たちが問題になったのは、7月4日に産経新聞が一面トップで「東電、受刑者も原発賠償」という記事を報じたからでした。福島刑務所受刑者も申請すれば一般の被災者と同じく8万円が東電から支払われており、約1700人の全受刑者が請求すると1億3600万円になるという報道でした。


これについて、そんなふうに一律支給でよいのか、という危惧の声が上がったのでした。

ただ、その元受刑者の話によると、受刑者の間で東電からの賠償金については多くの人が知っていたけれど、実際には申請手続きをしようとしても、刑務所側が協力的ではなく、なかなか賠償金を受け取るのは簡単でないようになっていたようです。このへんは建前と現実が乖離しているという刑務所らしい話なのですが、いずれにせよ、3・11以後、福島刑務所はどうなっていたのか、という話題がネットなどで流れていながら、元受刑者が詳細を語った例はなかったようなので、今回の告白はなかなか興味深いといえます。

昨年、「清武の乱」勃発当時は、巨人軍の内部告発と捉えられていた清武問題だが、その後大きな広がりを見せ、ジャーナリズム全体の問題になりつつある。
さる7月24日には、清武氏が巨人と読売新聞グループ、渡辺恒雄氏の三者に対して1000万円の訴訟を提起した。これは『週刊文春』の原監督スキャンダル報道について、ネタ元を清武氏と特定したことが名誉毀損にあたるというものだ。また7月31日には、読売新聞社が七つ森書館の「読売社会部清武班」名による単行本の出版差止め仮処分を求めた件で、東京地裁が七つ森書館の異議申し立てを却下。七つ森書館側はもちろん受け入れず、最高裁まで争う意向だ。
この問題については『創』8月号で報告したが、渡辺恒雄氏の「清武憎し」の感情につき動かされた読売・巨人側は、相当無茶なことをなりふり構わず行っている。例えば、清武氏個人の通話記録をKDDIに開示させようとしたり、清武氏が荷物を預けておいた出版社WAC(『巨魁』の出版元)に対する仮処分で、5月26日、20名の執行官らが同社に踏み込む事態となった。また『週刊文春』6月28日号の原スキャンダル報道に際しては、まだ記事も書かれていない段階で、同誌の出版広告差止めの仮処分を申し立てている。
いずれも前代未聞のことで、清武氏が読売攻撃の情報源だと思い込んだうえで、ジャーナリズムの原則である「情報源秘匿」を自ら踏みにじる行動を次々と起こしているのだ。
出版社に対する攻撃に対しては、日本雑誌協会など出版団体も抗議声明を発表している。
 この問題については、朝日や毎日も紙面で取り上げているが、ジャーナリズム全体に関わる問題として、もっと広い議論を起こすべきだと思う。
 『創』では8月7日(火)夜、新宿ロフトプラスワンにて、清武氏本人を招いて、ジャーナリズムの問題としてこれを議論する。もちろんそのほかにも「小沢一郎の妻の離縁状」騒動や、新宿ニコンサロンの写真展中止事件など、ジャーナリズムをめぐる問題を議論する。ぜひ参加してほしい。

●「創トークライブ/ジャーリズム徹底討論」8月7日(火)夜6時半開場、7時半開会 
会場・新宿ロフトプラスワン(歌舞伎町旧コマ劇場斜め向かいの地下2階)
http://www.loft-prj.co.jp/PLUSONE/schedule/lpo.cgi
ゲスト 田原総一朗(ジャーナリスト)、清武英利(元読売新聞中部本社社会部長/元巨人軍球団代表)、元木昌彦(元『週刊現代』編集長)、山口一臣(元『週刊朝日』編集長)、北村肇(『週刊金曜日』発行人)、矢崎泰久(元『話の特集』編集長)、鈴木邦男(一水会顧問)、綿井健陽(ジャーナリスト)、他。司会進行:篠田博之(月刊『創』編集長)
第1部 清武問題とジャーナリズム(19時半~20時半)
第2部 雑誌ジャーナリズムの現状(20時40分~)
前売¥1500 / 当日¥1800(飲食代別)前売券はローソンチケットで発売中【Lコード:36986】。当日券もあり。