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篠田博之の「週刊誌を読む」

原発は大丈夫なのか?「週刊文春」の変容

 『週刊文春』と『週刊新潮』は、ともに保守系雑誌として、嫌韓憎中、朝日叩きなど足並みを揃えてきたのだが、このところ対照的な論調が目立つ。

例えば先の高市早苗総務相「電波停止」発言をめぐっての記事も好対照だったが、顕著なのは最新号の熊本地震報道だ。『週刊新潮』4月28日号が「川内原発停止を言い出した野党『便乗政治家』の見識」という記事を掲げたのに対し、『週刊文春』4月28日号は対照的に「原発は本当に大丈夫か?」という十ページに及ぶ特集を掲げている。

その中身もなかなかすごい。「『停止必要なし』丸川珠代担当大臣原発は素人同然」「震源北東へ伊方原発、玄海原発に警鐘を鳴らす地質学者」「震動・津波対策強化も火砕流直撃には打つ手なし」と原発稼働を続ける政府を真っ向から批判しているのだ。

見方によっては『週刊文春』がリベラル派に近づいたと言えなくもないが、これは政治的スタンスというより、読者の違いによるものだろう。『週刊新潮』は高齢の男性読者が多いが、『週刊文春』は女性読者が半分を占める。メディアはそれを支える読者に引っ張られるものだ。

話題転換。週刊誌の見出しと中身が違っているとはよく言われるが、『週刊現代』4月30日号がすごい。同誌記者がセブン&アイ・ホールディングス鈴木敏文会長の自宅を直撃したところ、会長は同誌の以前の記事を激しく批判。「まったくデタラメ」「なんでそういう嘘を書くのかね」「売らんがためのことを平気で書かれたらね。大変迷惑だ」。

その批判をそのまま載せたのはりっぱだが、何と見出しが「スクープ!鈴木敏文独占激白『裏切り者たちに告ぐ』」。やりとりの合間に語った話をこう載せるというのは、週刊誌はやはりしたたかと言うべきなのか。

最後に。前橋スナック乱射事件の矢野治死刑囚が他の殺人を告白した文書を警視庁に提出したというニュースが新聞・テレビで一斉に報じられた。実はこれは『週刊新潮』が何週にもわたって続けてきたスクープだ。週刊誌と新聞・テレビの報道の関係を示す事例なので、改めて取り上げることにしよう。

(月刊『創』編集長・篠田博之)

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