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篠田博之の「週刊誌を読む」

コミック誌をめぐる出版社のコンテンツ戦略の転換

 総合週刊誌はいずれも合併号なので、今回は趣向を変えてコミック誌について書こう。

 隔週刊誌『ビッグコミックスペリオール』が、3月下旬開始の新連載「機動戦士ガンダム サンダーボルト」を表紙にも掲げて大々的に売り出している。これは同誌が、というより小学館の青年コミック誌が大きく戦略を転換させた象徴だ。書籍化してヒットしそうな作品を重視する、という戦略だ。

 大手出版社の経営を支えるコミックは、この十年ほどで様変わりした。雑誌はほとんどが赤字に転落し、連載を書籍化したコミックスのヒットで収益を上げるというビジネスモデルに転換したのだ。

 昨年、講談社の『ヤングマガジン』が赤字になり、同社のコミック誌で黒字なのは『少年マガジン』一誌になった。『ヤンマガ』テコ入れのために講談社はこの春、『アフタヌーン』の吉田昌平編集長を『ヤンマガ』編集長に異動させた。『アフタヌーン』は、雑誌は赤字だが、コミックスでヒットを輩出してきた優良誌だ。

 『進撃の巨人』『テルマエ・ロマエ』などメジャー誌以外からコミックスのミリオンセラーが出ていることも路線転換を後押ししている。前者の母体は『少年マガジン』本誌でなく『別冊少年マガジン』、後者は公称3万部のマイナー誌『コミックビーム』だ。

 このゴールデンウイークで話題の映画といえば、『テルマエ・ロマエ』『宇宙戦争』『僕等がいた』などコミック原作の実写ものが多い。コミックは映画やドラマの原作として、コンテンツを作る機能を拡充させているのだが、母体の雑誌はほとんど赤字という構造になっているのだ。

 かつては百万部を超えるコミック誌がたくさんあり、雑誌で儲けて書籍化でまた儲けるという「一粒で二度おいしい」構造で、コミックは大手出版社のドル箱だった。今も『少年ジャンプ』のように283万部もの大部数を誇る雑誌はあるが、そこに連載されている『ONEPIECE』のコミックスは初版400万部。母体の雑誌より圧倒的に大部数だ。

コミック市場の激変については、発売中の『創』でも特集を組んでいるので参照いただきたい。

(月刊『創』編集長・篠田博之)

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