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篠田博之の「週刊誌を読む」

『文春』『新潮』橋下徹出自暴き報道の波紋

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 『週刊新潮』と『週刊文春』による橋下徹前大阪府知事バッシング報道が波紋を起こしている。父親が同和地区出身で暴力団だったなどとする「出自」暴き報道だったからだ。

『フライデー』1125日号によると「部落解放同盟は1031日付で、週刊誌2誌を発行する出版社に『同和と暴力団を同列に扱い、結びつけるもので、部落差別を扇動することに他ならない』と抗議文を送っている」。

当の橋下氏もツイッターで激しく反論している。「僕の生い立ちは結構。しかし、僕のはるか昔に死んだ実父の出自、行状、死亡経緯は僕の何のチェックに役立つんだ?」「お前らの論法でいけば、俺の子供にまでその血脈は流れるという論法だ。これは許さん」「バカ文春、バカ新

潮、反論してこい」

『週刊現代』1119日号によると「こうした『怒りのつぶやき』を、橋下氏は一日に10回超、多いときには50回近くも書き込んでいる」。同誌は、一連の「出自」報道についての感想を、大阪市民百人に聞いたところ「約8割が『そんなことは関係ない』と答えた」という。「出自」報道の影響については『アエラ』1114日号も書いているが、「同情論が強まり、むしろ橋下氏にプラスではないか」という指摘も少なくないという。

 『週刊新潮』『週刊文春』の報道を真っ向から批判した週刊誌もある。『週刊ポスト』1118日号「橋下徹『抹殺キャンペーン』の暗黒」。二誌が同時にバッシングを始めたのは、橋下氏の改革で既得権益を脅かされる勢力によるリークがあったのではないか、というのだ。

 一方の当事者である『週刊新潮』『週刊文春』は、その後も橋下叩きを続行。『週刊新潮』1117日号は「吠えて票を増す天才的扇動者」と、橋下氏が騒動をも選挙に利用していると非難。出自以外の不祥事を暴いてみろ、と挑発されたのを受けて「橋下前知事と暴力団系企業の公共工事7億円」という記事を掲載している。

 ほとんど場外乱闘ともいうべき論争だが、この騒動で、橋下氏の政治手法や政策についての真っ当な議論がどこかへ吹き飛んでしまった感があるのは残念でならない。

(月刊『創』編集長・篠田博之)

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