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篠田博之の「週刊誌を読む」

フジテレビ韓流ドラマへの批判とナショナリズム

 ツイッターで何気なくつぶやいた一言が騒動に発展してしまう例が少なくない。

 今回の騒動の発端は俳優の高岡蒼甫が七月二十三日につぶやいた一言だった。「正直、お世話になったことも多々あるけど、8はマジで見ない。韓国のTV局かと思うこともしばしば」。韓流ブームへの違和感の吐露なのだが、平日午後に韓流ドラマを放送しているフジテレビを名指しで批判したことが問題になった。

 所属事務所にすればフジテレビを名指しで批判するのは幾ら何でもまずい。結局、高岡は事務所を辞めざるをえなくなってしまう。この段階で芸能マスコミが一斉に報道し、騒ぎになった。

 しかも、その報道の仕方が高岡を傷つけるものだった。「宮崎あおいと高岡蒼甫 格差婚4年『語られざるドラマ』」(週刊文春)「宮崎あおい『それでも"暴走夫"と別れない理由』」(フライデー)等々。人気女優である妻の宮崎あおいを引き合いに出し、なぜこんな夫と別れないのかという論調だった。

 さらに騒動は意外な方向に飛び火した。ネットでの呼びかけで、八月七日、フジテレビに抗議行動が行われたのだった。日の丸を手にした人も多く、この間、竹島問題をめぐる日韓対立が大きく報道されたことが背景にあることは確かだろう。

 もちろんフジテレビが平日午後に韓流ドラマを流しているのは政治的立場とは無縁の判断からだ。局員が『週刊現代』8月2027日号でこうコメントしている。「韓国のドラマは、視聴率も2時間で平均4%台と、あの時間帯としては上々。そしてなにより、放映権が破格に安いんです」

 この騒動は、「嫌韓」と呼ばれるネット社会のナショナリズムに火をつけてしまったようで、今月下旬にもフジテレビに抗議デモが行われるという。

 当の高岡は困惑し、ブログでこう書いている。「日本の事を呟くと右だとか左だとかそういう話になって、今は普通の会話をしようとしてもそうはいかなくなっていってる」「なんか方向性が明らかに違う気がする」

 ちょっとしたきっかけでナショナリズムに火がつく。日本は今、そういう空気になりつつあるようだ。

(月刊『創』編集長・篠田博之)

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