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篠田博之の「週刊誌を読む」

被災地で逮捕された「ニセ医師」のマスコミとの関わり

被災地・石巻市での「ニセ医師」騒動の容疑者が逮捕された。この容疑者、驚いたことに逃亡中にもマスコミに出まくっていた。

騒動の発端は朝日新聞が八月十日付の「ひと」欄で、この人物を「ボランティアの専属医」と取り上げたことだった。記事を見た人からの情報提供で、この人が本物の医師でないことを知った朝日新聞は、十二日付紙面でお詫び。その後、この男性は四月二十一日の読売テレビ「ミヤネ屋」、七月十一日の日本テレビ「スッキリ!!」にも登場していたことが判明した。

こんなふうにメディアに露出していたら身元が割れるのは当然なのだが、この人、その後も潜伏先から携帯電話でマスコミに出演。『週刊ポスト』9月2日号では、インタビューに応じてマスコミ批判もぶっていた。

「朝日ともあろうものがなア。どこの馬の骨かわからない人間を、確認せずに取り上げるのはどうなんやろう。向こうがアホやろ」「朝日だけやない。テレビのワイドショーも俺を取り上げとったなア。でもアレ、やらせやで。『熱中症の人いませんか?』ってその場でADが具合の悪い人を探して、撮りたい絵だけ撮影して帰っていったからな」

この男性、その後のマスコミの取材で、二〇〇六年に結婚詐欺で逮捕されていることも判明。その時は職業をパイロットと偽ったという。『週刊現代』9月3日号によると、この男性は同誌の取材依頼に対して、独占取材をしたければ百万円を払うよう要求したという。しかも、それを日本財団に募金せよ、と言ったというのだ。

実はこの男性、医療ボランティア活動に対する助成金として、六月に日本財団から百万円を受け取っていた。『週刊新潮』8月25日号の取材に答えて「日本財団の金はテレビ局に出演料代わりに還付させて...」と語っているから、マスコミ取材に応じた動機のひとつは取材謝礼だったようだ。

そもそもマスコミに登場したりしなければ嘘が発覚することもなかったかもしれない。しかも発覚してからもテレビに堂々と声の出演を行うという、この人のマスコミとの関わり方は、何なのだろうと思ってしまう。

(月刊『創』編集長・篠田博之)

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