トップ> 篠田博之の「週刊誌を読む」 >島田紳助さん突如の引退で芸能界に大きな波紋

篠田博之の「週刊誌を読む」

島田紳助さん突如の引退で芸能界に大きな波紋

 島田紳助引退会見翌日、ノンフィクションライター森功さんのところに問い合わせが殺到したという。『週刊現代』5月7・14日号で今回の事態を予見するような記事を執筆していたからだ。

 見出しは「ガサ入れで見えた『暴力団と芸能界』」。大阪府警の暴力団担当刑事の証言を記事にしたものだ。大阪府警が暴力団と芸能界、特に山口組と吉本興業の関係についてどう捉えているかがわかる内容だ。

 そして両者の関係を象徴する事例として、今回紳助の会見で「Bさん」と紹介された極心連合会会長宅への家宅捜索で、紳助直筆の手紙や写真が見つかったという話をしているのだ。この記事を紳助も吉本興業も否定してきたのだが、今思うと今回の事態へ至る伏線と言うべきだろう。

 『週刊文春』9月1日号によると、紳助が今回、事務所に呼び出されたのは会見二日前の二十一日深夜。そこで幹部から、暴力団との関係を示す携帯メールをつきつけられたという。事務所側は謹慎や休業という処分を考えていたようだが、紳助は引退を決意。会見当日の昼まで話し合いが続いていたという。

 唐突な会見だったため、当初は、近々週刊誌に書かれるのを知って慌てて発表したのではないかという憶測が流れた。しかし、結果はそうでなかった。証拠をされた携帯メールが警察から提示されたものであることは明らかで、全体としてこの騒動を主導したのが警察であることは間違いないだろう。

 昨年の大相撲野球賭博騒動も、本欄で指摘した通り、警察主導だった。警察が、暴力団排除作戦の一環として、世間の注意を喚起するキャンペーンを行っているのだ。そのこと自体は構わない。ただ気になるのは、本来ならこういうキャンペーンは、ジャーナリズムが独自取材によって行うべきではないかということだ。

 部数減による経済的苦境により週刊誌の調査報道型キャンペーンがめっきり減った。いや週刊誌だけでなくメディア全体が似たような状況かもしれない。どこまで事前に想定されていたかわからないが、今回のような騒動が丸ごと警察主導だとしたら、危ういことだと言わざるをえない。

(月刊『創』編集長・篠田博之)


トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: 島田紳助さん突如の引退で芸能界に大きな波紋

このブログ記事に対するトラックバックURL: