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篠田博之の「週刊誌を読む」

官房機密費問題追及で「週刊ポスト」健闘  7月25日掲載

 ジャーナリストの上杉隆さんに会った。『週刊ポスト』で5月28日号から九回にわたって続けている「官房機密費マスコミ汚染問題」キャンペーンについて聞くためだ。官房機密費がマスコミ対策に使われていた実態をこの連載は具体的に暴いている。例えば政治評論家の藤原弘達氏や細川隆一郎氏(ともに故人)には盆暮れに三百万円が渡されていたといった具合だ。
 当初はもっと短い予定だったが、反響が大きく、新たな情報提供者が次々と現われたため、異例の長期連載になっているという。情報提供者とは、官房機密費を配っていた元政府関係者だ。「政治とカネ」をめぐって政治評論家などがテレビできれいごとを述べているのを見て、あんただってもらっていたじゃないか、と怒りがこみあげてくる。それが、彼らが情報提供をしようと思った動機なのだという。
 著名な政治評論家に政権側が盆暮れにお金を届けていたという話は、以前共産党が国会で追及したこともあったし、写真週刊誌で報じられたこともあった。ただ、今回の上杉さんの連載の意義は、それが特定の政治評論家の個人的なスキャンダルではなく、権力とマスコミの構造的問題に根ざしていることを指摘した点だ。
 金を受け取ったとされる政治評論家は、もともと新聞などで政治記者を務めており、実は現役時代から官房機密費を使ったマスコミ対策の恩恵に預かってきた。そういう風土がこの問題の背景にあるというわけだ。
 国家にとって機密費が必要であることは認める。ただし、その使い方については将来公開されるべきだ。そうでないと不正腐敗を防ぐすべがない。上杉さんはそう主張する。
 上杉さんの告発は、大手マスコミでは概ね無視黙殺されているのだが、特筆すべきは、
連載を続ける『週刊ポスト』が読者の支持を受け、部数が伸びているらしいことだ。
 税金がどう使われているか国民が関心を持つのは当然だし、それを追及するのが本来マスコミの役割だ。だからこの問題は、本当は、全ての報道機関が追及すべきことで、上杉さんの孤軍奮闘で終わらせてはいけない問題なのだ。
(月刊『創』編集長・篠田博之)

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