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相撲界は大丈夫なのか? 7月18 日掲載

 『週刊新潮』7月22日号が、元大関・千代大海こと佐ノ山親方が野球賭博に関与していたと暴露。大きな波紋が広がった。
 佐ノ山親方は今回の記事を事実無根と否定。相撲協会特別調査委員会も、記事は信用性を欠くと発表した。
 野球賭博関与者が、相撲協会の調査に対して自己申告した三十一人以外にもいたとなると、この騒動はさらに拡大する。千代大海問題の真偽は重要だ。
 さらにここへ来て、貴乃花親方が六月に、会食の場で暴力団会長と同席していたという報道がなされている。今回の騒動は、相撲協会の改革派とされる貴乃花グループを直撃しているのだが、この親方自身のスキャンダルも大きな意味を持つ。 
 今回の騒動の背景に暴力団対策を進める警察の強い意志があることは明らかだが、角界をどう近代化するかという着地点まで考えているとは思えない。  
 角界改革に取り組むために作られた「独立委員会」のメンバーを見ると、中心は奥島孝雄・前早大総長。早大を管理強化し、セクトを追放したことで知られる人物だ。『週刊朝日』7月23日号で村山弘義・相撲協会理事長代行はこの人選を自賛してこう述べている。「不祥事や反社会勢力との関係に苦しんだのは日本相撲協会だけではありません」。でも早大のケースと角界近代化を同じに考えてよいものなのか。
 事の本質をよく衝いていると思ったのは、同誌の内館牧子さんのコラムだ。相撲をあまり知らない識者が「力士は狭い社会で育ち、外を知らない。ここを改革すべきだ」と言ったりするのを、こう批判しているのだ。
 「狭い社会を改革するには、部屋制度、師弟制度から対戦の組み方まで大きく変えることになる。それは大相撲というスポーツが、まったく別物になることでもある」「古い時代から生きてきた伝統文化は、複雑にからみあっており、『狭い社会』という負の要素を、そこだけポコッと取り外して捨てられるようなものではない」「角界をどう立て直し、どう香りを残し、どう時代に合わせるか。それは本腰を入れて、じっくりとやるべきもの」だ、と。
 相撲界は今後、どうなるのだろうか。
(月刊『創』編集長・篠田博之)
 

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