篠田博之の「週刊誌を読む」

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 十二月四日の朝日新聞朝刊を開いて驚いた人も多かったのではないだろうか。週刊『少年ジャンプ』連載のマンガ「ワンピース」のキャラクターを使った全面広告が合計九ページにもわたって掲載されていたからだ。まるでその日の紙面が「ワンピース」にジャックされたような印象だ。
 新聞は朝日一紙だけだったが、車内吊りなど他の広告媒体をも使って、大々的な『少年ジャンプ』の「ありがとう」キャンペーンが展開されている。
 同誌が十四日発売号で三百万部を突破すること、そして四日発売の「ワンピース」のコミックス第五十六巻が初版二百八十五万部を記録したことをアピールするものだ。初版二百八十五万部というのはコミックス史上最大の部数だという。
 コミック雑誌は一九八〇年代、大手出版社のドル箱だった。集英社発行の『少年ジャンプ』は九〇年代前半には六百万部を超える部数を誇っていた。そして一九九五年をピークに激減、コミック市場は一気に冬の時代に突入した。
 今では集英社に限らず大半のコミック雑誌が赤字に転落した。幸い、その連載をまとめた単行本、いわゆるコミックスが売れているため、利益を確保しているのが現実だ。
 『少年ジャンプ』も部数減が続き、三年ほど前に二百七十五万部まで落ちたのだが、それから徐々に巻き返し、この一年ほどは回復を加速させている。今年の二月頃には通常号が二百八十万部発行だったから、その後かなり部数を伸ばしたことになる。コミック市場全体が低迷している中での健闘は特筆に値すると言ってよい。
 雑誌媒体だけ見れば低落の一途をたどっているコミックだが、ドラマや映画の原作となるなど、コンテンツとしては発展を続けている。「ワンピース」の初版部数がコミックス史上最大となったのはその象徴だろう。
 ちょうど十二月四日に私は集英社を訪れ、コミック部門を統括する鳥嶋和彦常務に話を聞いた。集英社は今、コミック作品のデジタル化を進め、携帯配信などで国際市場に打って出ようとしている。コミック市場は次の十年で紙媒体の枠を超え、大きな変貌を遂げることになりそうだ。

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