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篠田博之の「週刊誌を読む」

マスコミ「のりピー特需」 道徳的に断罪 違和感

九月十七日、酒井法子被告の会見に行ってきた。五百人と言われる報道陣のテンションは異様に高かった。

 一カ月以上も続いた「のりピー劇場」のひとつの山場だった。週刊誌もワイドショーもスポーツ紙もこの間、「のりピー」特需と言われるくらい売り上げを伸ばしたという。

その恩恵に預かろうと洪水のような報道を行いながら、報道の中では酒井被告を道徳的に断罪してみせるというメディアのありように「何だかなあ」という思いを禁じえない。

会見の最後に弁護士が「こうして会見に応じたのだからこれ以降の無理な追跡取材はやめてほしい」と力説していた。敢えて会見を開いたのはそれを言うためだったのだろう。でもその部分はデスクにほとんど伝わらないのが実態だ。

薬物と政権交代が報道の二大テーマという状況が続いている。民主党が政権に就いたばかりだから、あら探しはやめてしばらく見守るべきだという意見もあるが、そういう配慮にお構いなしなのが、ある意味では週刊誌ジャーリズムのいいところなのかもしれない。

『週刊新潮』と『週刊文春』は米国にまで飛んで鳩山総理夫人の元夫を引っ張り出し、

四十年近く前の「略奪婚」について語らせている。記事の内容よりも週刊誌のその執念に感心してしまう。

本気か冗談かわからないほどエスカレートしているのが田中美絵子議員の過去の暴露。中味は大した話でないのだが、とにかくタイトルがすごい。「田中美絵子『乳房揉みしだかれて』の撮影現場」(週刊ポスト)。

おかしいのは『フラッシュ』で、「まだ明かされていない経歴があった」と書いているから何かと思ったら、昔、大川興業に所属していたというのだ。お笑い集団所属を「隠された過去」とは言わないでしょ、フツー。

政権交代関連では、『アエラ』9月28日号が各新聞の論調の分析と、渡辺恒雄読売会長インタビューを載せていたのが面白かった。「実はね、僕はもう自民党政権は終わりだと見ていたから、去年から、夜、飯食うのもほとんど民主党の人なんだ」。権力とメディアの関係についてこんなにわかりやすくあけすけに語る人も珍しい。

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