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篠田博之の「週刊誌を読む」

足利事件、責任追及を マスコミ報道の検証必要

十七年半も無実の罪で囚われていた足利事件の菅谷利和さんのケースは本当に悲惨だ。

 週刊誌各誌がこの問題を取り上げているなかで『週刊現代』6月27日号「足利事件冤罪を作った『警察官・検事・裁判官』の実名」が出色だ。当時の捜査官や検事、裁判官らの実名を太字で掲げ、全員に直撃取材を敢行。「ノーコメント」と逃げ回る様子をそのまま記事にしているのだ。   

こういう個人の責任追及はもっと行われてよいと思う。官僚もそうだが、警察官や裁判官など国家権力を行使する人間の責任の重さはもっと自覚されてしかるべきだ。

責任を省みるという意味では、事件当時のマスコミ報道の検証もせねばならない。「当局発表そのままに菅谷さんを『有罪報道』してきたのもメディアなのだが、そうした過去を省みる姿勢は、今のところ皆無である」と、新聞・TVを厳しく批判したのは『週刊文春』6月18日号だ。じゃあ週刊誌はどうなの?と突っ込みを入れたい気にもなるが、これ自体は正論だ。

『週刊文春』といえば、二週にわたって報じられた日経新聞の劇画連載中止事件が興味深い。「日経新聞初の劇画連載」と五月三十日に鳴り物入りでスタートした小池一夫氏の劇画連載が、何と一回で中止となった。実は六月四日発売の『週刊文春』6月11日号が「日経に劇画新連載小池一夫 第二の小室で訴えられる」という記事を掲載、その日に連載中止が発表されたのだった。

『週刊文春』の記事は、劇画界の重鎮・小池氏が、自分の著作物の独占的使用権をある実業家に数億円で譲ったのに、それと別に日経の新連載を始めたとして、これを「権利の二重売買」であり、昨年の小室哲哉氏の著作権二重譲渡と同じだと報じたものだ。

この記事が日経の連載中止のきっかけになったのは明らかだが、『週刊文春』はさらに翌週の6月18日号で「小誌スクープで連載中止」と銘打ち、続報を掲載している。

気になるのは、連載中止について、日経新聞が読者に詳しい説明を行っていないことだ。説明責任というのは、マスメディアにとって極めて大事なことだと思うのだが。

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