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篠田博之の「週刊誌を読む」

言論の自由に伴う責任 問われる『週刊新潮』の対応

『週刊新潮』の朝日新聞襲撃犯虚報問題はまだ終わっていない。
 四月上旬に多くのマスコミと接触した後、所在不明になっていた自称襲撃犯の島村征憲氏だが、『週刊朝日』5月1日号によると、埼玉県蕨市で保護されているという。
「4月12日に『軽い脳梗塞』を訴え、都内の病院に担ぎ込まれたが、その2日後、『詐病の疑いがある』と退院させられ、行き場所がなくなって蕨市役所を訪ねてきた」。なぜ蕨市かといえば、そこのネットカフェが住民票の住所になっているからという。
 この島村氏、『サンデー毎日』4月26日号で取材に答えてこう語っていた。「新潮にのせられた俺もバカだけど、乗せたやつはもっと許せない」。手記を捏造したのは『週刊新潮』で、自分は被害者だというのだ。ネタ元と雑誌側が互いに「自分は騙された」と言い合うという、とんでもない状況だ。

 業界の関心は、『週刊新潮』ないし新潮社が、このままこの事件に幕引きをしてしまうのか、あるいは第三者的検証といった対応をとるのか、だ。
 おりしも日本雑誌協会は、四月二十日付で「一連の『名誉毀損判決』に対する私たちの見解」を発表。四千万円を超える賠償金など名誉毀損訴訟でのこの間の判決を「言論抑圧ともとれる」と、裁判所を批判した。
 この「見解」は今後、雑協加盟各週刊誌が掲載していく予定だ。こういう統一キャンペーンは、個人情報保護法反対運動以来だという。
 ただ、言論の自由を主張するなら、言論の責任も果たさねばならない。キャンペーンに支持を求めるには、『週刊新潮』虚報事件にも読者が納得するような対応が必要だ。これまで雑協の中では「我が道を行く」傾向が強かった新潮社だが、果たしてどうするのか。週刊誌全体に逆風が吹き荒れる中での大事な局面だ。 

 さて『週刊朝日』増刊として発刊された『朝日ジャーナル』復刊号が予想外の売れ行きで、増刷がかかったという。雑誌ジャーナリズムが危機的状況にある中で、何とかそれを突破してほしいという期待も高まっていることを、それは示しているように思う。

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