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篠田博之の「週刊誌を読む」

ひどすぎる犯罪報道 知的障害の容疑者ほんろう

 昨年9月21日に千葉県東金市で女児が殺され、12月6日に知的障害者の男性が逮捕された事件について再度書いておきたい。

 がんで入院していた容疑者の父親が12月30日に死去、1月5日に葬儀が行われた。容疑者は特別許可を得て葬儀に参列。逮捕後初めて対面した母親に抱きついて号泣した。
 実はこの一月、私はその母親と会った。息子が突然、殺人容疑で逮捕され、続いて夫を失うという事態に、精神的に落ち込んでいると彼女は語った。

 事件発生直後から容疑者は捜査線上に浮上したようで、マスコミの「見込み取材」の標的になった。逮捕直後に洪水のように流された彼の映像には、TBSが撮影していたカラオケで熱唱する姿があった。撮影されたのは9月27日だった。
 その放送に衝撃を受けた副島洋明弁護人は、容疑者に事情を聞いてさらに驚愕した。カラオケに行ったのは記者が誘ったからで、料金も記者が払ったというのだった。
 実はカラオケ現場にはTBSだけでなく『サンデー毎日』の記者もおり、容疑者を誘ったのはその記者だった。取材目的で「遊びに行こうよ」と誘い、容疑者が「カラオケがいいな」と答えたのだという。
 『サンデー毎日』は12月21日号で「事件直後、容疑者は『愛の水中花』を大熱唱していた!」と、カラオケの写真入りで報道した。記事中で「幼い命を奪った直後とは思えない大胆な行動」「何とも無神経な男である」と断罪している。リードには「異常なまでの行動」と書いていた。

 自ら誘っておいて許せない、と弁護団は憤るのだが、話はそれだけで終わらない。TBSが放送した容疑者のカラオケ映像はマスコミ内でも物議をかもし、『週刊ポスト』12月26日号と『FLASH』12月30日号がTBS批判の記事を掲載した。記事中に副島弁護士のコメントが掲載されているのだが、当人に聞くと、前者は電話取材はあったものの発売前に内容の確認もなくひどい記事だし、後者は取材も受けてないという。
 今のマスコミの犯罪報道はひどすぎるのではないか、と副島弁護士は言う。その指摘を我々はどう受け止めたらよいのだろうか。

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