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篠田博之の「週刊誌を読む」

信憑性証明を期待 「朝日新聞襲撃犯」が手記

 1987年に起きた朝日新聞阪神支局襲撃事件は、言論・報道に携わる者なら、いまだに重たい気分にならざるをえない事件だ。
 その事件から22年たって突然、1月29日発売の『週刊新潮』2月5日号が「実名告白手記 私は朝日新聞阪神支局を襲撃した!」なる記事をぶちあげた。その見出しは車内吊りの半分を占める大きな扱いだ。

 手記で実行犯を名乗る男は今年刑務所を出所したばかりで、以前は右翼団体を主宰していた。犯行の動機は金をもらって依頼されたためという。事件の時に見張り役をさせた若い男が自殺したのを機に事件の真相を語ろうと思いついた。もちろん時効が成立していることを知った上でだ。

 男はまず2005年頃、朝日新聞社に手紙を送り、網走刑務所を訪れた記者二人と接触した。しかし、記者が激高し、大した話をしないままに終わった。そして今度は『週刊新潮』に接触。昨年一年間、手紙のやりとりを行ってきたという。

 今回の連載手記第一回は、告白を思いついた理由や、事件当日、支局に突入するまでの経緯を語ったものだ。
 もし本当なら大変なスクープだが、今業界の関心事は、果たしてこの人物が本当に犯人なのかどうかだ。『週刊新潮』も掲載するにあたっては当然、裏付け取材を行ったはずだが、手記の信憑性がどう立証されたのかという説明は、第一回にはほとんど書かれていない。

 朝日新聞は発売当日の29日に「本社阪神支局『私が襲撃』週刊新潮に手記 事実と相違も」という記事を掲載した。「週刊新潮から、男性の『証言』が事実と合致しているか問い合わせを受けたが、面会内容や取材結果から『本事件の客観的事実と明らかに異なる点が多数ある』と回答している」。また男と刑務所で会った記者が「喧嘩腰で怒鳴る」と書かれた部分については「そうした事実はない」とした。間接的にだが、『週刊新潮』記事の信憑性に疑問を投げた格好だ。31日発行の夕刊フジによると、警察関係者も「一様に懐疑的だ」という。

 ただし、第二回以降を読まずに決め付けるのは早計だ。ここは次回以降に期待する、と書いておこう。

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