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篠田博之の「週刊誌を読む」

右翼街宣車が何と『週刊新潮』へ

 意外な展開だ。『週刊新潮』10月2日号「『監督逮捕』でやっぱり上映中止になった『天皇伝説』」だ。天皇タブーを扱った映画「天皇伝説」の渡辺文樹監督が九月十一日に逮捕された話は前々回書いた。十七日に予定されていた上映は中止になったのだが、今回の記事はその後日談である。

 十日発売の『週刊新潮』が「『不倫の子』『替え玉』天皇家のタブーに挑んだ超過激映画『天皇伝説』」と、この映画について報道。そのまま上映されていれば右翼が押しかけ大騒ぎになったところだが、渡辺監督はその翌朝、公安に逮捕されてしまった。

 ところが今回の『週刊新潮』を読んで驚いた。十七日の上映が中止になって抗議の行く先を失った右翼が、何と当日、新潮社に街宣車五~六台を連ねて押しかけたというのだ。記事によると、右翼側の言い分はこうだ。渡辺監督の映画は「戦後最大の皇室冒涜」だが、『週刊新潮』は「彼の言い分を掲載」。その結果「皇室の方々への侮辱の片棒を担いでいるという意味で、渡辺と同罪なのです」。

 それに対して同誌は記事でこう反論している。「本誌は『天皇伝説』を無批判に報じたわけではない。ストーリーを紹介した上で、監督の主張がいかに荒唐無稽かを解説している」

 皇室のきわどい話を紹介しながら、それはあくまでも第三者が言っていることで自分たちはけしからんと思っていると憤慨してみせ、結果的にその第三者に右翼をけしかけるというのが『週刊新潮』の伝統的な皇室報道だ。時にはその批判されるべき第三者に「不敬」という悪罵を投げつけたりする。  

 その悪罵のスパイスが足りないと、右翼の抗議はその「皇室冒涜」を誌面に掲載した自分たちにきかねないという危険性(掲載責任)と隣合わせなのだ。今回の展開は『週刊新潮』にとっても予想外だったに違いない。

 今回の記事には、公安関係者の匿名コメントも載っていて、これが実に興味深い。右翼が上映会場を襲撃する可能性があるので、自分たちは微罪で監督を別件逮捕するしかないのだと、本音をあけすけに語っているのだ。

 渡辺監督はめげることなく、この十月にも横浜などで上映を計画している。騒動はまだまだ続きそうだ。

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