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篠田博之の「週刊誌を読む」

相撲部屋の〝家族〟崩壊                                                     大麻容疑で若ノ鵬逮捕

 相撲部屋とは奇妙な空間だ。親方夫人が母親代わり。部屋が擬似家族を構成するのだ。その相撲部屋で力士が大麻を吸っていたという事件は、擬似家族のシステムが崩壊しつつあることの象徴だろう。

 八月十八日のロシア人力士・若ノ鵬逮捕事件を報じた『フライデー』9月5日号で、ある相撲記者が相撲部屋の現状をこう説明している。「部屋の米ビツ(カネの稼ぎ手)を入門させたい親方衆と、日本でカネを稼ぎたいという海外の若者たちの思惑が悪い形で一致して、彼らの社会人教育はそっちのけです」

 薬物、特に大麻がどのくらい日本社会に浸透しているかについては『SPA!』8月26日号が特集を組んでいる。八月七日に警察庁が発表したデータによると、今年は「押収量だけでなく、検挙者数、摘発件数も過去最悪を更新する可能性が高い」。覚せい剤が品薄で価格が高騰し、需要が大麻にシフトしているのだという。大麻を自ら違法栽培するケースも増えているという。

 さて若ノ鵬逮捕の四日前、八月十四日には、テレビ番組製作会社社員二人が大麻所持で逮捕されていた事実が報道された。逮捕されたのは七月七日と二十九日。それがなぜ八月半ばに報道されたかというと、『週刊ポスト』が逮捕情報をキャッチし、事実確認の取材を行ったためらしい。

 同誌が締切直前に確認取材を行った相手はテレビ朝日だった。二人の所属していた製作会社はテレ朝と関わりが深く、「報道ステーション」の仕事にも関わっていたのだという。

『週刊ポスト』は十八日発売の8月29日号で「『報ステ』スタッフの大麻逮捕でも古舘伊知郎『だんまり1か月』」と題して報道を行った。同誌が問題にしたのは、テレ朝は逮捕を七月中に知りながら報道せずに隠していたのではないか、ということだ。同誌の取材に対してテレ朝は「現在も捜査中との認識をしており、詳細なコメントは差し控えたい」と回答したという。

 メディア関係者の薬物汚染は、ここ十年ほどで拡大している。それは相撲部屋の擬似家族制度が崩壊したのと同様、巨大化したメディア界でも何かが崩れつつあることの反映だろう。深刻な問題だ。