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篠田博之の「週刊誌を読む」

薬物依存の克服証明を                                                     田代さん出所...厳しい今後

 『アサヒ芸能』7月10日号が「あの田代まさし『80キロ激太り』の獄中生活!」という記事を大きく掲載している。田代さんと同じ刑務所を四月に出所した人物の証言を紹介したものだ。この七月に出所するのでは、との見方も提示している。

 ディティールがよく書けた悪くない記事だが、残念ながら田代さんは既に六月二十六日に出所している。ここで公表するのが初めてだから『アサ芸』が知らなかったのも無理はない。でも見出しの「80キロ激太り」は誤報。本人も記事を読んで苦笑していたよ(笑)。

 田代さんが二〇〇四年秋に覚せい剤所持で逮捕された時『創』に連載を執筆していた縁で、私は彼の裁判に証人出廷するなど深く関わった。〇五年に三年半の実刑が確定。先頃満期出所したのだ。

 私は彼が出所した夜に話を聞いたのだが(『創』8月号に掲載)、刑務所生活は長く単調で「地獄の日々だった」という。冷暖房はもちろんなく、冬は寒さで眠れない夜を過ごしたともいう。 一時期芸能界で一世を風靡した過去の栄華があるだけに、辛い体験だったろうと思う。

 ちょっと驚いたのは、仮釈放が検討されていた時期には、保護観察司がつく予定で、田代さんの受け入れ態勢についてあれこれ協議していたらしいのだが、結局満期出所となったら何のフォローもないことだ。

 刑務所を出る時、職員らが「またテレビで活躍する日を祈っているよ」と激励してくれたという。でも、現実には芸能界どころか普通の社会生活への復帰さえ大変だ。薬物依存者に対して、日本社会には、ただ処罰するだけでケアするという発想がない。

 田代さんは事件の後、離婚し、家族も失った。これからの人生は大変なものになるだろう。しかし、何とか頑張って、薬物依存からの脱却が可能だということを証明してほしい。

 田代さんには、十六日に『創』主催のトークライブに出演し、出所後の心情を語ってもらうことにした。まだ体調も回復せず、シャバの生活に慣れていないが、よほど体調が悪くない限り、自分の言葉で社会に語りかけてほしいと思っている。