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篠田博之の「週刊誌を読む」

事後検証 公表が必要                                                     無差別殺傷での救命活動

 死者七名、負傷者十名という惨劇となった秋葉原無差別殺傷事件だが、果たして救急活動は適切に行われていたのか。それを『週刊文春』が連載記事で検証している。第一弾の7月24日号の見出しは「武藤舞さんは『見殺し』にされた!」というショッキングなものだ。

 現場ではトリアージ(選別)という措置が施され、被害者に赤色(最優先治療群)、黄色(非緊急治療群)などのタグがつけられたのだが、武藤さんは最初黄タグが付けられ、途中で赤タグに変更された。現場では相当混乱があったようで、記事は「もし、現場から緊急搬送されていたら、武藤さんはあと二十五分は早く病院に運べたのではないか」と結論づけている。

 第二弾の7月31日号は「『秋葉原通り魔』遺族の慟哭『ウチの子はなぜ70分も路上に放置されたのか』」というさらにショッキングな見出しだ。トリアージによって黒タグ(すでに死亡もしくは救命不能)を付けられた藤野和倫さんの母親の話を紹介したものだ。

 秋葉原周辺は「病院銀座」と呼ばれるほど病院が多い地域で、適切な救急活動が行われていれば、もっと助かった人がいたのではないか。記事はそう指摘して、今回の事態を「救急崩壊」と呼んでいる。

 医学的知識が乏しい私には、この記事の妥当性を判断するのは難しいのだが、少なくともこういう検証がなされるべきだということはわかる。同誌の取材に対して東京消防庁は「現在、事後検証を行っている。結果を公表するか未定」と答えたそうだが、同誌によると「今まで事後検証の結果が公表された事はない」という。

「秋葉原事件は、あまりに貧困な救急の現実を白日のもとに晒してしまった」。同誌はそう結論づける。救急隊も最善を尽くしたのだと思いたい気持ちはあるが、確かに検証は必要だし、その結果が公表されてこそ改善がなされるのだと思う。同誌のレポートはさらに続くそうで期待したい。

『女性セブン』7月31日・8月7日号掲載の「加害者家族がはいり込んだ暗く長い迷路」も考えさせる記事だ。犯罪を犯した加害者の家族に焦点をあてたもので、これも大事な視点だと思う。