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篠田博之の「週刊誌を読む」

「握手」したライバル誌                                                     サンデー、マガジンが「コラボ」

 何やらイヤーな動きになってきた。前回本欄で取り上げた映画「靖国」をめぐる騒動のことだ。 

 新宿の映画館が上映中止を決めたのである。他の映画館は予定通り上映するというが、見えない影に怯えてこういう自粛が広がるのが一番怖い。 

 昨年来行われてきた試写会に足を運んだ人なら多くが、あれが「反日映画」だなどという意見には首をひねるはずだ。そんなことを言っている人の方が偏っているとしか思えないのだが、偏っている人も自分の意見を表明する自由はある。みんなが映画を見た上で意見を闘わせればよいのだ。 

 一番よくないのは、一部の人たちの声高な主張によって、映画の上映自体ができなくなってしまうことだ。そんなことにならないよう関係者のふんばりに期待したい。

 話題はがらっと変わるが、三月十八日、『少年サンデー』『少年マガジン』五十周年キャンペーンの発表会見に行ってきた。藤子不二雄A、ちばてつや、あだち充、高橋留美子といった両誌の巨匠マンガ家が顔を揃え、挨拶した。翌十九日発売の両誌の表紙は「名探偵コナン」と「はじめの一歩」という人気マンガのキャラクターが飾っているのだが、二誌を並べると二人のキャラクターが握手をしている構図になるという仕掛けが施されている。これから約一年間、両誌は様々なコラボ企画を展開するという。 

 両誌の創刊は一九五九年。五六年に出版系週刊誌の草分け『週刊新潮』が創刊され、その成功を見て大手出版社が続々と週刊誌を創刊するのだが、漫画週刊誌もその中で産声を上げたのだった。 

 両誌の五十歳の誕生日は来年の三月十七日。なぜ創刊が三月という半端な時期かというと、当初は五月五日の子どもの日に創刊予定だったが、互いにライバルより早く創刊しようと牽制しあった結果、じりじりと創刊日が早まったのだという。 

 しかも創刊前夜、小学館の当時の社長は自ら印刷所に泊まり込んで陣頭指揮をとり、『少年マガジン』創刊号が定価四十円で印刷に入ったという知らせを受けて『少年サンデー』の定価を三十円に決めたのだという。そこまで熾烈な争いを繰り広げたのは、週刊漫画誌という業界初の試みにそれぞれ社運がかかっていたからだろう。

 その後十年を経て参入した『少年ジャンプ』に首位を奪われるものの、『少年サンデー』『少年マガジン』が、日本のマンガ文化に大きく貢献したのは確かである。