トップ> 篠田博之の「週刊誌を読む」 >長官苦言「陛下の意向」?                                                     家族観と結びつけ論争

篠田博之の「週刊誌を読む」

長官苦言「陛下の意向」?                                                     家族観と結びつけ論争

 羽毛田信吾宮内庁長官が二月十三日の定例会見で、皇太子に敢えて苦言を呈した事件を週刊誌が大々的に取り上げ、騒動になっている。『週刊文春』『週刊新潮』は何ページもの大特集で、女性週刊誌も大きな扱いだ。わざわざ会見で発言したというのは、マスコミの反応を見越したものだろうが、予想を超える反響だったかもしれない。  

 宮内庁長官の発言は、皇太子一家が天皇夫妻のもとを訪れる機会が少ないことに苦言を呈したものだが、二十三日の誕生日前の会見で皇太子は、この件について「プライベートな事柄なので発言は差し控えたい」と答えた。確かに考えてみればそっちの方が正論だ。親子関係がうまくいってないのを見かねたとしても、それは直接皇太子に言うべきことだろう。

 なぜわざわざ親子間の問題に第三者が苦言を、それも敢えてマスコミに向けて放ったのか。誰もが感じる疑問だろうが、例えば『週刊文春』2月28日号の見出しはこうだ。「『愛子さまに会えない』天皇が長官に託した皇太子への怒り」。背後に天皇の意向があるのではないかというのだ。

 しかもこの記事によると、長官は年末から頻繁に皇太子と会っていたという。皇室ジャーナリストのコメントによると、「その間、何度か愛子さまの御参内についての話も出た。そのたびに皇太子は『努力したい』とは仰るのだそうですが、長官が『陛下も大変心配されています』と申し上げても、陛下のご心労を重く受け止めていただけなかったようなのです」。つまり「長官にとっては手応えを感じられない面談が重なり」「やむを得ず発表した」というのだ。

 『週刊文春』は「長官発言 私はこう考える」という女性識者四人のコメントも掲載しているのだが、精神科医・香山リカさんの意見はズバリ「雅子さまのご病気への無理解だ」というもの。一方、ジャーナリストの櫻井よしこさんは、長官発言支持で、皇太子夫妻は自覚が足りないと主張している。

 こんなふうに議論が沸騰するのは、いま皇室のあり方を論じることが、その人の国家観や家族観と結びつくからだ。例えば『AERA』2月25日号は「雅子さま それでも好き」と題して、雅子妃を応援する女性の立場からの特集を掲載している。今回の長官の苦言騒動についても「さらに狭まる『東宮包囲網』」という見出しで、皇太子夫妻に好意的だ。