トップ> 篠田博之の「週刊誌を読む」 >ギョーザ事件で認識新た                                                     食生活 中国依存の現実

篠田博之の「週刊誌を読む」

ギョーザ事件で認識新た                                                     食生活 中国依存の現実

 今でもあれは何だったのかわからないのだが、二月十四日にタレントの田代まさしさんが出所するという情報が芸能マスコミを駆けめぐり、私のところへたくさんの問い合わせがあった。私が身元引受人と誤解している向きもあったが、これは恐らく三年前の裁判で私が証人台に立ち、彼の更生のために協力したいと証言したためだろう。

 田代さんは、私が編集する『創』に手記を連載している過程で覚醒剤所持で逮捕され、服役中も年賀状を送ってくれていた。今年の年賀状には、出所の決意が書かれていた。薬物依存は更生が本当に難しい。田代さんは事件を機に夫婦は離別、家族が崩壊してしまった。出所後、誰がサポートしていくかが問題だ。この出所の話、ネットでは既に話題沸騰で、週刊誌も取材に動いているので、近々本欄で論評する機会があると思う。    

 さて本題。このところ週刊誌で一番大きな話題はやはり「毒ギョーザ」事件だ。「猛毒を混入した『過激分子』は誰だ!」(サンデー毎日)「死刑確実!毒入りギョーザ事件 中国当局『元従業員』逮捕のXデー」(週刊文春)など、ハデな見出しが躍っている。    

 今回皆が認識を新たにしたのは、我々の食生活に予想をはるかに超えて「中国産」が入りこんでいたことだろう。例えば『週刊現代』2月23日号が「中国産食品137社『外食産業』全緊急調査」という特集を掲げているが、居酒屋の食材から宅配ピザ、牛丼屋の玉ネギなど、ありとあらゆるものが中国産だという。

 『週刊朝日』2月22日号「日本の『食』を壊したのは誰だ!」によると「コシヒカリ」「あきたこまち」などの銘柄米も、安い中国産が業務用に出回っているという。今回の騒動で、中国産食品は危険なので日本食を見直そうという論調が見られるが、コメさえも実は中国産だったわけだ。

 これはまさに日本の文化に関わる問題だ。食生活の中に中国依存がこんなに進んでしまっている現実に、我々はこれまで無頓着だった。恐らくそれは、イデオロギー対立があるために、中国産という表示を目立たせないようにする工夫が働いていたためなのだろう。

 少し気になるのは今回の事件をめぐる週刊誌などの論調が、当然ながら中国を非難するものが多く、騒動が排外主義を煽る方向に向かいかねないことだ。大事な問題だからこそ、排外主義に陥ることなくきちんとした議論がなされてほしい。