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篠田博之の「週刊誌を読む」

「羊水」発言騒動の波紋                                                     メディアの影響力を痛感

 あれよあれよという間に大騒動になったことに驚いた人も多かったろう。歌手・倖田来未の「羊水」発言騒動である。

 発端は三十日未明のニッポン放送深夜番組での彼女の発言だった。『女性セブン』2月21日号から引用しよう。「うちのマネージャーが結婚しまして、で、まあ、いつ子供つくんの? みたいな話とかしててね、やっぱ35(才)くらい回ると、あのー、お母さんの羊水が腐ってくるんですね(笑い)。いや、ホント。たとえば汚れてくるんですよね。だから、できれば35までに子供をつくってほしいなあって話をね、してたんですけど」

 本人はもちろんギャグのつもりで言ったのだろう。しかし騒動が拡大するにつれ、冗談ではすまない事態になっていく。最初に反応したのはネットの掲示板だった。『女性セブン』によると、三日後には書き込みが五万件を超えたという。二月一日には倖田がホームページで「皆様に不快な思いをさせてしまったことを心より深くお詫び申し上げます」と謝罪した。 

 その後二日に予定されていたTOKYO FM の生放送番組を降板。四日にはキリンビールの缶チューハイ「氷結」のCMが放送中止になり、他のスポンサーもホームページから彼女の画像を削除。七日予定だったテレビ朝日「徹子の部屋」の放送も延期となった。  

 そして本人が、七日放送のフジテレビ「スーパーニュース」に出演、涙ながらに謝罪した。ニッポン放送もその夜「放送責任を痛感」していると放送で謝罪。そうした経緯が他局でも報じられ、大騒動となった。その間週刊誌では『女性セブン』が表紙に倖田の写真を入れて大きく報じたのを始め、『AERA』など各誌が取り上げた。

 倖田はテレビでの謝罪で「思っていた以上の反響でびっくりしました」「普段どれだけ自分が軽い気持ちで言葉を電波に載せて話してしまっていたのかと改めて感じました」などと述べた。

 「羊水が腐る」という発言は、それだけ取り出せば弁解の余地がないものだ。バラエティ番組ではもっとひどい発言もなされているじゃないか、という人もいようが、ビートたけしは『週刊ポスト』2月22日号で今回の騒動に触れ、自分たちお笑い芸人の毒舌ギャグは「地雷を踏まずに怒られない寸前のギリギリのところで逃げちゃう話芸」なのだと語っている。メディアの影響力を自覚せず不用意にやってはいけないというわけだ。