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篠田博之の「週刊誌を読む」

迫真の四女「父は詐病」                                                     麻原元教祖、真相聞けぬまま

 『週刊新潮』にしては突っ込みがいまひとつ、と前回書いたオウム麻原四女手記の続編が同誌2月7日号に掲載された。今回はなかなか衝撃的だ。題して「獄中の父が『詐病』と悟った瞬間」。

 麻原元教祖については拘禁状態の中で精神障害に陥ったという見方と、死刑を免れるためにそう装っているのだという見方があり、精神科医も巻き込んで議論が行われてきた。今回は実の娘が詐病説を唱えたわけだ。

 彼女がその根拠としたのは、昨年三月に父に接見した時の状況だ。会話が成立せず、彼女が一方的に話しかけていた時、突然、父が彼女の名前を呼んだというのだ。

 「看守は父から見れば右側にいました。父はその看守に見えないように、右手で自分の口を覆い隠し、笑い声でごまかすように、私の名を呼んだのです。それは、看守には聞こえないが、私にだけ聞こえるような、空気だけを振動させる感じの声でした。おそらく、口の動きが見えていなければ、私にもわからなかったでしょう。そのぐらい微妙な呼び方でした。父は私をはっきりと認識している。その時、私は、『父はやっぱり詐病だったんだ』と、悟ったのです」

 詐病説の決定的な証拠とは言えないが、肉親の言葉だけにリアリティはある。教団関係者の間では「父を精神病に仕立て、医療刑務所から脱出させる」といったことがいまだに考えられているという。

 手記の前半には、二〇〇五年夏に、麻原元教祖の娘三人が接見した時の話も書かれている。何と父親が面会室で娘の前で性器を露出させ自慰行為を始め、看守が「やめなさい」と注意したのに三回も繰り返したという。実はこの話は精神鑑定書などにも書かれ、話題になったエピソードだ。

 三人の娘は唖然とし、動揺したと、今回の手記に書かれているのだが、詐病説に立つ四女はこう記している.。「私は当初から、これを詐病ではないかと疑っていました。だから、逆に、ここまで恥ずかしいことができる父を大したものだ、と思っていたのです」。確かにもし詐病だとしたら、麻原という男の凄さを示すエピソードだ。

 麻原元教祖は既に死刑が確定しており、詐病かどうかの議論がその処遇に影響を与えることはないだろう。ただ、日本中を震撼させたオウム事件の首謀者が真相を語らないまま決着がつけられてしまうことが残念だ。