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篠田博之の「週刊誌を読む」

皇室報道「事実」が問題に                                                     宮内庁、「女性セブン」に抗議                                                                                                                                                             

 皇室報道をめぐって年末にちょっと話題になった出来事がある。宮内庁が十二月二十七、ホームページに「皇室関連報道に関する宮内庁の見解」というコーナーを開設したのだ。開設の趣旨はこんな書き出しだ。「最近の報道の中には、事実と異なる記事や誤った事実を前提にして書かれた記事が多々見られます」 

 そこで、どの記事がどう違っているのか、具体的に指摘することにしたというのだ。開設と同時に指摘第一号になったのは『女性セブン』1月3・10日号の「美智子さま 皇太子ご夫妻お呼びだし 12月1日の重大宣告 」という記事だった。 

 第一号とあってどうしても目立つから『女性セブン』にとっては不幸なタイミングだといえる。記事内容は、十二月一日に皇太子夫妻が天皇家を訪れた際に皇后が二人を別室に呼んで公務について提言を行ったというものだ。だが宮内庁によれば、その訪問の際に皇太子夫妻が別室に呼ばれた事実そのものがないという。その指摘とともに、宮内庁は『女性セブン』に抗議したことも明らかにした。

 今回の措置の背景には雅子妃の適応障害問題以来、週刊誌でほぼ毎号のように皇室が取り上げられ、事実と異なる報道も見られるという事情があるようだ。さる十二月二十日、誕生日を前にした天皇の会見でも、皇太子一家のオランダ静養について天皇が苦言を呈したという報道に対して「私の意図したところと全く違っています」と天皇自身が語る一幕もあった。 

 宮内庁の措置が皇室報道にプレッシャーをかける怖れはもちろんあるし、賛否分かれるところかもしれない。ただ私自身は悪くない対応だと思う。かつて昭和天皇の時代には、事実であろうとなかろうと皇室について踏み込んだ報道を行うこと自体に右翼が「不敬だ」と攻撃を加える風潮があった。いわゆる「菊のタブー」である。

 それに対して今回問題になっているのは、報道が事実かどうかということだ。『女性セブン』側が納得しなければ自らの誌面で反論を行うこともできる。もちろん一方で「菊のカーテン」と言われる宮内庁の秘密主義は批判されるべきで、情報開示に応じないで報道の誤りだけ非難するという対応では本末転倒だという指摘もしておきたい。 

 女性週刊誌にとって皇室ネタがなぜそれほどうけるのかも含め、この問題、機会があればもう少し言及してみたい。