トップ> 篠田博之の「週刊誌を読む」 >銃規制の実態に警鐘

篠田博之の「週刊誌を読む」

銃規制の実態に警鐘

 新年ということで明る い話題を取り上げたいところだが、なかなかそうもいかない。時代の閉塞感がますます強まっているように感じる。
 気になるのは十二月十四日に起きた佐世保市の銃乱射事件だ。無差別乱射事件が海外で起こるつど、日本では銃規制がなされているからと我々は自らを安心させてきたのだが、もはやそうもいっていられないらしい。これは日本の犯罪史のエポックメイクな事件になるかもしれない。
 『FLASH』1月8・15日号で地元住民が容疑者の以前からの奇妙な振る舞いについてこう証言している。「数年前に『トイレを貸してくれ』と2度ほどうちに来た。1度めは夜の11時。2度目は午前2時ごろ。彼の母親から『息子が被害妄想的になって、幻聴なども出ている』と聞いていましたから、1度めは無視し、2度めは母親を呼んで引き取ってもらいました。その後、銃を持っていると聞き、これは危ないと思って交番に抗議しましたが、まともに取り合ってくれなかった」 事件は起こるべくして起きたというわけだ。銃規制の実態が実はかなりゆるいという現実については『週刊プレイボーイ』1月7・14日号「ユルユルの管理実態、『となりの散弾銃』に気をつけろ!」が警告を発している。この事件、きちんと解明しないと、将来に大きな禍根を残すと思う。 さて「格差社会」や「ワーキングプア」についても『SPA!』1月1・8日号「下流の未来」を始め、多くの雑誌が特集を組んでいる。『読売ウイークリー』1月6・13日号「40歳の年収」によると、景気回復といっても年収が上がっているのは大企業社員のみ。多くのサラリーマンは年収が下がっているという。 新たな現象として指摘されているのは「高学歴ワーキングプア」。『SAPIO』の特集「『貧困難民』大量発生」によると、大学院に進学する人が急増しているが、博士課程修了者の就職率は五〇%。半数がコンビニなどのバイトで食いつないでいるという。また弁護士や歯科医など、昔は手堅いと言われた職業も今は供給過剰で食えない人が多い。一時期流行した臨床心理士など、いまや「食べられない資格」の代表なのだという。
 日本社会は明らかに変わりつつある。問題はどの方向へ向かっているか行く先が見えないことだ。政治が信頼を失っていることも、不安を増大させている要因だろう。
(月刊『創』編集長・篠田博之)

トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: 銃規制の実態に警鐘

このブログ記事に対するトラックバックURL: