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篠田博之の「週刊誌を読む」

安倍辞任の兆候キャッチ/ 取材攻勢が追い詰めた?

十二日の安倍首相の突 然の辞任には驚いた。翌十三日発売の週刊誌の編集部も仰天したに違いない。『週刊新潮』など、その9月20日号の大見出しは「安倍内閣総辞職は11月10日」。安倍辞任の話題で持ちきりの発売当日、この見出しがデカデカと車内吊りに掲げられるという間の悪さに、同誌関係者は身の縮む思いだったのではないか。  同じ十三日発売の『週刊文春』9月20日号の方は「『錯乱』安倍晋三の『四人の神』」。安倍首相が心身ともに末期症状にあることを伝えたもので、十二日の辞任はもちろん読み切れてはいないが、そう大きくはずしてはいない。

 このところ安倍政権批判のトーンを強めていた週刊誌各誌だが、『週刊現代』は十五日発売の9月29日号で「相続税3億円脱税」疑惑を追いかけていた。締切間際に疑惑を安倍首相本人にぶつけ、十二日がその回答期限だった。
 そこで一部では同誌のスキャンダル追及が安倍辞任の一要因だったのでは、との憶測も流れた。辞任の話も盛り込んだその『週刊現代』9月29日号の見出しは「本誌が追い詰めた安倍晋三『相続税3億円脱税』疑惑」。同誌が安倍首相を辞任に追い込んだかのような鼻息の荒い記事である。

 週末発売の『フライデー』9月28日号は「安倍晋三辞任!原因は心の病全真相」、『週刊朝日』9月28日号は「安倍晋三を『自爆テロ』に追いつめた本当の理由」。いずれも安倍辞任の背景を分析しているのだが、ジャーナリスト上杉隆氏による後者の記事は、週刊誌などの取材攻勢が予想以上に安倍首相を追いつめていたのではないかとの見方を披露している。

 さて政権批判で存在意義を示してきた週刊誌だが、この夏、業界関係者の間で大きな話題になった話がある。上半期の部数が各誌とも大幅な落ち込みを見せたのだが、なかでも『週刊現代』が苦戦し、『週刊ポスト』の後塵を拝することになったというのである。
 同誌は加藤晴之編集長のもと、「週刊誌革命」と称する誌面のリニューアルを行い、数々のスクープも放ってきた。業界ではこの間、最も元気のよい週刊誌とされてきたのだ。それが部数上昇どころか逆に大幅に落ち込んだというわけだ。
 これは週刊誌市場がいかに深刻な危機に直面しているかを物語るものだ。同誌だけでなく週刊誌界全体にとってこの話、ショッキングだと思う。(月刊『創』編集長・篠田博之)

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