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篠田博之の「週刊誌を読む」

波紋広がる「マサコ」妃本/ 日本版中止一転、来月の刊行

朝青龍騒動が予想外に長引いている。関係者の対応のまずさが事態を悪化させているのだ。

 この問題についてのひとつの代表的見解は『週刊朝日』のコラムで二週にわたって脚本家の内館牧子さんが書いているものだろう。朝青龍の今の抑うつ症状が仮病とは思えないが、夏巡業を放棄しサッカーに興じていたことに処分がくだるのは当然だ。それもわからず「もしも天下の横綱が会見することもないまま帰国するなら、その時は散り際を考えよ」という。 

内館さんは横綱審議会の委員でもあり、その意味で重みのある見解だ。ただ一連の騒動を見ていて気になるのは、相撲協会に、内館さんのように朝青龍引退もやむなしという覚悟ができていないように見えることだ。ここで横綱に辞められては困る。そんな内心が透けて見えるから騒動がここまでこじれたのだろう。 伝統ある国技といっても今の大相撲は外国人力士に支えられており、制度としては完全に空洞化している。現実との乖離が様々な矛盾を噴出させている点で、私にはこれが天皇制とよく似ているように思える。

  
 さてその天皇制にからむ記事にも言及しておこう。『週刊新潮』8月16・23日号「皇室侮蔑本『プリンセス・マサコ』を出版するのは『辻元清美のパートナー』元日本赤軍メンバーだった!」。 今年二月に講談社が出版中止した皇室本『プリンセス・マサコ』の日本版がこの九月、第三書館から刊行される。ところが同社社長は元日本赤軍メンバー。皇室にとって頭の痛い事態だ、という内容である。

 私がこの記事にやれやれと思ったのは、同書が内容と別な所でまたスキャンダラスに取り上げられるという事態に対してだ。実は記事中にも出てくるが、著者が出版二社と真剣に交渉していたという、もうひとつの出版社とは私のところだ。  途中で交渉相手が豪州の出版社から原作者の代理人に変わったこともあり、メールを送るのに翻訳に手間取ったりしている間に、突然、他社と契約することになりましたと言われた。今でも思い出すと胃が痛む。    

そもそも同書は、昨年秋の『週刊朝日』の誇大見出し騒動に始まり、二月の外務省と宮内庁の強硬な抗議と、それをめぐっての講談社と著者の不協和音による出版中止という、過剰反応の連鎖に翻弄されてきた。

 この経緯そのものが、皇室問題の実態を示しているのかもしれない。

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