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篠田博之の「週刊誌を読む」

首相激怒で異例の対応/週刊朝日、新聞に謝罪広告

  いささか気になる展開 だ。『週刊朝日』の安倍首相謝罪問題である。

 二十八日、同誌は朝日・毎日・中日・岐阜新聞に謝罪広告を掲載。朝日新聞紙面に「週刊朝日がおわび広告」という記事も掲載された。それら新聞の発行部数をあわせれば『週刊朝日』の部数をはるかに上回る。異例なほど丁寧な謝罪だ。

 問題になった記事は、発売中の5月4・11日号「山口組系水心会と安部首相の『関係』を警察庁幹部が激白」。「長崎市長銃殺テロ」というワイド特集のひとつである。安倍首相の秘書が以前から右翼や暴力団から攻撃されており、そこに水心会も関与していたとして警視庁が捜査を進めていた。それなのに今回の同会幹部のテロを防げなかったのは、失態ではないかという声が上がっているという内容である。

 記事はわずか一ページ強。目次での扱いも小さかった。ところが同誌は広告では、これを「長崎市長射殺事件と安部首相秘書との『接点』」、あるいは「長崎市長射殺犯と安部首相の『関係』」と題して大きく扱った。雑誌を売るために羊頭狗肉の見出しを広告でハデにぶちあげるという、週刊誌特有の手法である。

 安倍首相はこれに激怒したらしい。発売日の二十四日夜の会見で産経新聞の記者がこれについて質問すると「言論によるテロではないか」「報道ではなくて、むしろ政治運動」などと『週刊朝日』を激しく糾弾した。

 安倍首相はこれまでも朝日新聞とは犬猿の仲。今回の件も自分への新たな攻撃と受けとめたらしい。会見のコメントには「いくら私が憎くて、あるいは私の内閣を倒そうということであったとしても」と、朝日の意図が安倍内閣打倒であるかのように語ったくだりもあった。

 その剣幕に驚いたか、朝日は二十五日付朝刊で「週刊朝日報道を安部首相が批判」という記事を掲載。『週刊朝日』編集長の「一部広告の見出しに安倍首相が射殺犯と関係があるかのような不適切な表現がありました。おわびいたします」というコメントを載せた。事実上の謝罪表明である。

 それでも事態は収まらなかったようで、最終的にとられた措置が二十八日の謝罪広告だった。羊頭狗肉は誉められたものではないが、それが週刊誌界では日常茶飯であることを思えば、今回の謝罪は異例と言ってよい。それが、抗議したのが安倍首相だからという理由でなければよいのだが。

                                                                  (月刊『創』編集長・篠田博之)

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