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篠田博之の「週刊誌を読む」

「裁判員」導入 新聞が一役?/PR表記なくタイアップ記事

 もしかして日本のジャ ーナリズムは「自壊作用」を起こしつつあるのではないかーー。最近そんな思いにかられることがある。

 ジャーナリズムの先輩格だった新聞界で首を傾げたくなるような問題が相次いでいるからだ。盗用事件の頻発もひどいものだが、裁判員制度のPRをめぐるタイアップ記事の問題も深刻だ。

 発端は「裁判員制度全国フォーラム」で新聞社がサクラ動員を行っていたことが発覚したことだった。イベントに金を払ってサクラを動員しても元がとれるカラクリがあるのでは、とにらんだジャーナリストの魚住昭さんが『週刊現代』2月24日で告発を行った。

 その後『週刊金曜日』が2月16日号から連載で追及し、『週刊朝日』も3月23日号から「最高裁から電通に流れた7億円の闇」と題して二週にわたって告発レポートを掲載した。電通が関わるスキャンダルだけに、『週刊金曜日』はともかく、大手マスコミにとっては扱いにくいテーマだ。『週刊現代』と『週刊朝日』が大きく取り上げた英断には敬意を表すべきだろう。

 一社では広告がとれなくても全国の地方紙が連合を組んで展開すれば広告主を口説きやすい。電通の音頭とりで一九九九年に全国新聞社連合会という組織が生まれ、官公庁の広告を積極的にとるようになった。
 
 それが今回は最高裁を広告主として裁判員制度導入のPRに一役買ったのだが、広告とセットで記事を掲載。しかもその記事にはPRといった表示がなされていない。国論が分かれるこういうテーマで、新聞が記事の体裁でPRを載せることが許されていいのか。一連の記事はそうした問題提起を行ったものだった。

 PRと明記しないタイアップ記事は、ファッション雑誌などでは当たり前になっているのだが、新聞のような報道機関がやるとなるとやはり問題だ。背景に広告収入減を伴うメディア環境の変化といった大きな問題を控えたこの問題、今回の告発を機に業界で議論してみる必要はあろう。そのあたりを曖昧に放置すると、新聞は今後もっと大きな問題を引き起こしそうな気がするのである。 他にも『女性セブン』 4月5・12日号が暴いたみのもんたのセクハラ騒動など興味深い記事はあるが、『フライデー』4月6日号によると、みの側は事実無根と怒っているというから、詳しい論評は控えておこう。
(月刊『創』編集長・篠田博之)

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