トップ> 篠田博之の「週刊誌を読む」 >「力」の自覚なきメディア/「あるある」捏造 業界タイアップ疑惑も

篠田博之の「週刊誌を読む」

「力」の自覚なきメディア/「あるある」捏造 業界タイアップ疑惑も

「発掘!あるある大事 典」納豆ダイエット捏造事件が大問題になっている。もともと『週刊朝日』のスクープなのだが、同誌が関西テレビに質問状を送ったのが一月十八日。局側は内部調査のうえ二十日にいきなり記者会見を開いて謝罪。大騒動に至ったのだった。   『週刊朝日』は出し抜かれた格好になったが、二十三日発売の2月2日号は「本誌スクープ取材にビビって緊急会見!! それだけじゃない納豆ダイエットの大ウソ」と七ページにわたる大特集。読み応えのある内容だ。 実は同誌は一週前の1月26日号でも「納豆ダイエットは本当に効くの?」と題する短い記事を掲載していた。

 「最初のきっかけは、一月七日の番組の後、納豆が異常なほど売れているのを知ったことです」と話すのは山口一臣編集長だ。「朝日新聞社の八階に社員食堂があるのだけれど、そこから納豆が消えていたというので、そんなバカなと思って(笑)、自宅近くのスーパーを見たら本当に品切れで、大変なブームになっていることを知った。じゃあ本当に効くのかどうか検証してみようと企画を立てたんです」

 ところが取材の過程で 幾つもの疑問に突き当たり、ヤラセ・捏造の事実をつかんでいく。「昔だったら例えばアメリカの教授の発言を検証するのは大変だったけれど、今はネットと電話を使えばできるんですよ」(山口編集長)。

 今回の事件で驚いたのは、取材データの捏造をチェックするプロセスが放送局で機能していなかったことだ。さらに言えば今回『週刊朝日』が果たしたようなメディア相互の批判・検証の機能が十分ならここまでずさんな捏造は起こらない気もする。その意味で今回の事件、関西テレビだけを叩いて終わってしまっては仕方ない。何よりも、番組後納豆が日本中の店頭から消えるほどの影響力を持ちながら、メディアの側にそのことへの自覚や認識がなさすぎることが大きな問題だ。

 さらに気になるのは、『週刊朝日』や『週刊文春』が指摘しているタイアップ疑惑だ。「あるある大事典」が納豆を取り上げることが事前に業界に流れ、実は放送前から業者が対応を行っていたというのだ。つまりメディアの影響力が前述したのと別の意味で作り手側に認識され、悪用されていた可能性がある。これは実は大変深刻な問題なのだが、ぜひそれも今後追及してほしいと思う。(月刊『創』編集長・篠田博之)

トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: 「力」の自覚なきメディア/「あるある」捏造 業界タイアップ疑惑も

このブログ記事に対するトラックバックURL: