トップ> 篠田博之の「週刊誌を読む」 >蓮池さんスクープ反響/ 新装「週刊現代」の意気込み

篠田博之の「週刊誌を読む」

蓮池さんスクープ反響/ 新装「週刊現代」の意気込み

 白い表紙に「週刊誌革 命!!」の文字が躍り、新装刊とうたった『週刊現代』1月6・13日号。巻頭グラビアは今話題の藤原紀香のセミヌードである。従来の週刊誌の泥臭いイメージを一新したリニューアルで、今後新しい読者獲得に成功するかどうか楽しみだ。

 でも私が驚きもし、注目もしたのは新しいデザインでなく、その号に掲載された「蓮池薫さんは私を拉致しようと日本に上陸していた」という記事だった。「驚愕スクープ!小泉ー安倍政権がかかえる”最大のタブー”を暴く!!」とうたっているから、同誌が覚悟をもって取り組んだものであることがわかる。

  内容は横井邦彦さんと いう、かつて社会主義運動に従事していた元小学校教諭の告白だが、確かに驚愕すべきものだ。拉致被害者の蓮池薫さんが一九八六年、北朝鮮の工作活動の一環として密かに来日し、その横井さんを北朝鮮に連れ出そうとしたというのである。

  当の蓮池さんと河内隆・内閣官房拉致問題対策本部事務局総合調整室長は同誌発売の二十五日、この記事を作り話だと非難し、講談社社長と加藤晴之編集長に抗議文書を送った。確かにこの記事が事実誤認であれば大変な名誉毀損にあたる。

 同じ週に発売された『週刊新潮』1月4・11日号も、この『週刊現代』の記事を取り上げ、「蓮池薫さんをアキレさせた『怪しいスクープ』」と批判。記事中で蓮池薫さんの兄・透さんも「全部デタラメですよ」と断罪している。

 ただ『週刊現代』の加藤編集長はマスコミの取材に対して「証言を精査して掲載した」と言明。そもそも、掲載後反撃を食らうのが明らかな記事を載せるのだから、同誌とて何も考えずにやっているわけはないだろう。拉致された日本人が日本向けの工作活動に従事することを強いられるというのはあり得る話だけに、『週刊現代』と蓮池さん双方で徹底的に争い、どちらの言い分が正しいか明らかにしてほしい。

 先に私がこの記事に注目したと書いたのは、その内容の真偽はもちろんだが、もうひとつ、今の日本の思想的・政治的風潮の中で、国論に敢えて異を唱えるこういう記事を『週刊現代』が掲載したことだ。掲載の結果、同誌にかかるであろう逆風を考えれば相当のリスクといってよい。デザインの変更などより、この記事を掲載したことの方が、同誌にかける加藤編集長の決意を示すものと言えるだろう。そのことも含めて、この報道の反響がどう広がっていくのか、関心がある。

(月刊『創』編集長・篠田博之)

トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: 蓮池さんスクープ反響/ 新装「週刊現代」の意気込み

このブログ記事に対するトラックバックURL: