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篠田博之の「週刊誌を読む」

新潮が狭めた表現の許容度/ 皇室寸劇の自粛あおる

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 前回書いた『週刊新潮 』12月7日号「陛下のガンも笑いのネタにした皇室中傷芝居」について、その後の経過を報告しておこう。事態は私が危惧した通りになった。

 『週刊金曜日』関係者や永六輔さんに嫌がらせや右翼の抗議がなされ、八日には『週刊金曜日』に右翼の街宣車が二十台も押し掛けた。

 深刻なのは「さる高貴なご一家」を上演してきた劇団「他言無用」だった。たまたま九日に定期公演が予定されていたのだが、一般客を入れてのライブだから、テロを一〇〇%防ぐのは難しい。悩んだ末に、上演前日の八日、ホームページに謝罪文を立ち上げた。
「今般、一部週刊誌上 に取り上げられました、日比谷公会堂で行なわれました某集会におきます『さる高貴なご一家』に関する寸劇上演で、皆様に大変ご迷惑をおかけ致しました。この点を深くお詫び申し上げ、公演におきまして『さる高貴なご一家』そのものを笑いの対象にすることは、今後慎みます」

「さる高貴なご一家」 は相当前から上演されてきた有名な寸劇だ。それがこんなふうに封印され、言論や表現をめぐる許容度がまた狭められた。それを煽ったのが『週刊新潮』という言論機関だったことも残念だ。

 話題転換。この一週間芸能マスコミを席巻した石原真理子告白騒動についても触れておこう。彼女が先頃出版した本の中で過去の男性遍歴を実名で暴露したというので、ワイドショーと週刊誌が一斉に取り上げた。

 週刊誌で先行したのは『週刊朝日』12月15日号だが、おかしいことに石原が実名で告白した男性名をわざわざイニシャルに変えている。彼女の記者会見でも、実名告白をそのまま放送してはまずいという議論がワイドショーで行われたという。 これはこの二十年ほど名誉毀損訴訟の増加や賠償金高額化で芸能マスコミが大きく変わった現実を反映した話だ。せっかく女優が実名をあげて昔のスキャンダルを暴露したのに、芸能マスコミの方が戸惑っているという皮肉な構図である。

 ただ気になるのは、石原の告白本が一部の男性のみ匿名にしたことだ。『週刊新潮』12月14日号「13人の男性遍歴暴露で1人だけイニシャルだった『人気歌手の実名』」によると匿名の男性はジャニーズ事務所所属。人権的配慮でなく芸能界のタブーに触れるため実名を伏せたというのだ。  これが本当なら情けない現実だ。

(月刊『創』編集長・篠田博之)

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