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「週刊朝日」のリベンジ/鈴香被告の母 独占取材

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『週刊朝日』10月13日号「独占スクープ!鈴香被告の母、すべてを語る」が興味深い。16ページにもわたるインタビュー記事で、内容も面白いのだが、興味深いのはそれだけでない。 

 ちょうど3年前の2003年、拉致被害者である地村夫妻の単独インタビューを『週刊朝日』が掲載、当人の了解をとっていなかったとして問題になり、同誌が謝罪、関係者が処分される騒ぎがあった。

 実はこの時インタビューをとったのが今回と同じフリーの契約記者・上田耕司さん。しかも、当時担当副編集長で、処分を食らって広報部へ飛ばされたのが、現在の山口一臣編集長である。つまり3年前と同じコンビ。今回のスクープインタビューは、いわばリベンジなのである。

 実は秋田事件の取材現場も、3年前の拉致被害家族をめぐる状況とよく似ている。発生当初、取材陣が現場に殺到してメディア・スクラムが問題となり、弁護士が記者会見をする代わりに個別取材は自粛するという、一種の協定に近いものが提案された。今回の『週刊朝日』のスクープは、そういう経緯と別に、弁護士を経由せず上田記者が独自にとったものだ。3年前と状況がそっくりなのである。

 3年前の時は、掲載にあたって取材対象との合意が曖昧だったためトラブルになってしまったのだが、背景には同誌が抜け駆けで個別取材を行ったことに対する他のメディアの反発があった。メディア・スクラム対策としての取材自粛は人権的配慮が目的ではあるのだが、一方である種の取材統制にもつながるという側面も抱えもつ。
 
 今回の『週刊朝日』のリベンジが成功するのかどうか。発売後の反響が気になるところだ。 

 さて話は変わるが『フライデー』10月13日号のスクープが話題になっている。新装開店の「NEWS23」で人気急上昇の女性キャスター、山本モナさんと民主党の細野豪志議員の不倫写真を1カ月前から隠し撮りし、掲載したものだ。

 山本さんは元朝日放送のアナウンサー。秋改編で「ニュース23」に抜てきされた。日本テレビも10月から新たなニュース番組を始めるなど、夜11時台のニュース戦争はこの秋のテレビ界の最大の話題だ。そこに女性キャスターのスキャンダルを写真週刊誌がそえるというこの展開、評価は別にして極めて現代ふうだ。

東京新聞 2006.10.02掲載/メディア批評誌「創」編集長・篠田博之

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