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篠田博之の「週刊誌を読む」

解剖される安倍新総裁/植草教授の妻告白に同情

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 安倍晋三自民党総裁誕生とあって週刊誌が一斉に特集を組んでいる。彼を「中身のないタカ派」と批判してきた『週刊現代』9月30日号の連載第6弾は「安倍晋三と統一教会」。

 安倍氏の叔父・西村正雄氏(故人)が語ったという言葉「晋三に影響を与え、周りで利用しているのは、偏狭なナショナリストしかいない」の、その右派人脈を洗っていこうというリポートだ。
 
 安倍氏の右派人脈については『週刊金曜日』9月22日号も「安倍晋三の正体」と題して特集を組んでいるし、『週刊朝日』9月29日号では野中広務元自民党幹事長がこうコメントしている。「安倍君のブレーンと言われる人の顔ぶれを見ると、一色なんだな。これがあぶなっかしげに見える」
 
 タカ派のルーツとして祖父の岸信介氏がよく挙げられるが、『アエラ』10月2日号で放送作家の町山広美氏はこんな見方を披露している。「迷惑なのは、つきまとうお坊ちゃまイメージを払拭しようと、安倍がやたらとマッチョな発言に走ること」「ケンカをしなれていないヤツのケンカは危ない。いきなり刃物を持ち出したりするからね」
 
 でもこうした記事を読むにつけ、安倍圧勝が既定路線だった今回の総裁選のあまりに貧相な選択肢に悲しくなってくる。新たな総理大臣の誕生には、スキャンダルの洗礼をお見舞いするというのがゲリラジャーナリズム・週刊誌の伝統だ。次号あたりどんな記事が載るのか期待したい。
 
 そのほか週刊誌各誌が取り上げているのが植草一秀教授逮捕事件。私も前の逮捕事件に対する彼の冤罪説を聞いていた一人だから、何だかなあという感じ。前回の事件後に彼を客員教授に迎えた名古屋商科大大学院はショックだったろう。

『週刊新潮』9月28日号が「植草センセイの『冤罪主張』を信じちゃった人たち」と、さっそく皮肉まじりに取り上げている。 

 気の毒なのは『週刊文春』9月28日号が「植草教授の妻が悲痛告白」と題して載せた動転する妻のコメント。こんな時に引っ張り出されたことに同情してしまう。

『週刊朝日』9月29日号は「植草センセイが逮捕直前本誌に語っていた小泉首相批判と前回の”冤罪事件”」と題して逮捕前収録の対談を掲載。小泉政権の経済政策を検証するという企画だったらしいが、奇しくも掲載がこのタイミングとなった。山口編集長は編集後記でこの逮捕には「驚いた」と書いている。

東京新聞 2006.09.25掲載/メディア批評誌「創」編集長・篠田博之

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