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篠田博之の「週刊誌を読む」

「ハンカチ王子」が席巻/引き合いに出される亀田親子

「ハンカチ王子」こと早実の斎藤佑樹投手の人気がすごい。殺伐とした世相の中で、彼のさわやかさ、ひたむきさが共感を呼んだのだろう。『週刊朝日』9月8日号など、表紙に写真を掲げ、9ページもの大特集を掲載する入れ込みようだ。
 一方、同じ大特集で も『週刊新潮』9月7日号は、同誌らしい斜に構えた切り口。特集タイトルが「『ハンカチ王子』狂騒曲」。記事も「ヨン様から『佑ちゃん』に乗り換えた『おっかけオバサン』」「『その仕草』がなぜか新宿2丁目『ゲイに大人気』」など皮肉たっぷりだ。  
 ハンカチ王子の記事は他にも多くの週刊誌が掲載しているのだが、あちこちで目につく切り口が、亀田親子との比較だ。「『亀田家』と斎藤家の『子育て』はここが違った」(週刊新潮)「『斎藤家』『亀田家』こんなに違う教育方針」(週刊文春)等々。そんなことで引き合いに出さなくてもいいやないか、余計なお世話や~という亀田父の声が聞こえてきそうだが、亀田バッシングはまだ続いているようだ。もっとも次の試合で亀田興毅選手が圧勝でもすれば、また流れが変わる可能性もあるし、マスコミってそんなものだと思っておいた方がよいかもしれないが。
 さて前回本欄で書いた加藤紘一代議士宅放火事件について、その後予想外の議論が広がりつつあるので触れておこう。ジャーナリストの田原総一朗さんが『週刊朝日』のコラムなどで「沈黙はテロに対する敗北である」と訴えたり、『週刊現代』9月9日号も「連続する言論封殺テロを徹底追及しないメディアの大罪」という記事を掲げた。 
 鳥越俊太郎さんもテレビ番組や、自身が編集長を務めるネット新聞「オーマイニュース」(8月28日創刊)で、小泉首相やメディアの反応の鈍さを批判している。近々市民やジャーナリストらが「言論封じのテロを許すな」という声明を出すという動きもある。私も言論への暴力に対するこの間のメディアの反応の鈍さは気になっていたから、こういう動きは歓迎したい。 
 前出『週刊朝日』のコラムで田原さんが書いている中に気になる記述がある。放火事件を機に、首相の靖国参拝に反対する側の人たちが「テレビの討論番組に出演することを躊躇し、避けるようになっている」というのだ。放火事件は死傷者を出さなかったとはいえ、言論を萎縮させる効果があったとすればそれが怖い。

東京新聞 2006.09.04掲載/メディア批評誌「創」編集長・篠田博之

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