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篠田博之の「週刊誌を読む」

情報源・公安寄り否めず/「JR東労組=過激派」批判/

『週刊現代』がまたも「タブーに挑戦」とうたった長期連載を始めた。今度のターゲットはJR東日本、正確に言うとその労働組合である。過激派の革マル派がその組合に浸透しているという批判なのだが、見出しがすさまじい。「テロリストに乗っ取られたJR東日本の真実」。リードによるとそれは「平成ニッポンに残された最大にして最後のタブー」なのだという。

 編集部の肩に異常に力が入ってしまうのには理由がある。JR批判というのは、誌面で指摘しているのと別の意味で週刊誌にとってはタブーだからである。これは有名な話だが、今から十二年前、『週刊文春』が同じテーマで連載を行い、JR東日本がキヨスクでの同誌販売を拒否した事件があった。駅売りの依存度が高い週刊誌にとって、その流通をストップされることは致命的な影響をもたらす。『週刊現代』も今回、恐らく最悪の事態も想定したうえで連載に踏み切ったはずだ。その気概にはエールを送りたい。

 今のところJR東日本側は、世論の反発を招きかねない販売拒否は行わず、車内つり広告の掲載拒否にとどめている。組合幹部が革マル派だといった記述については、以前から同労組自身が事実無根としてきたし、今回も恐らく裁判で争われることになるだろう。
 今後の双方の応酬がどうなるかは予断を許さないが、記事を読んでいて気になった点をひとつ指摘しておこう。記事が公安情報に依拠しすぎている印象があることだ。

 この何年か、公安警察はJR東労組や関連団体を標的に据え、組合員の逮捕や家宅捜索を繰り返して、同労組=過激派だという情報を意図的にマスコミに流してきた。それに限らず、立川の反戦グループや共産党活動家をビラをまいただけで逮捕するなど、従来は考えられなかったような「公安の暴走」というべき荒っぽい取り締まりも目につく。その延長上に出てきたのが共謀罪新設である。

『週刊現代』は時期を同じくして別のページで共謀罪批判のキャンペーンも始めたから、そうした動きを認識してはいるのだろう。ただ今回の連載を読んでいると、情報源であろう公安との距離が十分にとれていない印象を受ける。『週刊現代』加藤晴之編集長も、以前『噂の真相』の敏腕記者だった西岡氏も、反権力意識が旺盛だったはずなのに、う~んどうしちゃったのかなあと、そんな心配をしてしまうのである。

東京新聞 2006.08.07掲載/メディア批評誌「創」編集長・篠田博之

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