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篠田博之の「週刊誌を読む」

人脈に礼を尽くし特ダネ/昭和天皇A級戦犯合祀メモ

 ただ、今回のスクープを政治的謀略であるかのように言うのはいささかうがった見方かもしれない。日経新聞がスクープに至る舞台裏は前出『アエラ』と『週刊文春』8月3日号が詳しく書いているが、経緯は思ったよりシンプルだ。

『週刊文春』によると今回のスクープは日経新聞宮内庁担当A記者によるもの。もともと九三年の皇太子婚約決定の時に宮内庁担当だった記者で、前長官だった富田朝彦氏の手記を当時一面に掲載して親交を深めた。
 
 富田氏は2003年に死去したが、このA記者は長岡支局長などを経て今年3月、再び宮内庁担当に異動してきた。そこで富田氏の遺族を訪ね、遺品の日記や手帳を見る機会を得たという。

 富田氏の遺族が日記やメモをどう保管していたかについては『アエラ』の記事に詳しい。富田氏の死去後、発見された日記などは妻が一周忌に一部をCD-ROMに収めて記念に知人らに配ったりしたが、今回のメモはそれらとは別に「戸棚に立ててあった日記帳の上に輪ゴムでまとめて載せてあった」もので、読んでいなかった。そこへ旧知の日経記者が訪れ、懐かしさも手伝ってメモを見せたというのだ。

 ネタ元となる人脈に礼を尽くすという、記者として基本の行為がスクープにつながったというわけだ。確かに、現実は意外とそんなものかもしれない。

東京新聞 2006.07.31掲載/メディア批評誌「創」編集長・篠田博之

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