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篠田博之の「週刊誌を読む」

「演出」されたセレブ/行き過ぎたカリスマ女医たたき

  先頃女子大生の娘が誘拐された「カリスマ美容整形女医」をめぐって、週刊誌でバッシングの嵐が吹き荒れている。

「告発されたセレブ整 形医の『コワイ豊胸手術』」(週刊新潮)「カリスマ整形女医『全裸入浴写真』まで公開した売名私生活」(アサヒ芸能)「整形セレブ池田女医『ヌード写真集未払い醜聞と虚飾』」(フライデー)「セレブ美容外科医・池田優子『裏帳簿』と『脱税疑惑』」(週刊現代)等々。

 もともと誘拐事件は、 この母娘のセレブ生活がテレビで取り上げられたのを犯人らが目にしたのがきっかけだった。しかし、そのセレブ報道には裏があったらしい。『FLASH』7月18日号によるとこうだ。

「テレビで報じられた セレブぶりには、じつはかなりの『演出』があったのである。たとえば、渋谷区の自宅豪邸についてテレビでは『3億2千万円をキャッシュで支払った』などと語っていたが、じつのところ2億円の抵当がついていた。
『家はローンで購入し たものですよ。(略)ブランド漬けのセレブ生活はテレビの演出ですよ。それが病院の宣伝になるから、マンガみたいなことを言っていただけ。(略)メディア露出が功を奏して、昨年の病院の利益はかなり伸びていました』(PR業界関係者)」

「開院以来事故ゼロ」 とか「手術は正味一時間」などとカリスマ医師ぶりが強調されていたことについても『週刊新潮』によると、今回の事件を機に同業者や元患者から実は事実でないという声があがっているという。

 週刊誌というのは大衆のねたみ、そねみといったルサンチマンに依拠したメディアだから、セレブの正体は実はこうだった、と暴くという手法はわからないではない。でも今はまだ事件直後である。母娘は犯罪の被害者だし、その恐怖はいまだに消えていないはずだ。例えば『アサヒ芸能』は女医が以前、ヌードになったその写真を改めて公開しているのだが、これも、今それをやらなくても、という感じである。
 
 そもそも報道がこんな方向に向かったのは、事件直後からテレビが、以前のセレブ報道の映像をさんざん流したのがきっかけだ。持ち上げる時は天まで持ち上げるが一転して叩くとなると容赦ない。それがマスメディアなのだが、この母娘、誘拐犯だけでなくメディアの犠牲者でもあるような気がして、二重の意味で気の毒なのである。

東京新聞 2006.07.12掲載/メディア批評誌「創」編集長・篠田博之

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