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篠田博之の「週刊誌を読む」

敗退一転、日本たたき/W杯報道の画一化を危ぐ

 一勝もしないまま終わったサッカーW杯日本代表だが、週刊誌にはバッシングの嵐が吹き荒れている。

『サンデー毎日』7月 9日号は、表紙に大きく「戦犯はどいつだ!?」の見出しが躍る。記事中見出しも「A級戦犯は『思考停止』の川淵、ジーコ」「『職務怠慢』FW柳沢に”辞めろコール”殺到中」など辛辣だ。
 
 他の週刊誌も「中田英 寿がジーコジャパンを崩壊させた」(週刊現代)「独裁の川淵にレッドカード」(週刊ポスト)「ジーコ日本『惨敗戦犯7人衆』はコイツだ!」(アサヒ芸能)などの”戦犯報道”である。

『週刊朝日』7月7日号はテレビ局を「戦犯」と批判している。視聴率が稼げる時間帯にと日本時間の午後十時に試合時刻をあわせたことで、選手たちは炎天下のプレーを余儀なくされたというわけだ。

『フライデー』7月14日号は、帰国翌日から北海道へ家族と旅行に出かけた中村俊輔選手を隠し撮り。「中村俊輔『背信の北海道旅行』」と指弾している。予選リーグ敗退を前提に旅行計画をたてていたのではないか、というわけだ。記事中の事務所のコメントは「限られたオフを有効に過ごしてもらうため、事務所のほうで(予選敗退、ベスト8進出など)いろんなパターンを想定して、旅行を用意していた」とある。普通ならこの説明ですんでしまうところだが、今回はそうはいかないようだ。
 
 しかし、どうも私には違和感がある。日本戦が終わるまでは代表チームを英雄扱いして熱狂的イケイケ報道を繰り返し、敗退するや手のひらを返したようにそろって”戦犯報道”を行うというマスコミに、である。

 そもそも事前のイケイケ報道が根拠なき楽観主義だったのではないか。そんな疑問を提起しているのは『週刊新潮』7月6日号「『大本営発表』にダマされ続けたW杯」だ。スポーツ紙の見出しを改めて検証し、「これはまるで”本土決戦””神風吹く”。もはや報道は完全に冷静さを失っていたとしか言いようがない」と指摘している。

 W杯はいわばお祭りだから、マスコミも一緒になってフィーバーすること自体が悪いとは思わない。しかし、先日まで度を過ぎた煽りたてを行っていたかと思うと、敗退後は一丸となってバッシングに転ずるという、この画一的な過熱ぶりには、いささか危惧を感じてしまうのである。

東京新聞 2006.07.03掲載/メディア批評誌「創」編集長・篠田博之

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